雑多文庫
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ここは東京都内にあるとある市民病院。高専を出た私は、呪術師の道を選ぶことなく医者になる道を選んだ。理由は特にない。あるとすれば、病院に巣食う呪いを祓うことも兼ねてだろうか。
夜間診療で呼ばれたかと思うと、診察室に入ってきた人は病人にも見えないよく知った人だった。
「やあ、久しぶり~元気?」
飄々とした態度で診察室に入って来た銀髪をおろしサングラスをかけている五条先輩。
「はい、よろしいですね。お大事に」とカルテを打ち込みながらちらっと横目で見て帰そうとすると「それはないでしょうリンちゃん」と馴れ馴れしく寄って来た。
「仕事中なんですけど、五条先輩。次の患者さん待ってるんでどっか消えて二度とその顔見せないでください」
「今日はいつになく酷いなあ。生理?」
彼の言葉を無視して看護師に次の患者さんのカルテを持ってくるよう言うと、五条先輩が止めに入る。
五条先輩がここに来たのはここ最近の話ではない。1か月前、3か月前、半年前・・・1年前と数えたらきりがない。
任務が終わるたびにご苦労なことで足を運んでもらっては一蹴してるのだがいい加減諦めてくれないかと思っていた。
毎回ここにきてはいうのだ。「呪術高専で教師にならないか」と。
正直言って教師になるより給料こっちの方が弾んでくれるから靡くはずがなかった。今回も答えは「NO」だ。
「リンちゃん」
「わかってますよ。先輩。答えはNoです。」
「まだ何も言ってないんだけど・・・」
がっくりと肩を落とす五条先輩。とりあえず、これお土産ね。と仙台土産を渡された。甘味で釣ろうだなんて私はちょろい人間じゃないんだぞ。
「リンちゃん、僕ね。そろそろ身を固めようと思ってて」
「そうですか、おめでとうございます」
「相手は君がいいんだ」
「そうですか。式は欠席で電報を送らせていただき・・・は?」
五条先輩の話を上の空で聞いてた私はキーボードをタップする動きを止める。
周りで聞いていた看護師達はきゃあきゃあと黄色い歓声をあげていた。
ちょっと待ってくれ、この人は今なんて言った。
私は高専時代、彼と付き合っていたわけでもなければ告白されたわけでもしたわけでもない。
むしろ、戦闘を仕掛けられまくっていじめられた記憶しかないしいい思い出など一つもない。
どこの要素から私と親展のある出来事があったというのか。頭を抱えていると「ねえ」と催促された。
普段のおちゃらけた声と違って低い唸るような声にびくっと肩を震わせた。うっすらと笑う彼のサングラスで見えない瞳は笑ってないことぐらい自明である。
「どれだけ鈍感なのリンちゃん。いい加減気づいてくれないと仕事いけない体にするよ?」
乙女ゲームだとドS系男子に分類される甘いセリフになるかもしれないが、彼ともなれば最強の特級呪術師だ。もはや脅迫ともとれるような言葉に生唾を飲んだ。徐々にこちらに近づいてくる彼に身構える。
私の見上げる顔に薄笑いを浮かべた彼は、細長く白い骨ばった手を私の右頬に当ててきて、耳元で「考えといてね」といやに優しい甘い声で囁いた。
ひとつ瞬きをすると忽然とその姿が消えていて、微かに彼の残り香だけがそこに存在していた。
・・・違う病院に異動しよう。彼がもう二度と目の前に現れないように。そう心に決めたのだった。
―――――
好きで好きで追いかけまわしてる五条先生と一生好意に気づかない女医のはなし。
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