体当たりリポート 魔界の海の幸!!
「あれ、なんか綺麗な浜だなこの辺」
「こっち側は、遠浅になっていますからね。砂浜が広いし、花の咲く植物が生えていたりして、見た目的に美しいんですよね」
幽助が何気なくこぼした疑問に答えつつ、蔵馬は足元の、人間界で言うならハマナスに似た花に手を伸ばす。
幽助は潮風に吹かれながら、うーんと伸びをする。
なだらかな海岸線、ところどころに見える磯、砂浜に自生する何種かの華麗な花を咲かせる低木の茂み。
青空の下とはいかないが、稲妻も控えめで、優美な美しさがある。
こういうところならデートに良いのではないかと、ふと考えてもみる。
「そういや、魔界の魔族って、海水浴とかしねーのか? 泳いでいる奴とか見ねえな」
そろそろ季節だよな?
幽助がふとそんなことを口にすると蔵馬は笑う。
「まあ、さっきご覧になった通りなんですよ。魔界の海の生物は巨大だし凶暴だしで危険なんです。泳ぐ習慣が全くない訳ではないですが、限られた場所になりますね」
蔵馬がそんな風に説明する。
へえ、と幽助は腕組み。
「そうなのか。もったいねえような気がするけど、ああいうのがいるんじゃあなあ。……あれ」
幽助は足元の茂みを覗き込む。
彼の目の前で、濃い藍色の花が、その中心から別の、もう少し色の薄い花を咲かせ、その中心からまた更に……と、どんどん伸び上がっていく。
まるでゆっくり噴き上がる間欠泉だ。
「お、蔵馬、コレさ」
「ああ、空見花(そらみばな)ですね。魔界でも珍しい植物なんですよ。花が咲く時を見られるなんて、運がいい」
蔵馬は、背後で撮影していたTVクルーを手招きする。
「こちらの映像、是非お茶の間に届けてください。なかなか貴重な映像ですよ。今回の撮影は何かと縁起がいい」
言われて、いそいそカメラが寄る。
照明が掲げられ。
「おお、どんどん咲いてるなスゲー、綺麗だ!!」
幽助は子供のようにはしゃぐ。
彼の目の前で、グラデーションカラーの塔のような花が、次々と咲いていく。
「この辺、海浜植物は条例で保護されてたんじゃないかな。種子はもらえるかどうか、一応大統領府に問い合わせて……」
蔵馬がそんなことを口にすると、幽助は首をかしげる。
「これ、戦いに使えるのか?」
「ああ、いや、戦いそのものっていうより、薬効が凄いんですよ。ちぎれた体の一部を再生させる薬品なんかがこれを原料に抽出されますし」
「へー」
つんつん。
「あー、わーってるって、そろそろエビ探さないといけねえんだろ?」
つんつん。
「え? 罠はまだこれから用意するんで、ちょっと時間ありますよ?」
つんつん。
つんつんつん。
「えっ何だよ蔵馬さっきから」
「え? さっきから?」
……何だか、周囲が暗い……。
目の前のTVクルーが悲鳴を上げる。
「ん? おいオメーら」
「!! 幽助うしろ!!!」
幽助も蔵馬も思わず振り返る。
と同時に。
とんでもない圧力の水の塊が、幽助と蔵馬を吹き飛ばす。
「があああああっ!!」
幽助は、どうにかクルーを巻き込むことは避けて一回転して立ち直る。
蔵馬も華麗な剣舞を思わせる動きで避けている。
振り向いた幽助たちの目の前にいた、巨大な影は。
「ぐえっ!? エビか!? これが!?」
幽助が頓狂な声を上げたのも道理。
そこにいたのは恐竜並みの大きさの、ばかでかいエビだったのだ。
いつの間に浜に上がって来たものか。
人間界のイセエビに似ていなくもないが、紫とクリーム色と緑と蛍光青のサイケな色合いで、しかも全身に棘が、サメの歯を思わせる形で生えている。
「ああ、罠を仕掛ける前に向こうから来てくれましたね。ちょうどいいから、コレにしませんか幽助」
「しょーがねーな……って、わっ!!」
またもや、エビが水の弾丸を撃ち出す。
巨大なハサミの間から、さながら機銃掃射のように連続で射撃する。
使われる水の弾丸は、まるで金属の砲弾みたいに硬く圧縮されているのだ。
「このままじゃクルーの方々が危ないので……っと」
蔵馬が言うなり、魔界エビのすぐ下に生えていた魔界ハマナスが爆発的に伸び上がって、エビのハサミをぐるぐる巻きに縛り上げる。
ハサミは閉じられ、もう水の弾丸は撃てない。
魔界エビが身をよじるより早く。
「アタマは諦めるぜ!! 霊丸―――!!!」
幽助が魔界エビの真正面至近距離に滑り込み、霊丸を発射したのだ。
棘だらけのエビの頭部は半ば吹っ飛び、エビは動かなくなる。
「よっしゃ、エビ、獲ったどーーー!!!」
幽助が快哉の雄たけびを上げると、緊張していたTVクルーたちからは、安堵の溜息が漏れたのだった。
「こっち側は、遠浅になっていますからね。砂浜が広いし、花の咲く植物が生えていたりして、見た目的に美しいんですよね」
幽助が何気なくこぼした疑問に答えつつ、蔵馬は足元の、人間界で言うならハマナスに似た花に手を伸ばす。
幽助は潮風に吹かれながら、うーんと伸びをする。
なだらかな海岸線、ところどころに見える磯、砂浜に自生する何種かの華麗な花を咲かせる低木の茂み。
青空の下とはいかないが、稲妻も控えめで、優美な美しさがある。
こういうところならデートに良いのではないかと、ふと考えてもみる。
「そういや、魔界の魔族って、海水浴とかしねーのか? 泳いでいる奴とか見ねえな」
そろそろ季節だよな?
