01
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リンが目を覚ますと、温かいぬくもりと肌から布地の感触が伝わって来た。
「起きたかな」頭上から穏やかな声が響く。リンはヴァンジャンスの腕の中で眠っていたことに理解するのに時間がかかった。
「~~~~~~!!大変失礼いたしました!」
ヴァンジャンスの胸板から退いて後ろに下がっていくリンの腕を「危ない」と、掴む。
「それ以上引くと、また落ちてしまうよ。」と、リンは後ろを振り返るとたしかに竜の背中の終わりが見えていた。
リンは挙動不審になりながらも、とりあえずその場に座り込む。
「ほほほんとうに失礼いたしました。私なんで寝てしまったんだろう・・・」
「きっとヤミにこき使われて疲れていたんだろう。気にしなくていいよ。」
「・・・だいぶ昔のことが夢に出ました」
「ん?」とヴァンジャンスが首を傾げる。「『灰色の幻鹿』の頃かい?」と聞いてリンは首を横に振る。
「いえ、ヤミさんとウィリアムさんが新しい団の団長になった時のことです。」
そう言うと、ヴァンジャンスはああ、と思い出して懐かしそうに目を細めた。
「あの時君は泣いていたね。とても苦しそうだった」
「ウィリアムさんに見られちゃったんですよねえ」
「どうしていいかわからなくて、思わず固まってしまったよ」とヴァンジャンスは眉を下げて笑った。
「あの時・・・今もまだありますけど、“下民の聖女”と王貴族にいじめられた最盛期だったんです。
とても苦しくて、でも誰にも言えなくて、でも回復魔導士のトップリーダーとして指揮しなくちゃいけなくて・・・まさに地獄だったんです。
誰かに助けてほしかった。すがりつきたかった。そんな思いの中、ユリウス様に魔法騎士団の再入団の命を受けたんです。」
今になってからこそ言える、あの時の私の苦しみ。
『黒の暴牛』に入ってから、ヤミさんが方針で決めていた通り、
身分や出自に関係ない団員がたくさん入ってきて、わいわいと家族の一員のように接してくれて―――私の心は救われた。
「・・・その時、君を救ってあげられなくて、ごめん。君には、沢山世話になったのに」
「いえいえ、ウィリアムさんにも救われましたよ。さて、目的地が見えてきたみたいです。」
二人は雲を抜けた先にあるダイヤモンド王国の軍用基地を捕らえた。
「かなり大きいですね・・・クローバー王国と全面戦争でも始めるつもりでしょうか・・・」
「徐々に侵攻はしてきているからね。いつそうなってもおかしくはないだろう」
この地形は戦争を始めるとなると前線から少し離れており、港からも近く、物資の補給と運搬には最適であった。
目的は格納庫と物資運搬経路の破壊のため住民への被害は最小限に抑えようと、リンは居住区に防御壁を施す。
「リン、こちらの防御魔法と強化魔法も頼んだよ」
「わかりました」
ヴァンジャンスの世界樹魔法は絶大な効力はあってもその力を行使するには時間を要するためリンの防御回復魔法と相性がよかった。
異常に気付いたダイヤモンド王国の魔導士は彼らに攻撃を仕掛けるが、リンの防御魔法はいくら攻撃しようともびくともしなかった。
「でた・・・!浮遊する絶対要塞・・・あんなの勝てるわけがねえ・・・」
「あなたたちを攻撃する意思はありません。彼の魔法を食らいたくなけらば、居住区に逃げなさい。」
リンの魔力強化魔法の効果もあってか、さらにその魔力を高めたヴァンジャンスは軍用基地の主要部を次々と大木へと変えていく。
周りにいた魔導士はその大木の栄養となり、さらにその大きさを増していった。
その様子を空からみた魔導士は一目散に防御壁が張られた居住区に逃げていく。
「どうやら八輝将は不在のようだね。」
「ええ・・・下手に交戦が長引けばこちらも不利になりますから、幸運だったかもしれません」
予め密偵により押さえられていた格納庫や管理棟も半壊させたところで仕事は終了した。
魔法帝が八輝将との戦闘を想定し超精鋭による二人を派遣したが、不在ということで拍子抜けとなってしまった。