14
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ノゼル団長・・・!」
「私はヤツや・・・お前のように手ぬるくはないぞ」
ウィリアムさんの体だから手を抜いていることがばれていたのだろうか、睨みつけられるノゼル団長の視線を直視できなかった。
彼の水銀魔法は光魔法と相性がよく、さらにフエゴレオン団長の仇のため技を磨いたのだろう、昔より洗練された水銀魔法がダークエルフを襲う。
「水銀創生魔法 刑戮の銀星」
ダークエルフを水銀でできた監獄の中に閉じ込めたノゼル団長は、憎悪に支配されて襲ってくるダークエルフの光魔法をすべて跳ね返した。
それが決定打となり、ダークエルフが倒れる。
アスタ君とユノ君を呼ぶノゼル団長。魔法帝になるのは自分だと告げた彼は、二人の力をついに認めたようだった。
とどめを刺そうとするノゼル団長に私は思わず止めに入る。
「待ってください、ノゼル団長―――これはヴァンジャンス団長の体でもあるんです」
「どういうことだ?顔も魔力も違うぞ」眉を顰めるノゼル団長に、ユノ君が「アスタの剣ならヴァンジャンス団長をもとに戻せるかもしれない」と説得してくれた。
あまり納得してない様子だったが、アスタ君の滅魔の剣がウィリアムさんの体を貫く。その体から膨大な闇がアスタ君の体を取り込んでいく。
「わっ」
「リンさん――――!?」
私までその闇に引きずりこまれそうになって、ユノ君が手を貸してくれてなんとかその場に踏みとどまった。
アスタ君は彼の記憶の中に引きずりこまれていってしまったのだろうか・・・ユノ君にお礼を言って、アスタ君が戻ってくるのを待った。
程なくして、彼は闇の中から解放されて、ダークエルフだったウィリアムさんの体は、パトリへと戻っていた。
「リン様・・・僕は・・・僕はなんてあなたに謝ったらいいか・・・」
「まだ謝るのは早いわ。パトリ。悪魔を倒しに行きましょう」
震える彼の肩をぽんぽんと撫でて励ます。
パトリは小さくうなずいて、「すまないが最後まで付き合ってくれないか」と頼むその顔は先ほどまで絶望に染まった彼とは打って変わり、濁りのない闘志に満ちていた。
しかし休む暇もなく上の部屋から、何やら蠢く襞を持った生物が私達を襲ってくる。
一瞬でその生物に飲み込まれたらまずいと察した私は近くにいたノゼル団長とミモザを守った。ユノ君やパトリが攻撃魔法で襞を引き裂いたが、アスタ君は飲み込まれてしまう。
肝が冷えたがアスタ君は無事だった。十字に切り裂いた彼は無傷でその生物から出てくる。ユノ君が言うには魔力がない体は飲み込む意味がないと判断したらしい。
ミモザが地図魔法で生物の出所を示してくれた。どうやら上の部屋からどんどん生物が溢れているようだ。このままではほかの部屋に波及して危険が及んでしまうだろう。
それに・・・考えていなかった“影の王宮”の崩壊が私の頭をかすめた。少しずつだが、“影の王宮”の崩壊に伴って自分の体の細胞が一つ一つ消えていくのがわかる。
「国を救い、全員でここを出ることが我々の勝利だ。私は下の者たちの援護に向かうついてこいヴァーミリオン家。
リンは奴らを率いて上にいけ。アスタの反魔法ならばユノのの精霊魔法とそのエルフの光魔法で補ってやれば戦場へたどり着けるだろう
行ってこい・・・!」
ノゼル団長の言葉に頷いて私達は悪魔のいる上の階に行くことを決めた。
3人の魔法の力で蠢くあの世の生物を引き裂きながら、上の階を目指していると、突如違う場所から目にもとまらぬ速さで私達の前を通る人の影を見た。
あの姿は、私の見間違いでなければ初代魔法帝ルミエルと側近のセクレだ。私がその名を叫ぶと振り返った二人が驚いた顔で私に手を振った。
同時に上の階へとたどり着く。悪魔と対峙する私達に、ルミエルが「500年ぶりだな・・・悪魔・・・それにリン――――!」と叫ぶ。
視線をずらすと、そこにいたのは不完全な魂で動いているリヒトの姿だった。セクレの封緘魔法がリヒトの魂を解放し、500年前の決戦の役者はこの場にすべてそろった。
「二人とも――――あの時言えなかった言葉を・・・ようやく言える・・・ありがとう、ルミエル、リン」
完全に目覚めたリヒトにほっと胸をなでおろす。私たちはまだ侵食されてないブロック塀の上に移動した。上の階の崩壊は酷いもので、ほとんど足場がない状態だった。
「パトリ・・・魂の深いまどろみの中ですべてを見ていたよ。」
「リヒトさん・・・僕は」
「500年前・・・私たちは悪魔の計画に敗れた・・・絶望の中で私が罪なき人々を傷つけぬよう・・・さらなる絶望を生まぬよう止めてくれたのはルミエルとリンだった。
形はどうあれ君にも・・・君を止めてくれるものが現れたようだね・・・
パトリ・・・君の振るった刃は君にとって正義でも刃を振るわれたものからすれば決して許すことのできない罪だ・・・
けれど、許されないとしても・・・間違っているとしても・・・これだけ私は言いたい・・・よく頑張ったね」
「リヒトさん・・・!」リヒトの言葉に泣きじゃくるパトリだが、悪魔は私達を待ってくれはしない。
「いま私たちがやるべきこと――――それは、次に怒る悲劇を止めて、私たちの500年に決着をつけることよ、ルミエル、リヒト」
「ああ―――」「そうだな――――」そう言って二人とも臨戦態勢に入った。リヒトは光の剣を構えて、私は光の杖を構える。
「ンッンッンッ・・・そうですね。あなた達のくだらない想いを全部飲み込んで終わりです・・・!!」
「光魔法 マナゾーン“アヴィオールの灯 榮光”」
「剣魔法 “開闢の一閃 連撃”」
「光魔法 “断罪のマリア”」
蠢く生物を引き裂き、言霊魔法を唱える隙も無く連携魔法を続ける。500年前の決戦なのに昨日のことのように息の合った魔法の連携は私達の絆の強さを感じた。
しかし悪魔があの世の魔法を引き出して三又の槍がルミエルの左手を裂いた。
「ンッンッンッ・・・私をこれほど攻撃できるのは流石・・・ですがあなた達がどれだけ強かろうと肉体と魔導書がそろった私は殺せませんよ・・・!」
「させん!!!!」
アスタ君の反魔法を纏った剣が悪魔の三又の槍とぶつかり合うが、悪魔の『刃の嵐』が彼を襲った。私の防御魔法で魔法の剣を防ぎ、残った実体の剣をルミエル、リヒトそしてユノくんが相殺してくれる。
リヒトとユノ君の間に流れる不思議な魔力の同調は、やはり彼らは親子だったのだろうか―――その間にセクレの封緘魔法で、ルミエルの引き裂かれた左腕が再生された。
「ンッンッンッ・・・私の封印といい・・・なかなか便利な能力ですねえ。この世界の魔法・・・それも四つ葉ですらないうじゃうじゃといる雑草にしてはね・・・!
