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恵外界 ハージ村
ユリウス・ノヴァクロノは隣国 ダイヤモンド王国による恵外界の侵略を防ぐため次の侵攻先と予想されるハージ村を訪れていた。
その日は、偶然にもグリモワールの授与式が行われており
彼も未来の騎士団員がいないか見極めるため、観客に混じりその場に居合わせた。
しかし、毎年のように目立った授与を受ける者はおらず、淡々と授与式は終わりを迎えていた。
このような小さい村では難しいかと思っていると、神父の後ろに隠れて幼い少女が授与式の様子を見ていたのだが、その手に持つ純白の魔導書を彼は見逃すことはなかった。
ユリウスは神父のもとへ向かっていくと、それに気づいた少女はついに見えないように隠れてしまう。
神父はユリウスを見て「あ、あなたは・・・!」と驚きで言葉を失っていた。
「急にこのような場でお声掛けして申し訳ない。失礼だが、彼女の持つそれは魔導書かな?」
神父の背中に隠れてぎゅっとローブを握るプラチナブロンドの髪を纏った少女はユリウスに声かけられて今にも泣き出しそうだ。
慌てた神父は少女を抱っこして、「いかにも、彼女が教会に拾われた時から魔導書とともにおりました」と言った。
ふむ、とユリウスは考えながら少女を見やる。どう見ても齢15にはいかない幼さだろう。10を超えたあたりといったところか。
そしてクローバーの模様すら描かれてない魔導書は、この国のものではないことが伺える。
光を纏った多数の粒子が少女の周りを浮遊しており、目を細めるとその一粒一粒の粒子は人型をしていた。どうやら、泣き出しそうな彼女をあやしているらしい。
ユリウスはそれが光の精霊であると察すると、すべてが繋がったようで「ああ」と少し大きな声をあげた。びくりと少女はその声に怯える。
「光の精霊、そして歳に囚われない純白の魔導書――――彼女はもしかして、もしかすると『伝説の聖女』では・・・?」
「・・・やはり、そうでしたか」
神父はユリウスの指摘に顔を曇らせた。
「この子は物心をつかない頃から、この村随一の魔力をもっておりました・・・特別な存在であることはわかっていたのですが、本当に逸話の『伝説の聖女』様の転生体であるとは思わず」
「いえいえ、神父様がそう思われるのも不思議ではありません。500年も転生体が現れることはなかったのですから・・・」
本当だったら他国にこの事実を気づかれる前に、彼女を保護しなければならないのだが、おそらく神父にしか心を許してないのだろう。
今、彼女を魔法騎士団に迎え入れたらきっとその力は発揮されることはない―――そう悟ったユリウスは、神父に「3年後、彼女を魔法騎士団に迎え入れたい」と率直に話した。
今までハージ村では魔法騎士団に入れた者はいなかった。そのユリウスの申し出に驚嘆した神父は「ええ、魔法騎士様がそうおっしゃるなら喜んで彼女を預けましょう・・・」と涙ぐんで答えた。
それからというものの、3年間ユリウスは足繫くハージ村に通い、少女に心を許してもらうようプレゼントを与えたり文学や作法を教えたりして距離を縮めたのだった。
彼女の名前はリン――――その名を教えてくれたのは、通って1年が過ぎた麗かな晴れた日だった。
あの初めて会った頃と打って変わり、ユリウスが教会に訪れるとリンは神父から離れてとてとてと小走りをして「ユリウスさん、こんにちは」と目を輝かせるようになった。
娘ができたかのような感覚でユリウスは後ろをついてくる彼女を王都まで連れていくこともあった。
それを見た魔法騎士団の者たちに隠し子だと噂されることもあったがどこと吹く風、彼女に魔法だけではなくこの国の歴史から身分差別があることまで現実を見せることもあった。
齢13を過ぎた頃、彼女は自ら「魔法騎士団に入りたい」と神父に申し出た。その言葉を待っていた神父は、13歳とは思えない彼女の芯のある強さとたくましさに涙をこらえた。
そして、『灰色の幻鹿』団に入団した彼女は、かつて団長だったユリウス・ノヴァクロノのスパルタ教育によって齢15にして彼の右腕として活躍をするようになった。
彼女の故郷であるハージ村に、ダイヤモンド王国の攻撃が起きた時も防御魔法で防ぎ、さらに色んな地で前線に出向いていた彼女は『伝説の聖女』としてその名を轟かせたのだった。