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ウィリアムさんの小さくなっていく背中を見送っていると、群衆の中から私を呼ぶ声が聞こえた。ヤミさんだ。
「今日は宴だ!!!はやく降りてこい」
「いい加減来年は登壇してくれないとユリウス様も黙ってないですよ」
「あァ?そんなこといーんだよ、それより早くしろ。ほら」
ヤミさんが腕を広げてくる。この人は自分が何をしているのかわかっているのだろうか。会場から何メートルもある地上へ落ちろ、オレが受け止めるから。のポーズだ。
「ほら、じゃないですって。ここから高さ何メートルあると思ってるんですか。受け止めてくれなかったら私死にます」
「限界を超えろ」
「無茶言わないでください」
神の仕業か知らないがぶわっと強風が吹いた。壇上ぎりぎりでヤミさんと押し問答していた私はその強風に耐え切れず会場の外へと体を投げ出される。
何メートルも下に真っ逆さまに落ちていく私。ああ、死んだなんて思って目を閉じるといつまでも衝撃がやってくることはなく、片目を恐る恐る開けた。
「できんじゃねえか」とにやりと笑うヤミさん。筋骨隆々だと思っていたが普通の人だったら私の重さは受け止めきれてないぞとため息をつく。
「普通に階段降りた方が早かったですってば」悪態をつく私に「ほんとおまえって金ピカ仮面団長の前以外は可愛くね~よな~」と頭をかいた。
星所得数の結果でよほど機嫌がいいらしい、ヤミさんは浮足立った様子でいつものバーへと向かう。これから集まる団長たちを嫌というほど煽るんだろうな。
「今日はオレのおごりだリン!じゃんじゃん飲んでいいぞ!!」
「ジャック・ザリッパー団長と賭けして負けてその話がなしになるところまで見えました」
「今日は負ける気がしねえ!!!」
子供のようにはしゃいでいるヤミさん。いつもそう言ってるではないか―――私は頭が痛くなってきた。
バーにやってきたと思ったらふらふらと覚束ない足取りで私の前に座るシャーロット。まだ酒は抜けていないのだろう。
「水いる?」シャーロットに問いかけるが顰めた顔で「いらん。」と一蹴された。強情な彼女のために一応マスターに水を頼んでおく。
しばらくすると、続々と団長たちがバーにやって来た。ご満悦のヤミさんはやってきた団長たちに早速煽り始める。
「やあやあコンバンワ!黒の暴牛より下の団長さんたち~~~!」
「万年最下位がたった一回上に行ったからって調子乗ってんじゃねえぞヤミ コラァ~~~」
「万年最下位にぶち抜かれるってのはどんな気分なのかな~ぷぷぷ」
想像通りジャック・ザリッパー団長とヤミさんが一触即発の雰囲気になる。するとジャック・ザリッパー団長の前にマスターがサービスで酒を提供してくれた。
すると、随分と様子が大人しくなり、酒を嗜み始める。あの酒に何か薬でも入ってるんじゃないかと目を細めた。
「黙らんとその汚い口ふさぐぞ・・・」
「そんな口汚い黒の暴牛に負けておいてよく前髪ねじねじできるな~恥ずかしくないの~ぷぷぷ」
ヤミさんに乗せられて水銀魔法を発動するノゼル団長の前に「店内で攻撃魔法はお控えください」とマスターが再び酒を提供してくれる。
それを飲むとやはりノゼル団長まで大人しくなってしまった。あのマスターもしかして、魔法帝か・・・?
「それはそうとリン、てめー本気で来年から『金色の夜明け』に入るの?王貴族にいじめられちゃうよー?」
さすがはヤミさん、私が悩んでいることをずけずけと言ってくれるなと思いながら少しにらんだ。
「何を言っている、あの『金色の夜明け』の団長がいるじゃないか」
「それとこれとは違うのシャーロット。大人の事情なの。」
そうは言っても貴族のお嬢様。彼女を責めるわけでもないが、世間知らずの高枕とはこのことなのだろう。
「カッカ!どうせ『伝説の聖女』が『黒の暴牛』からいなくなってまた最下位だよ!じゃあな!」
「あれ!?もう帰んのー!今日はてめーの酒に付き合ってやってもいーぞ縦長マン!」
いつもだったらジャック・ザリッパー団長とヤミさんが深酒して動けなくなったところを送っていく・・・という展開なのだが、なぜか恐ろしく聞き分けがいい団長たちはバーから退散した。今日は何か変な日だ。
帰って行ったことを全然気にしていない機嫌のいいヤミさんが私に酒を持たせて「おい付き合え、俺らの祝い酒だ!」と言ってビールを飲ませられていると、
「一度上位に来ただけでだいぶ浮かれているな」と聞きなれた声が入り口から聞こえた。
「あ、アネゴレオン」とヤミさんがメレオレオナ様を見て言うと「誰がアネゴレオンだ」と炎の獅子の腕がヤミさんを掴んでいた。
アスタ、ユノ、ヤミさん、シャーロット、ソル、そしてあとから来たノエルが捕まり、「いってらっしゃい」と見送ると「貴様もだ」とメレオレオナ様に私も頭を掴まれた。
昔の付き合いで唯一彼女へ口答えが許されているだろう私は、事情がわからずメレオレオナ様に聞くと彼女は「温泉合宿だ」とだけ答えてくれた。