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正気を取り戻したマリーちゃんは私達の安否を気にして泣き出してしまった。
「気にしなくていいんだよ」と慰めていると、ゴーシュは「俺なんか放っといたらよかっただろうが」なんて言ってくる。相変わらず彼は精神の成長が遅れているというかなんというか・・・。
「今言うべきは、そんな言葉じゃないだろ!!ちゃんとおれたちを見ろ!!!」
アスタ君、ゴードン、そしてグレイがいつもよりも強気でゴーシュの前に立ちはだかる。
マリーちゃんにまで「お兄ちゃん!!!」と追い打ちをかけられて、
行き場を失ったゴーシュはようやく皆に悪態をつきながらだが、「ありがとな」と感謝の気持ちを述べるようになれたのだった。
そんな中、上空からまばゆい光が差し、何事かとその光を見ると、そこからバネッサやラック、チャーミー達が降って来た。ドロシー・アンズワース団長の夢魔法と戦ってそれに勝ったらしい。
「あら・・・・!?リン、おかえりなさーーーい!!!」とバネッサが私に抱き着いてくる。相変わらずおっぱい柔らかいなくそ。
「リンさんこの黒い翼なんなのらー?」と聞いてくるチャーミー。
こいつもしかして食べようとしてるなと察した私は釘をさしていると、「リンさん―――――!!!!」空から降ってくるノエルちゃんを反射的に受け止めた。
「ずっと探してたんですよ!!!?急にいなくなるし、『金色の夜明け』はほとんどエルフになったと聞いてとても心配してました・・・!」
「ごめんね、ノエルちゃん。心配してくれてありがとうね」よしよしと頭をなでると、「あ、ずりいノエルおれもやってもらう!!」とアスタ君まで私の前に座って撫でられていた。
「ハイハイ~~~!みんな食べて食べて~~~~!ヤミ団長とカマキリ団長が行ってますけど敵もすごいのそろってるみたいだから魔力回復して加勢に行きますよ!!!」
チャーミーが魔法で次々と作ってくれるごはんを頬張りながら、決戦に備える『黒の暴牛』の団員たち。中にはミモザや、白夜の魔眼のメンバーだった人間達が混じっていて改めてこの団員達の良さを知った。
「あ、あなたが私達を生き返らせてくれたおねーちゃんだ~」やっほーと気の抜けた声で、やけに大きな白いシャツを着ていた。聞けばアスタ君の服を借りているらしい。
全然記憶になかったが、話を聞いていると、復活の礎の前でパトリによって嵌められた彼らはエルフの生贄になるはずだったが、天使様のリンちゃんがそれを救済していたみたいで今はぴんぴんしている。
みんなと談笑しながらチャーミーのご飯を食べていると、王都の門からエルフの伏兵が私達を襲って来た。
不意打ちともいえる攻撃に後れをとった私達が身構えると、その前を爆風とともに見覚えのある炎魔法がそれを打ち消す。
「やっと起きたか、馬鹿者・・・!」「手間をおかけしました、姉上・・・!」
今まで眠っていたはずのフエゴレオン団長は火の精霊サラマンダーを従えて復活し、メレオレオナ様も元気なお姿で久しぶりに拝見した。
彼の復活に驚く団員たちと、中でも一番感動しているアスタ君。そりゃそうだ、あの状況でここまで回復するだなんて、回復魔導士の私でも予想していなかったのだから。おそらく火の精霊サラマンダーの力も関与しているのだろう。
「リン・・・君には大変世話になった。この借りはいつか、戦場で返そう」
フエゴレオン団長が手を差し伸べる。その表情はいつになく勇敢で男らしくて・・・あれ、サラマンダーを従えてなんか前より男前になったような・・・
あ、いけないいけない、私はウィリアムさん一筋なんだった。と見とれる私は首を振ってフエゴレオン団長と握手をかわす。
「ご無事で何よりです。フエゴレオン団長。この日を待ちわびておりました」
「君もあまり見ない間に、見た目が変わったようだな」
「ロイヤルナイツに入らず王都で調べたいことがあると言っていたが・・・変わったのはその小汚いカラスのような翼だけのようだな!!!!だから一緒に来いと言ったのだ!!!」
先ほどからずっと思っていたけれど、そんなに私の変化に順応しすぎじゃないかあなた達。
これが神の使いの本当の姿だの、この世にはいてはいけない堕天使だの言っても絶対に信じてはくれないだろうと頭を抱えた。
「メレオレオナ様・・・お言葉ですが私も何もやってないわけじゃなくて「言い訳は見苦しいぞリン!!!その腑抜けた面構え叩き直してやる!!」ええ――――」
「姉上、リンは見ての通りお疲れのようですし少しは労わってやっても―――「フエゴレオン・・・貴様・・・昔からリンにぬるかったよなあ?あァ??さては貴様リンに思いを寄」姉上!!!!!」
何やら二人の喧嘩が勃発する寸前、ノゼル団長が駆けつけてきた。彼もなんだかんだ好敵手としてフエゴレオン団長の身を心配していたのだろう。
