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「気を取り直してじゃあ順位をいきなり発表しちゃうよ―――
1位は『金色の夜明け』!!星の数は何と125!去年の星最高所得数96を大きく更新だ~!金色の夜明け勢いが止まらない~!」
周りの歓声は「さすが金色の夜明け!!」と歴代の実績もあって大人気だった。先ほどもそうだったが、ウィリアムさんの英雄っぷりには私も少しジェラシーを感じてくる。
「金色の夜明けは今期も素晴らしい活躍を見せてくれた!それでは星所得に最も貢献した団員に登壇してもらおう。
風の精霊シルフを従えた期待の新人――――ユノ!!」
会場から登壇したユノに私もほほえましく思った。天才だとは思っていたが同郷出身の彼がここまで育つとは――――
歓声からイケメンという声が多数上がる中、勝手に風の精霊シルフが私の光の精霊と戯れはじめ、光の残滓が会場中を雪のように降らせた。
「なんて幻想的な光景――――!」
「『伝説の聖女』のリン様の光の精霊と新人の子の風の精霊の共演なんて滅多にみられるものじゃないですわ―――!」と会場が沸き立つ。
熱気が収まらない中、ユリウス様が続けて2位の発表を始める。
例年通りでいけば紅蓮の獅子王が妥当だが、フエゴレオン団長の負傷もあって今回はどうなるかわからない―――と思案しているうちに、
「黒の暴牛」の名前が挙がって私は固まった。
会場もどよめきに包まれる。それもそうだろう、私の星辞退のせいもあるが星所得数歴代最下位が異例の躍進・・・しかし星所得数101という実績に目を見張った。
「おいおい、聖女様の功績入れたらこれぶっちぎり1位だろ・・・どうなってんだ」とジャック・ザリッパー団長がつぶやく。
会場も脅しだの不正だの不信なことを言ってたがゴーシュの妹や赤毛の町娘がその者たちを反論していたのが見えた。
「みんなが驚くのも無理はない・・・『黒の暴牛』は昨年星マイナス50という前例のない数字を出したからね・・・
でも今年は違う!目覚ましい躍進を見せて一気にこの順位まで上り詰めたんだ。
こればかりは『伝説の聖女』の采配とも言ってもいいかもしれないね。
中でもすごかったのが新人の・・・・
いや、『伝説の聖女』様は黒の暴牛の顧問だから、団員が出てほしいな~?誰かいないか~い?」
そう言われて、どこからともなくアスタが空から降って来た。たぶん、ヤミさんに投げ飛ばされたんだろうな。光魔法で彼のためにクッションを作る。
降り立ったアスタに歓声があがるなかユリウス様が彼を紹介する。
「いやあ―――すごい登場だったね。彼が黒の暴牛で最も活躍した新人アスタだ!
ユノくんとアスタくんは共に新人の中で星所得数一位二位の期待の新生だ。
しかも『伝説の聖女』リンと同郷で二人とも弱冠16歳だ。」
どこの貴族だとワクワクする中、下民の聖女と同じ最果てだのという輩が会場の空気を汚した。
下民、下民とざわめいて蔑むその目は私は大嫌いだ。
貴族というだけでふんぞり返って何もしない奴らよりよっぽど偉いと思うが―――と民を睨みつけているとウィリアムさんが苦笑して「顔に出てるよ」と耳打ちした。
そんな中、ユノが風の精霊をもってアスタに攻撃を仕掛け、それをアスタが受け止めた。疾風が会場を駆け抜け、その圧倒的な力に群衆の蔑視がやんだ。
しんと静まり返ったなか、ユリウス様が口を開いた。
「・・・二人の力を見て、まだその功績を疑うものがいたなら出てきてほしい。
『伝説の聖女』の力に下民への考えを改めた者もいたかと思う――――
彼らも確かに下民だ。だが誰よりも努力し、この場所へたどり着いた。誇り高きクローバー国民よ!二人の新人魔法騎士に拍手を!
そして―――
身分の違いを乗り越え一丸となって、この国を勝利へ導こう―――!」
ユリウス様のおかげで、少しずつこの国は変わろうとしている・・・それは昔の私が受けていた差別に比べて、感じていることだった。
次々と3位以下の順位の発表が終わり、そして私の番になった。
「さて、『伝説の聖女』のリン。去年、彼女の単独星所得数は90という驚異的な数字をたたき出し、今年はなんと、前回を上回る92という数字を見せてくれた。
顧問であることから団自体の星所得数には響かないが、王国随一の回復魔法と防御魔法を誇る彼女もクローバー王国の要である。
さあ、来年はどこの団を―――――“加護”してくれるかな―――――?」
ユリウス様の言葉に、たぶん私の毎年の異動を聞かされてなかっただろうアスタは「ええええええ」と私の方を見る。
「ごめんね、アスタ君!またいつか!」
「相変わらずノリ軽――――!」
私は9枚の団のマークが描かれたカードを光の精霊に渡し、光の精霊が天空に上っていくのを見つめた。
こればかりは私の一存で決めることはできず、神の采配といったところだ。
私が“加護”する団は良くも悪くも、一年間激動の時代を迎えると言われ、今年『黒の暴牛』は大躍進を迎えたのでいい方向に転んだのであろう。
天空から一枚のカードが下りてくる。
それが来年、私が“加護”する新たな団――――城から昇る太陽――――正直言って、私はこの団が大好きで、大嫌いだ。
ぺらっとそのカードを裏返し、民衆に見せた。
「『金色の夜明け』でお願い申し上げます」
一位である『金色の夜明け』を加護するということはさらなる躍進か恐るべき転落か――――
どちらの意味ともとれるこのカードに民衆はどよめきと歓声が入り混じっていた。
そして、光魔法で『金色の夜明け』のマークを天空一面に彩らせる。花火のようにきらきらと輝き、光の残滓となって儚く散っていく中、ユリウス様が言葉をつづけた。
「なんと来年『伝説の聖女』が加護を与えるのは一位の『金色の夜明け』――――!!!これは面白くなりそうだね。
―――では、功績発表と聖女の加護が決まったところで、みんなお待ちかね・・・我らがクローバー王国国王の登場だ―――!」
魔法帝の熱狂的な空気とは異なり、いまいち盛り上がりを見せない国王の登場。それもそうだ、こいつは何も国に貢献することなく胡坐をかいてみているだけなのだから。
白い目で王様の演説を聞いていると、その中に白夜の魔眼と対抗するための団の枠を超えた特設部隊―――
「ロイヤルナイツ―――か」
ウィリアムさんを見ると、何か物思いにふけていたが目が合うとにこりと笑いかけた。
「嬉しいよ、来年君と一緒にいられるなんて」
「なんだかんだ、ウィリアムさんの団に入るのは初めてですからね。ちょっと緊張します」
「君のことは何があっても守るよ―――特に王貴族からは、ね」
『灰色の幻鹿』に入った時から恵外界出身の聖女として、ひどいいじめを王貴族から受けていたことももちろんウィリアムさんは知っていた。
そして、私は私で、ウィリアムさんの呪いを受けた容姿から王貴族、ひいては自分の家族からでさえひどい仕打ちをうけており、お互いにその痛みを共有していた。
少し顔を歪ませた私にぽんぽんと頭を撫でるウィリアムさん。
「引っ越しは今月中に完了しておくように」そう言って、終演後、他の団長とともにウィリアムさんは去っていった。