体当たりリポート 魔界の海の幸!!

「うらー!! オメーら、食いやがれ!!」

 幽助が焦げ色エプロンを着けた料理人姿で、三竦みに勧める。
 テレビ局のスタジオの一角に設えられた、食卓である。
 雷禅が一人、その反対側に並んで軀と黄泉。
 彼らの前には、幽助がやはり料理番組用に備え付けられたキッチンで腕を振るった魚介料理が並んでいる。

 メニューは
・魔界ハタの漁師風煮つけ
・魔界ハタのあら汁
・魔界ハタの皮の湯引き
・魔界エビのトマトチーズ焼き
・魔界エビの刺身

 もちろん、キッチンスタジオにも隣接の食卓セットにも、カメラが入って、幽助と三竦みを追っている。
 特に幽助の、人間界側由来の料理の腕は注目の的となると推測されており、カメラは彼のどんな動きも見逃すまいと、料理台周囲に何台もスタンバイしている。

 食べる側の三竦みも、殺し合い寸前の三巨頭が、まさかの事態で一堂に会するというので注目されているのだ。
 食卓に着いている彼らは、思いのほかどうだっていい馬鹿話を繰り広げ、お茶の間に笑いを届けている。
 後に「意外と三竦みって大人げない」「雷禅がいきなりトーチャンですって、浦飯納得できなかっただろうな」「黄泉が浦飯にトーナメント開催持ちかけられて、全部の計算が狂っていく様子の回想が生々しくて気の毒」「三竦み最凶最悪って言われているけど、軀ってなんか浦飯から見て心配してくれる親戚のおねーちゃんみたいでないの?」などという感想が、テレビ嵐に寄せられている。

 幽助は捌いて一日寝かせた魔界ハタの切り身を鍋に投入、落し蓋を落として煮つける間に、手際よくあら汁のアクを取る。
 分厚い魔界ハタの皮は細切りにし、網に乗せて大鍋に投入。
 火が通ったところで引き上げて氷水に放り込んで締める。

 一方、あらかじめ解体しておいたエビの身を適度な大きさに切り分けて、トマトを敷いた耐熱皿に並べ、白ワインを振りかけた上で、更にトマトとマッシュルームで埋め、ブラウンソースを回しかける。
 ピザチーズを盛ってオーブンへ。

 残りのエビの身は生のまま食べやすい大きさに切り分けて刺身皿に並べる。
 氷水で締めた身がいかにもプリプリしている。

 ……といった様子で、幽助は次々料理を仕上げていく。
 アシスタントも務める蔵馬の手も借りて、三竦みの前に料理が並べられる。

「いやしかし、オメーらが人肉食体質治療して、普通のメシ食えるようになるとはなー。俺も腕の振るい甲斐があるぜ。よっしゃ食え!!」

 幽助が促すと、三竦みが思い思いの料理にかぶりつく。
 ふと、雷禅がハタの煮つけを掻き込み――煮つけを食べる表現にしてはおかしいが、こうとしか言いようがない――ながら、幽助に尋ねる。

「幽助、オメー、歳はいくつになった?」

「こないだ16になった。つうか、自分の子供の歳くらい覚えておけよ」

 幽助が不満を述べると、横で聞いていた軀が、エビのトマトチーズ焼きをぱくつきながら口を挟む。

「16でこんなに料理上手いのか。大したもんだな。雷禅には永遠に料理で勝ってるんだから、そんなに焦らなくてもいいと思うぜ。喧嘩の方も、そのうちぼちぼち、な」

 黄泉は、ハタの皮の湯引きを薬味のネギ増量で口に運びながら、更に口を挟む。

「うちの修羅にも、もう少し大きくなったら料理でも習わせようかなと。生活力は身につけて欲しいのだ。この若さでこれだけできる浦飯を見ているとそう思うよ」

 くすくすと、アシスタントをしていた蔵馬が笑う。

「幽助が三竦みを見事餌付けしましたねー。幽助の力は意外にもっていうか、単純に戦いだけではないんですよね。不思議といえば不思議なんですけど」

 「そりゃそうよ」

 雷禅がくくくと喉を鳴らす。

「俺が惚れた女が産んだ子なんだからな。魔界にも人間界にも、そうそう似たような奴はいねえんだ。本人はいたって単細胞なんだが」

 この番組「体当たりリポート 魔界の海の幸!! 浦飯幽助が行く!!」は、魔界トーナメントに次ぐ記録的な視聴率を叩き出し、幽助はこの後、類似の番組にひっぱりだこであったという……。


体当たりリポート 魔界の海の幸!! 【完】
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