「ブランクがないといいが」と嫌味を言っていたもののその顔はとても嬉しそうだった。
「おいおい、あの穴、どんどん小さくなってねーーーか!?」
マグナが影の王宮への扉を指す。冥界の番人である私はこの扉を自由自在に開いたり閉じたりできるはずなのだが、どうやっても冥府への扉が大きくなることはなくて首を傾げた。
「とにかくみんな、早く影の王宮に入りましょう」と誘導するが、私達の前にはエルフに乗っ取られている『金色の夜明け』の団員達が立ちはだかった。
「リン様・・・なぜ人間など庇われるのです・・・!あなたは冥界の番人でしょう!?」
エルフに乗っ取られた『金色の夜明け』の団員の一人が私に告げる。私は首を振った。冥界の番人ではあるがあなた達の味方ではないと。
「500年前、私はあなた達に教えを説いたはずです。
“敵を許すのです。慈悲と博愛の精神を持って、わかりあい、共存のために手を取り合うのです。種族や身分の垣根を超えて”
冥界の番人はエルフの味方などではない。慈悲と博愛の精神を宿すものの味方よ」
そう言ってアスタ君を見つめた。彼はびっくりした顔で「俺っすか?」と首を傾げる。私は頷いた。
彼のような、たとえ敵であっても恐れず歩み寄ろうとし、たとえ魔力が低くても妬まず努力をする、彼のような存在こそが、私が導くべき人なのだと。
「リン、行きなさい。ここは私達があいつらの相手をするわ――――」
「バネッサ・・・」
バネッサの心強い言葉に勇気を貰った。マグナもアスタ君に影の王宮に行くよう告げる。
「ノエル―――――――!!!オマエもいけええええ!!!」
頭上から聞こえた男の声。その主はなんと、ノエルちゃんのことを軽蔑していた兄だった。
彼女の力を認め、そして影の王宮へと入るメンバーに加勢するよう告げる。
戦功叙勲式の時に兄弟に酷い扱いを受けていたことや、海底神殿で悩んでいたことを思い出して、彼の態度が改まったことに対してなぜか私の方が目頭が熱くなった。
「もう、なんでリンさんが泣いちゃうんですか」と眉を下げて笑うノエルちゃん。いや、おばさんもう歳だからか涙腺がもろいのよね。鼻水垂れてきた。
「行かせるものかぁああああ!!!!」
エルフたちが私達を阻むが、残る覚悟を決めてくれた『黒の暴牛』の団員たちが彼らに向かっていく。
私は大切な仲間たちを導くために私は光の杖を掲げた。
「冥府の扉よ、彼らに導きを与え給え――――」
光の杖が冥府の扉向かって一筋の光を与えた。そして、私達は光に包まれて地面から足が浮くと、冥府の扉に向かって導かれていく。
「リン坊。貴様、このような技を隠し持っていたとは」
「姉上、おそらく彼女の技ではなく・・・これは『伝説の聖女』としての使命なのではないでしょうか」
「おっしゃる通りです、フエゴレオン団長。私はあの世とこの世の境と言われる影の王宮の番人・・・それが神から与えられた一つの使命」
「神の使いにしちゃあ、天使というよりそれは悪魔の翼に近いと思うがな。なんだ、お前のことだからクビにでもなったか?」
メレオレオナ様もさすがに鋭いなあと苦虫を嚙み潰したような顔をしてしまった。詳しいことを話すのは次に取っておくとして、彼らを冥府の扉の中に誘う。
影の王宮に入った彼らは激流とともに長い通路を流されていく。ここは魔力も操作ができず抗うことはできない。ノゼル団長が私に聞いた。影の王宮の番人とは具体的に何をするのかと。
「さすがノゼル団長。抜け目がありませんね。影の王宮は番人の魔力を動力として存在しています。つまり私が死んだらこの王宮は消える・・・。
そして、侵入者は私の許可なく現世に帰ることはできません。」
「つまり、リンが死んだら永遠に私達はここに閉じ込められるということだな」
「端的に言えばそういうことになります」
「えええ―――――――」冷静に頷く団長達の一方でアスタ君とノエルちゃんの叫び声が聞こえた。
「大丈夫、私簡単に死なない体に作られてるから。
でも・・・問題は影の王宮が戦闘で傷つけられた時。例えばこの空間がほとんど崩壊して足場も保てない状態になると、私も自分の体を保っていられなくなる」
そう脅してみたが、まあそんな最悪な事態は起こりえないだろう。たとえ悪魔でもそんなチート級の魔法を使ってくるわけがないと思い「なんてねー」と笑う。
「とにかく、この激流の波についたら、なるべく一人にならないように行動してください。おそらく、敵は想像している以上に、強いから」
そう言って激流にのみ込まれていく彼らと、違う方向に向いている波に乗ろうとすると、「リン、どこへ行く――――」と驚きながらも心配したフエゴレオン団長が私の腕をつかんでくれた。
「大丈夫ですよ。フエゴレオン団長。私はここの番人としての行動をとります――――あとでまたお会いしましょう」
フエゴレオン団長の手を放して、私は激流に流されていく彼らを見送った。