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繰り広げられている第二回戦の試合に目を向けると、予想していたとおりランギルス副団長はフィンラルを殺す勢いで攻撃魔法を仕掛けていた。
「兄さんが・・・僕に勝てることなんて、何一つないんだ・・・!」
“三魔眼”にも似たような禍々しい異常なマナに会場にいた誰もが異変を感じた。
私が試合を止めようと防御魔法を張ろうとすると、ユリウス様の制止の声がかかる。
「リン、もう少し待とう―――――」
「ユリウス様・・・しかし・・・!」
私がユリウス様に反論し制止を振り切ろうとする一方、試合ではフィンラルがランギルス副団長に対抗しようと空間魔法を発動する。
「ランギルス・・・おれたちは兄弟だ!ちっとも兄らしいとこ見せたことなかったけど・・・」
「何もかも放って出ていった・・・人を傷つけることもできない臆病者が・・・兄貴面するな――――!」
「オレがオマエを止める――――!」
空間魔法と空間魔法の攻撃がぶつかり合う。轟音と凄まじい強風が吹き荒れて、フィンラルチーム側のクリスタルが壊れてしまった。
フィンラルの弱ったマナを感じた私は会場を飛び出して彼のもとへと向かった。
その場には、ランギルス副団長の空間魔法によって穴の開いた動かないフィンラルが倒れていた。
「なんてこと・・・」
「どいてください『伝説の聖女』様、今から僕はこいつを消すんですから・・・!」
とどめを刺そうと空間魔法を唱えるランギルス副団長を見据えてフィンラルを庇った。絶対にそんなことさせるものか――――
その瞬間、ランギルス副団長の前にマグナ、ラック、そしてアスタ君が立ちはだかる。
「それ以上手ぇ出してみやがれ・・・」
「試合なんてカンケーなしに・・・やるよ?」
「オマエおかしいぞ・・・もう勝負は決まっただろ!!」
さらに、私たちの前に魔法帝と側近のマルクスと私の部下だった回復魔導士がやってきた。
ここまでくれば、ランギルス副団長も抵抗することはできやしない。
「仲間に手加減して挑む者は信用できないけど・・・仲間を殺そうとする者は信用以前の問題だね・・・!
リン君。回復魔法を頼むよ」
魔法帝の言葉に頷いて、私はフエゴレオン団長に以前施した「光創生魔法 女神の祝福」を発動する。
「あとは任せました、皆さん」
背中から生えてきた光の翼が私とフィンラルを包み込み、繭を形成した。後ろ髪を引かれる思いであるが回復が終わるまでの間、私とフィンラル現世と隔絶されるため、ランギルス副団長の対処は彼らに任せる他なかった。
ああ、アスタ君たちの試合、応援してあげたかったのになあ―――ま、戻ってきたら精一杯甘やかせてあげよう。
数日後――――――
光の繭から私とフィンラルを解放されて、なんとか致命傷は免れたようだった。あとは設備の整った病院で長期療養になるだろうと眠ったままのフィンラルの頭をなでる。
「よく頑張ったわ、フィンラル――――」
顔色がよくなって、安らかに眠っている彼を見ていると、よく知ったタバコのにおいがして周囲を見渡した。
「おはよう、『伝説の聖女』サマ」
遠くで私とフィンラルの様子を見ていたのだろうか。ヤミさんが仏頂面で私達のもとへやって来た。
「ああ、ヤミさん。この様子だともうロイヤルナイツ選抜試験は終わったようですね」
会場を見渡すとそこはもう人っ子一人見当たらず、迎えに来てくれたヤミさんがあれから数日経過していることを知らせてくれた。
さらにユノくんとノエルちゃんのチームが優勝したこと、ランギルス副団長は捕縛されたこと、そして赤髪の細身の男―――ゾラが『黒の暴牛』に戻るかもしれないと告げた。
「続きは王都の病院で治療してもらうとユリウスの旦那と話した。お前は帰って休め」
「え・・・でも」
「心配すんな。あの部屋はずっとお前のもんだよ」
あらかた回復が終えて眠っているフィンラルを米俵のように担ぐヤミさん。マナが残り少ない私を気遣ってくれているのだろう。
それに、『金色の夜明け』に行くはずの私に『黒の暴牛』の部屋をずっと残してくれると言って、目頭が熱くなった。不器用なのにお人よしなんだから。
『黒の暴牛』に戻ると、変わらず団員たちが私を出迎えてくれた。
「お帰り~~~~~リン!!!長い間フィンラルの治療ご苦労様~~」
そう言って飲みましょうと酒瓶を持ってくるバネッサは相変わらずだし、げっそりしている私に「食べろ」といってマナ増幅食を振るってくれるチャーミーも相変わらずだし、そんなこと気にも留めずに戦いを仕掛けるラックも相変わらずだし、ラックのちょっかいに受けて立つマグナも相変わらずだし、全スルーでマリーちゃんの写真を見つめているゴーシュも相変わらずだし・・・
とにかく総じて『黒の暴牛』の団員たちは相変わらず元気だった。
ただ一人、アスタ君を除いて。
「えっと・・・あの子どうしたの」とノエルちゃんに聞くと、ロイヤルナイツ選抜試験でユノ君と実力の差を見せつけられて落ち込んでいるらしい。
何を声かけてもアスタ君は上の空と言った感じだった。困ったなあと思っていると、外から「誰かいるかあああああああああああ」とつんざくような声が聞こえた。
あの声の主はまさか・・・と嫌な予感がして、これから面倒なことにならないように静々と物陰で縮こまった。
恐れ知らずのマグナが玄関に行き、「誰か知らんがやかましいわ――――――!」と扉を開けた。
その瞬間、轟音を立ててマグナは吹っ飛ばされた。ああ、メレオレオナ様・・・お願いだから『黒の暴牛』を壊さないでくれと神に祈る。
「おい小僧、ヤミとリンはどこだ」
メレオレオナ様はぼうっとしているアスタ君に声かける。
しかし、落ち込んでいるアスタ君がその問いに答えることはなく、ぶちぎれたメレオレオナ様はアスタ君を殴って吹っ飛ばしていた。
「ヤミさん今王都にいってますよ、メレオレオナ様」
「王都?どういうことだ・・・リン」
「私もふっ飛ばさないでください泣いちゃうんで」
「まあいい・・・お前にも用があったのでな」
カツカツと威圧的にこちらに向かってくるメレオレオナ様。何かローブから出してくる。爆弾かと思って身を構えると焼酎瓶を二本預けてきた。
「えっと・・・メレオレオナ様・・・これは何ですか」
「フエゴレオンの治療の礼だ。あいつにも渡せ。」
お礼は言ったものの、毒とか入ってないよなと思いながらおずおずと匂いを嗅いだり中の色を見てみる。
そして、メレオレオナ様はアスタ君とノエルちゃんとラックを掴むと「ついでだ連れていく」と言って出ていこうとしたので状況把握ができず思わず制止する。
「なんだ?リン。お前もやっとロイヤルナイツに入る気になったか?」
「え、いや・・・ということは彼らは」
「そうだ。こいつらはロイヤルナイツ選抜試験合格だ。」
その言葉に連れていかれないマグナが発狂している。もう一人『黒の暴牛』に合格者がいたはずだがと見渡すメレオレオナ様。きっとゾラのことだろう。
「彼は直接集合場所に向かったかもしれません。メレオレオナ様。お気をつけて」
「ああ。お前もご苦労だった。」
メレオレオナ様に連れていかれる団員達を見送る。
私もマナを回復させたら『黒の暴牛』から『金色の夜明け』に物を運び出そうと思い部屋でひと眠りすることにした。