幽助がふとそんなことを口にすると蔵馬は笑う。
「まあ、さっきご覧になった通りなんですよ。魔界の海の生物は巨大だし凶暴だしで危険なんです。泳ぐ習慣が全くない訳ではないですが、限られた場所になりますね」
蔵馬がそんな風に説明する。
へえ、と幽助は腕組み。
「そうなのか。もったいねえような気がするけど、ああいうのがいるんじゃあなあ。……あれ」
幽助は足元の茂みを覗き込む。
彼の目の前で、濃い藍色の花が、その中心から別の、もう少し色の薄い花を咲かせ、その中心からまた更に……と、どんどん伸び上がっていく。
まるでゆっくり噴き上がる間欠泉だ。
「お、蔵馬、コレさ」
「ああ、空見花(そらみばな)ですね。魔界でも珍しい植物なんですよ。花が咲く時を見られるなんて、運がいい」
蔵馬は、背後で撮影していたTVクルーを手招きする。
「こちらの映像、是非お茶の間に届けてください。なかなか貴重な映像ですよ。今回の撮影は何かと縁起がいい」
言われて、いそいそカメラが寄る。
照明が掲げられ。
「おお、どんどん咲いてるなスゲー、綺麗だ!!」
幽助は子供のようにはしゃぐ。
彼の目の前で、グラデーションカラーの塔のような花が、次々と咲いていく。
「この辺、海浜植物は条例で保護されてたんじゃないかな。種子はもらえるかどうか、一応大統領府に問い合わせて……」
蔵馬がそんなことを口にすると、幽助は首をかしげる。
「これ、戦いに使えるのか?」
「ああ、いや、戦いそのものっていうより、薬効が凄いんですよ。ちぎれた体の一部を再生させる薬品なんかがこれを原料に抽出されますし」
「へー」
つんつん。
「あー、わーってるって、そろそろエビ探さないといけねえんだろ?」
つんつん。
「え? 罠はまだこれから用意するんで、ちょっと時間ありますよ?」
つんつん。
つんつんつん。
「えっ何だよ蔵馬さっきから」
「え? さっきから?」
……何だか、周囲が暗い……。
目の前のTVクルーが悲鳴を上げる。
「ん? おいオメーら」
「!! 幽助うしろ!!!」
幽助も蔵馬も思わず振り返る。
と同時に。
とんでもない圧力の水の塊が、幽助と蔵馬を吹き飛ばす。
「があああああっ!!」
幽助は、どうにかクルーを巻き込むことは避けて一回転して立ち直る。
蔵馬も華麗な剣舞を思わせる動きで避けている。
振り向いた幽助たちの目の前にいた、巨大な影は。
「ぐえっ!? エビか!? これが!?」
幽助が頓狂な声を上げたのも道理。
そこにいたのは恐竜並みの大きさの、ばかでかいエビだったのだ。
いつの間に浜に上がって来たものか。
人間界のイセエビに似ていなくもないが、紫とクリーム色と緑と蛍光青のサイケな色合いで、しかも全身に棘が、サメの歯を思わせる形で生えている。
「ああ、罠を仕掛ける前に向こうから来てくれましたね。ちょうどいいから、コレにしませんか幽助」
「しょーがねーな……って、わっ!!」
またもや、エビが水の弾丸を撃ち出す。
巨大なハサミの間から、さながら機銃掃射のように連続で射撃する。
使われる水の弾丸は、まるで金属の砲弾みたいに硬く圧縮されているのだ。
「このままじゃクルーの方々が危ないので……っと」
蔵馬が言うなり、魔界エビのすぐ下に生えていた魔界ハマナスが爆発的に伸び上がって、エビのハサミをぐるぐる巻きに縛り上げる。
ハサミは閉じられ、もう水の弾丸は撃てない。
魔界エビが身をよじるより早く。
「アタマは諦めるぜ!! 霊丸―――!!!」
幽助が魔界エビの真正面至近距離に滑り込み、霊丸を発射したのだ。
棘だらけのエビの頭部は半ば吹っ飛び、エビは動かなくなる。
「よっしゃ、エビ、獲ったどーーー!!!」
幽助が快哉の雄たけびを上げると、緊張していたTVクルーたちからは、安堵の溜息が漏れたのだった。