01
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
数年前――――
野盗の討伐任務が終了し魔法騎士団本部に召集された『灰色の幻鹿』団副団長のヤミとヴァンジャンス。
魔法帝ユリウスは報告を聞き、満足げに頷いた。
「ご苦労だったね。裏切り者を捕らえることができたし、盗賊団も一網打尽にできた」
「盗賊団は木の上で気絶してたけどな」
「はは、そんなこともあるんだねえ。ま、本当にご苦労だった。
――――ところで、ヤミ、ヴァンジャンス。
これまでの実績を踏まえて、2人を新しい団の団長に任命する。」
二人は予想だにしていない昇進に目を張った。
「俺たちを・・・」「新しい団の団長に―――?」と、魔法帝ユリウスの言葉をオウム返しにして未だに信じられないといった様子だった。
「受けてくれるかい?」その言葉に、二人は背筋を伸ばし、敬礼する。
「どっちが先に団長になるか、引き分けだな」
「そうだね、ヤミ。勝負はこの先」
「ああ―――」
「負けないよ」
「オレもだ」
「君たちを信頼しているよ。
そして――――そんな君たちに強力な助っ人を要請した、入りなさい」
ユリウスの側近マルクスが扉を開き、姿を現したのは、プラチナブロンドの長い髪を束ね深海の瞳で二人を見据える美女―――リンだった。
『灰色の幻鹿』を抜けてから数年、彼女を見る機会がなかった二人はその登場に驚きで言葉を失った。
昔の無邪気な明るさと幼さは消え、苦労や死線を潜り抜けた陰りのある色気と、自分と同等、いやそれ以上のマナの重圧に生唾を飲む。
「お前――――」「リン――――」
リンはベルベットの上質なマントを翻し、二人の前で胸に手を当て、深々とお辞儀をした。
「そう、君たちと死線を潜り抜けた、『伝説の聖女』リンだ。
彼女は僕直属の回復魔法魔導士のトップリーダーだったが、魔法騎士団への再入団を依頼した。
とはいえ、彼女の力はどの団にも喉から手が出るほど必要だ。なので、1年交代で彼女の加護を受ける団をこれから決めていこうと思う」
「で、幸運にもトップバッターはオレらどちらかの団ってワケね――――――どうやって決めるんだ?じゃんけんか?」
「うーん、リンはどうやって決めたい?」
「それぞれの団の方針を聞いてから、神の導きに従いますわ」
日の国は仏教なんだよ、と悪態をつくヤミにまあまあと宥めるユリウス。
「ヤミ、君はどんな団を作る?」
「どんな団?そうだなあ―――立場や、出自・・・身分など関係なく、はぐれ者や暴れん坊を集めて、居場所を作ってやりたい。
旦那がオレにしてくれたようにな。名前は・・・そうだな、色んな奴が混ざって、それぞれの色で濁って、全員の色が一つになって―――“黒”
黒色の暴れん坊・・・いや暴れ牛だな!『黒の暴牛』団だ!」
「『黒の暴牛』団・・・うん、君にぴったりだ!―――君は?ウィリアム」
「私は『金色の夜明け』団を作ります。」
「金色の・・・?」
「はい、最強の団を作るのが、ユリウス様への恩返しとなる。文字通り、この世界に金色に輝く夜明けをもたらす、そのための団にします。
暗黒のような夜といえども、陽の光が差し、いつか必ず明けると証明して見せます」
隣でぼそっと「そりゃちょっと臭すぎねえか?」とつぶやくヤミに、はははとユリウスは頷いた。
「それも素敵だねえ。期待しているよ。今日から君は、『金色の夜明け』団の団長だ。おめでとう、ウィリアム」
「はい」
「今日から君は、『黒の暴牛』団の団長だ。おめでとう、ヤミ」
ユリウスはヤミとヴァンジャンスそれぞれに握手をしたあと、リンの所属する団の決定を伺った。
二つの名前が書かれたカードを光の精霊に託すと、光の精霊は空へと消えていった。
「なに、今からあの精霊は神様のとこ行って聞いてくるって感じ?」
「それが神の代弁者としての役割ですから」
「正直言ってうちの団やめといたほうがいいって。一番神様から見放されそうな団になる予感するし。」
「私が決めることではありません、ヤミさん」
「ったく・・・てめえは変わっちまったなあリン」
「確かに少し・・・雰囲気が変わったね」
『灰色の幻鹿』にいた頃は表情が豊かで明るく奔放な彼女だったが、回復魔導士になってからとても瞳が悲しそうだった。
「何も変わってないですよ」そうヴァンジャンスに向ける瞳からは一筋の涙が流れ出して、彼はその表情に固まってしまう。
光の精霊が戻ってくると、一つのカードをリンに手渡した。
そのカードにはヤミ・スケヒロ『黒の暴牛』団の文字が書かれていた。
「『黒の暴牛』団――――――神の導きにより、私はこの団に所属いたします」
誰もがなんとなく、『金色の夜明け』に入るだろうと予想していたので、その決定に唖然としていたが、ほどなくしてユリウスの笑い声が響き渡った。
「そうか、面白くなりそうだね『黒の暴牛』団―――――――では、よろしく頼むよ。」