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Side Patry...
500年前―――――
聖女 リン様の加護のもと、齢15になる少年少女の魔導書の授与式が執り行われたその時、エルフの英雄が誕生した。
「四つ葉の魔導書だ・・・剣魔法のリヒトが四つ葉の魔導書に選ばれたぞ――――!」
「四つ葉って何?お母さん」
「四つ葉は選ばれた者だけが手に入る“幸運”が紛れ込んだ魔導書なのよ・・・!」
お母さんと一緒に授与式を見ていた僕は、そこに誕生したエルフの英雄を眺める。
長い歴史の中でもわずかな者しか手に入れることができない四つ葉の魔導書。
「四つ葉の魔導書おめでとう、リヒト。あなたに神のご加護を――――」
「ありがとうございます。聖女様――――」
四つ葉の魔導書に選ばれたリヒトさんが、僕がずっと敬愛している聖女のリン様によって神の加護を受ける。
その姿がどれだけ尊く神々しいことか。周りが惚れ惚れするほど二人はお似合いで、英雄視されていた。
聖女様の魔導書は四つ葉や三つ葉等の柄はなく、純白で染まった穢れのない魔導書。
お母さんは、その魔導書は聖女様しか扱うことができず、その美しい魔導書を盗んだとしても彼女しか従わないと説明してくれた。
それからというものの、リヒトさんとリン様がいるところにいつも僕もついていくことにした。
「リヒトさん、聖女様――――!」
「またおまえか、毎日毎日うっとーしーぞ、あっちいけ」
「あはは、そんなことはないよライア。私はうれしいよ。」
「パトリ、ほらこっちに来なさい」
除け者にしてこようとするライアと違って受け入れてくれるリヒトさんと聖女様。聖女様は僕のことを弟のように可愛がってくれて、抱っこしようとする。
でも僕はもう子供じゃないから、「やめてください」というと少し寂しそうに聖女様は苦笑した。
「ところで―――聖女様とリヒトさんは聞いてますか?人間が僕らエルフを襲ってくるんじゃないかって話・・・」
「・・・ただの噂でしょう?パトリ」
「だけど・・・ない話じゃないですよ。あいつらは、戯れの為だけに動物を殺せる邪な心を持つ種族ですから。
一人一人の魔力は弱いくせに、数が増えて調子に乗ってるんですよ・・・昔は自然災害から僕らエルフによく助けられてたくせに・・・」
「きっと怖いんだ、私たちと同じさ。似ているのに知らないから恐れている・・・同じ子の力魔導書を与えられる者同士・・・わかりあえるはずなんだけどね。」
人間に疑いの目を向ける僕に、「君もリンの教えを受けに教会に行くといい、彼女の慈悲と博愛の精神は勉強になるよ」とリヒトさんが誘ってくれたので、リヒトさんが行くときに僕も行こうと決めた。
「リヒト、あの竜巻・・・」
リン様がそういうと、リヒトさんはその竜巻の中へと自ら体を投じ、魔力が暴走した少女を救った。
そのあとを追ってもう一人の男がやってくる。どうやら二人はエルフと信仰を深めるために王都からやってきたらしい。
それからというものの、リヒトさんとリン様、そして二人の人間とよく過ごすことが多くなった――――
「エルフのみんなのマナの扱い方は本当に凄いよ!そこに僕ら人間の魔道具の技術を合わせれば、この地をより豊かで安全な場所にできる!そこでお互い手を取り合って生きていこう!」
そう説いた人間は僕たちエルフに徐々に受け入れられて行って、ついにリヒトさんと人間の間に新しい命が宿った。
聖女様とリヒトさんが結ばれると思っていた僕は、その人間の女はあまり快く思っていなかった。
「なんだ気に食わねーのか?聖女様のことだけ考えてればいいんじゃね」
「うるさいですよライア」
「パトリ、結婚式の準備、一緒に手伝って――――」
「あ、はい聖女様!今行きます―――」
まあ、優しく全てを包み込んでくれる聖女様も人間の親交を望んでいるんだ・・・リヒトさんも幸せそうだし・・・
あの二人の言う通り・・・人間ともわかりあえるのかな――――
そう思っていた矢先だった。
結婚式の当日、人間達が魔道具で僕たちの村を攻めてきて――――僕らエルフを殲滅した。
僕が命を落とす前、視界には人間を抱えて立っていたリヒトさん、そして大きな翼を生やしたリン様がいた―――あれは、転生魔法だったのだろうか――――
500年の時を経て、目覚めた先はリヒトさんに似た人間の姿だった。この時、僕は誓った、どんな手を使ってでもエルフの皆をよみがえらせ、そして今度は僕らが人間を滅ぼす――――と。