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復興のため王都に向かう途中、ウィリアムさんと私は二人きりになってしまった。
ヤミさんとユリウス様はわざと私たちを置いて魔法騎士団本部に向かったんだなと心の中で舌打ちする。
色々と、話すことが多すぎて何から話せばいいのかわからない。
ウィリアムさんとの再会をずっと待ち望んでいたはずなのに、いざ目の前にしてみると黙ってしまうあたりシャーロットに負けず劣らず不器用なのだろうか・・・
「リン」凛としたウィリアムさんの声が響いた。頭をぐるぐる回転させていた私は思わず上ずった声で「はい!」と叫んでしまった。
「・・・君が、無事で本当によかった」
ウィリアムさんの横顔を見ると今にも涙が溢れそうで、消えてしまいそうな声で、肩を震わせていた。私はどうしていいかわからず、震えるウィリアムさんの肩にそっと手を置いた。
その手を握るウィリアムさんのひんやりとした手。苦しそうに眉をしかめて絞った声で「―――ごめん」なんて言わないで。
気付いたら私はその肩に置いた手をまわして、ウィリアムさんを抱きしめていた。こんなに彼は細かっただろうか。しばらく会わなかった間に、やつれてしまったような気がする。
泣いているのだろうか、顔は見えないけれど、彼の体は震えていた。
ぎゅっと抱きしめる力を少し強く、そして彼の胸板に顔を埋める。「リン・・・」と私の名を呼んでウィリアムさんの手は私の背中に回った。
誰も通らないような獣道に穏やかな風がさらさらと私たちを撫でていく。顔を見上げると夜明けの光が少しまぶしい。やはりウィリアムさんの頬からうっすら反射する光が見えた。
「ウィリアムさんが悪いんですからね。結局私のこともユリウス様のことも信じてくれなかったし、最後はパトリに任せちゃって私殺されちゃうし」
「・・・深い眠りの中で、君を刺したという感覚だけが残っていた。愛していたはずなのに、君が私に刺されて死んでいる姿がうっすらと見えた。
もう私には何も残されていないと思った。愛する君も、敬愛するユリウス様も、守ろうと決めた王国も・・・」
「だから完全にパトリに身を預けたんですか。ずるいですよ。ずるいです・・・ウィリアムさん」
「――――――謝って済むことではないと思っている。もうこんな酷く醜い男とは関わらない方がいいと――――「絶対にもう放しませんよ、私」―――?」
離れようと抱きしめる手をほどくウィリアムさんだったが私は絶対に離さなかった。泣きはらしてぱんぱんな目を見られたくないのか目をそらすウィリアムさんとそれを許すまじと見つめる私。
「一生分!!!一生分愛してもらいます。ウィリアムさん。今まで団長だからってちょっと気を使ってましたけど、もう気使いませんから!」
つんつんとウィリアムさんの胸板を押した。少しウィリアムさんは私の言葉に押し黙ってしまったあと、抱きしめる手をほどいて、片膝をつく。
そして、私の左手を取ると薬指あたりにキスを落とした。
理解が及んでおらずあわあわと気が動転している私を見上げてウィリアムさんは微笑んだ。
「生涯君を守り、愛しぬくことを約束する――――神に誓って」
プロポーズともとれるようなその言葉にくらくらして頭が働かなくなった自分が絞り出せた返事は「・・・神の使いの天使様が私の中にいることをお忘れなく」なんて可愛らしくもない聖女発言だった。
片膝をつくウィリアムさんと同じ視線になるように私はしゃがみこんで、ひんやりと冷たいウィリアムの手を握る。
「さて、自責の念に囚われてる時間があるなら、私達も街の復興に尽力しましょう。そんでクタクタになったら帰って美味しいもの食べましょ。
――――『金色の夜明け』のみんなと一緒に」
沈んだままのウィリアムさんを励ました。団長がそんな元気ないと団員たちも元気がなくなっちゃうんだぞ。
しかし、そんな心配も杞憂だったらしい。『金色の夜明け』の団員達のいるところに戻ると、あんな元気がなかったウィリアムさんがころっと態度を変えて団長らしくきびきびと指示を与えていた。
なんだ落ち込んでいたのは私の前だけだったのかと安堵して、さすが団を仕切るその統率力に感心して見ていた。
すると、最後にウィリアムさんが「区切りがついたら今日は、美味しいものでも食べに行こう」と団員たちに告げた。
その言葉にやる気が増したのか彼らも一層声を張ってウィリアムさんの言葉に答えていた。
「さて、私も顧問として頑張るぞー!」団員たちとともに復興作業に加勢する。前まで下民の私が近づくことすら嫌がっただろう、王貴族の団員たちはエルフの一件を乗り越えて、今やむしろ迎え入れてくれるような心の入れ替えようだった。
これから始まる新しい『金色の夜明け』の物語。
さて私がもたらす加護は繁栄か転落か。それは彼らの気持ち次第・・・少しずつ好転している『金色の夜明け』の団結力に、私は希望の光を見た。
このクローバー王国もまだまだ捨てたものじゃないらしい。
「ともに行こう、リンーーーーー」
夜明けの光が瓦礫の上に立っていたウィリアムさんを照らし、彼は私に手を差し伸べる。私はその手をとって、城から立ち上る金色の太陽を見つめた。希望に満ちたその光は温かく私たちを包んで、明るく優しい未来を照らしたのだった。
―――――Fin―――――
完結です。最後までお付き合いいただきありがとうございました!