体を手に入れた私にとっては矮小で無価値な魔法ですが・・・!」
「・・・黙って!他人から奪うことでしか存在できないくせに・・・!アナタが見下し踏みつけ弄んできたものにアナタは今日敗れる・・・!」
「ンッンッンッ・・・ならば急いだほうがいいですね!この魔法はいくら蹴散らそうと私を倒さない限り溢れ続けます・・・!
そして、影の王宮の
のんびりしてると皆さんもろとも、彼女によって殺されてしまいますよ・・・?ンッンッンッ・・・!」
悪魔の言葉を嘘だと言えない自分が憎い・・・私の体は半分くらい消えていた。影の王宮の崩壊とともに消えていく私の体。
だが悪魔を倒す前に彼らを解放してしまえば、現世に悪魔を放つことになってしまう・・・それがすなわち私たちの敗北だ。
リヒトがエルフの力を集約して悪魔に向けて剣魔法を一撃を放った。
「そんなことはさせない・・・くらえ・・・エルフの怒りを・・・!剣究極魔法 “宿魔の剣 覇劫”」
悪魔は引き裂かれ、放たれる光とともに消えていく。誰もがその魔法によって、エルフたちの力によって悪魔は倒されたかと思った。
しかし先ほど私が放った魔法のように、心臓だけが残り、そこからまた再生を始める。しかし、アスタ君とユノ君が諦めることはなかった。
ユノ君の風精霊創生魔法 “スピリット・オブ・ゼファー”とアスタ君の反魔法“断魔の剣 ブラックディバイダー”両者の剣が悪魔に降りかかる。
彼らの成長速度は異常に早く進み、そして反魔法が悪魔の体を貫き、風魔法がさらに速度をあげた。素晴らしい魔力の連携だ。
しかし、蠢く生物の侵攻は影の王宮全体に波及しようとしており、リヒトとルミエルと私は現代の皆を死なせるわけにはいかないと、私達は意志が一致したように頷いた。
「リン――――すまないがもう少し頑張ってくれ!」
そう言うリヒトの宿魔の剣は絆のあるものと魔力を宿し、宿され繋がる剣
ルミエルの悪魔の魔法に抗える魔力を剣に通じ、私の“影の王宮”の力で空間全体の魔力をいきわたらせた。
「「「合体魔法“宿魔の剣・護光”」」」
蠢くあの世の生物の餌食にならぬよう、影の王宮にいる者たちすべてに防御魔法が施される。
その間にアスタ君の反魔法、ユノ君の風魔法、そして下の階にいたヤミさんの闇魔法が連携して悪魔に一撃を刺した。
壊れていく悪魔の体。再生しようとする彼に追い打ちをかけて、ついに悪魔は長い戦いを経てばらばらに砕け散っていった。
「勝っ・・・・・た―――――?」
さらさらと粉になった悪魔の体は風に溶けて消えていく。ルミエルとリヒトも同じような反応をして歓喜にあふれた。
しかし、“影の王宮”の崩壊も近く、私の体のほとんどは薄く消えかかっていた。訪れる二度目の死。しかも今度は本当にこの世から消えてしまうらしい。
残る力を振り絞って、私は影の王宮の解放を唱える。出口が解放されて、脱出を試みる彼らを見送った。
するとほとんど実体のない私の腕をつかんだヤミさんが一緒に脱出しようとしていた。
「おいリン・・・!!!てめえ二度目死ぬのは許せねえぞ・・・!!!」
「ヤミさん・・・!?ダメですって、私はここの管理者です、ちゃんとみんなが出ていくの見届けないと・・・・!」
「んなの全員脱出できるに決まってんだろうが――――その中にてめえも入ってんだよバカ秘書が・・・・・!!!!」
影の王宮の崩壊とともに黒い翼がどんどん抜け落ちて、実体を保てなくなった私はさらさらと悪魔が消えていくように風化していく。ヤミさんが掴んでくれていた私の腕も風化して、離れ離れになっていった。
脱出通路の激流に流される間に、私の名前を呼ぶ声が沢山聞こえる。ああ、愛されてたんだなあ私・・・なんて思って、出口に向かって小さくなる彼らの姿を見届け、私は影の王宮の出口を閉じたのだった。