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「君は回復魔導士として、ロイヤルナイツには出席してね!」とユリウス様に拝命を受けていたのを思い出したが、どうも荷造りが終わらず私は考えあぐねていた。もうこの時間は始まっている頃だろう。
第一回戦の終了に間に合えばいいかと思って、段ボールに服や本を詰め込んでいく。
もともと物は多くなかったものの、殺風景になっていく自分の部屋。
その中で唯一大切にしているものは、ベッドの脇に立てかけてある、『灰色の幻鹿』にいた頃ユリウス様と、ヤミさんとウィリアムさんの映った写真――――自分がこの世にいたことの証だ。
写真を手に取り、懐かしい気持ちで見つめる。私とヤミさんが喧嘩していて、それをウィリアムさんが困った顔で止めに入っていて、それを少年のような屈託のない笑顔で笑って見守るユリウス様。
あれは確か、ウィリアムさんからハート王国の櫛を貰って大切に使っていたのに、ヤミさんが闇魔法の暴発で私の櫛を消してしまい、半泣きになりながら怒った時だったと思うが・・・
それを見たユリウス様がきらきらとした顔で「ヤミ!また新しい魔法を覚えたのかい!?」と割って入ってきてその場はカオスとなった。
「ああ、いけないいけない、早くしないとユリウス様に叱られる」
とはいえユリウス様が私に怒ったことなど一度もないのだけど。
荷物がまとまったところで、私は光の精霊を呼び出しロイヤルナイツ選抜試験の会場へと足を向けた。
「やあ、間に合ってよかったよリン!」
「遅くなりました、魔法帝」
ロイヤルナイツ選抜試験はもうすでに第二回戦へと突入していた。
タイミングが良かったのか悪かったのか、ランギルス副団長とフィンラルの戦いが始まるところらしい。
あの時、ランギルス副団長は私に対して敵意を示していたように憎悪の瞳と異常なマナが渦巻いていたのは変わっていなかった。
この異常なマナを魔法帝は気づいているのだろうがさすが、顔には出してない。きっと彼のことだ、このロイヤルナイツ選抜試験を通して裏切り者も炙り出すつもりでいるのだろう。
私は第一回戦で負傷した魔法騎士達の救護を行い、彼らがどうか血みどろの戦いを起こさないように祈った。
すでに第二回戦を勝利し会場に戻って来たミモザとアスタ君に声をかける。
「ミモザ、アスタ君。お疲れ様。ごめんね応援してあげられなくて」
「リンさああああああん!!!本当に来てくれたんですね」
「よしよし、アスタ君。第三回戦はばっちり応援しておくからね!強化魔法は使ってあげられないけど!」
「リン様!!ご無沙汰していますわ。もうすぐ『金色の夜明け』に来られるの、とても楽しみですの!」
一緒にお茶したいですわとミモザがアスタ君をどけて私の手を握りしめる。とても可愛い。
その様子を後ろでぼーっと眺めていた赤髪の細身の男がいることに気付いた。久々に彼に会ったと思い私は目を丸くした。
しかし、今は『黒の暴牛』としてではなく『紫苑の鯱』団のローブを身に纏っている様子から何か事情があるのだろうと察し手を振るだけで、特に声はかけなかった。
彼はそれに会釈をして、その場を去っていった。
その様子を見ていたミモザは首を傾げて「ザクスさんとお知り合いですの?」と聞いてくる。
彼の名は残念ながらザクスではない・・・あとで彼の真意は聞いてみるとして、ミモザには「ちょっと腐れ縁」と答えることにした。
『黒の暴牛』発足当初、メンバーがいなかった私とヤミさんは団員集めのため色んな街を旅してまわった。
その時に、私は彼を見つけて『黒の暴牛』にスカウトしたのだ。
それから『黒の暴牛』に現れたことはほとんどなかったのだけれど、この公の舞台に現れたということは何か心境の変化でもあったのだろう。