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「さて、そんなこんなで祭りがあります」
皆が集まったところで、ヤミさんとフィンラルがこれから始まる“星果祭”の説明を始めた。
私とバネッサは酒を注ぎ合っていてまるでその話は上の空だった。
「みんな知っての通り、魔法騎士団は功績に応じて魔法帝から星を貰えます。
この星の数を各団で競い合ってるワケですが・・・4月から翌年3月末の一年間に所得した数を発表して
その年の一位の団を決める催しがあります。」
「めんどくせえよな~~
ちなみにあそこにいる『伝説の聖女』様が星カウントに入ってりゃ最下位じゃねえんだけどな」
そう言ってヤミさんが酒を飲んでる私を指さす。あくびをしながらぼんやりと酒を飲んでいた私は、急に団員たちの視線を貰って何事かと思い首を傾げた。
「私は、黒の暴牛の顧問みたいな枠だから・・・。それに、攻撃魔法使えないし」
「ちなみにこいつ単独の星所得数は90。単独でだぞ、戦功叙勲式で表彰される奴なんて学芸会レベルのチートです」
ヤミさんの言葉に、知らなかった団員たちは(アスタ君たち新人以外でさえ)目を丸くして「「「90!?!?」」」と声を荒げた。
星果祭の発表にいかにこの子たちが聞いていなかったがわかる・・・毎年これでも登壇してたんだよ・・・。
「よよよっよ4日に1度は星貰ってたってことっすか!!!!!???おれ達のあの頑張りでやっと1個もらえてた星が・・・」
「まあ去年は働きましたね~~あはは」
きらきらとアスタ君が私を尊敬のまなざしで見てくれているが、任務に同行してるのはほとんど団長クラスだし星の数が多くなって当たり前だった。
「私のことはいいから、続けてフィンラル」とその視線を譲る。
「この催しは王国民みんなの前で行われる一年で一番大きい祭りとしてクローバー王国民に親しまれているわけです」
「それが『星果祭』!」ヤミさんが珍しくやる気を出して、半被姿で登場した。どうやら屋台まで開くらしく、そのために海からイカを大量に釣って来たそうだ。
あらかた説明を終え、王貴界について現地解散となった私達。
さっそく団員たちは野に放たれた獣のごとく散り散りになって消えていった。
ヤミさんの「順位発表は20時だぞ」なんて言葉は誰も聞く耳をもたず背中はどんどん小さくなる。
まあ団長本人ですら毎年出席してないしな・・・と思いながら、私もぶらぶらと散歩して屋台を見ることにした。
「こんなところにいたか、リン」
聞きなれたその声に振り返ると、いつもの鎧姿ではなく女性らしい格好をしたシャーロット・ローズレイが佇んでいた。
わらわらと周りを取り囲んでいる男たちは、本来の彼女の姿を知らずいつ声をかけようか様子を伺っている無知な愚か者たちだろう。
「あれ、シャーロット・・・何、いつもと違ってめかしこんじゃって。デート?」
「な、何を言うか・・・!ソルに言われてきてみればこのような格好を・・・」
「ああ、そういうこと・・・」と状況を理解した私。そして自分の腕をぐいっと引っ張られる感覚があり、その先を見ると『碧の野薔薇』の褐色の元気っ娘 ソルが爛々とした様子で私に言った。
「リン様!!ちょうどよかった!!!リン様も団長と一緒にこの服着てみませんか?!」
「え、いや私はいいわ。シャーロットをからかいに来ただけで・・・」
「いいからいいから~」と言って半ば強制的にソルに連れられて簡易的にプレハブ小屋を建てた更衣室でドレスとメイクをさせられた。
シャーロットとは対局の深紅のドレス。なぜこうもまあ、太ももと背中は毎回むき出しなんだろうと思うくらいスリットがしっかり入っていた。
「いやーやっぱ白肌には生えますねえ。リンさん、姐さんと似た見た目だけど姐さんより筋肉なくて細いからなんでも着せたくなります」
「たぶんそれ言ったらぶっ飛ばされるわよソル。」
冗談を言い合いながら、更衣室からソルと出ていくと、シャーロットはなぜか茨魔法で貴族の男をしばき倒していた。
私とソルはその光景が理解できなくて固まった。
「私を誰だと思っている」
「何してんですか!?姐さん!?」
「「ついて参れ?」私を貴様の飾りにでもするつもりだったのか?私の合意もなくどういう了見だ?
何がバミルトン家だ、私はローズレイ家だぞ?私が女だから軽々しく接してきたのか?貴様に私より勝るものが何か一つでもあるか?
どうした?貴様の魔法で私の荊をどうにかしてみろ」
ぎりぎりと荊がバミルトン家の貴族の小太り男をスライスハムにしようとしていた。
シャーロットの美しさに寄って来た
ああなってしまってはもう止めることはできないだろう・・・。ソルは止めるどころか「さすが姐さん!しびれる~~!」とか言って盛り上がってるし・・・。
「いや止めなさいよ!」と真っ当なことを言った少年がこちらに向かってきた。
「あ、アスタ」
「えええ!?リンさんも何してんすか~~~!ってそのドレスめっちゃ似合ってます!」
「あ、ありがとう・・・」
アスタと喋っていると、ソルとシャーロットはお着換えなのか更衣室に消えていった。とりあえずあの場は収まったらしい。
そして出てきたかと思うと、本当に私と対をなした青色のドレスを身に纏って出てきた。
なぜか私の隣に来て盛り上がりを見せていると、ヤミさんがとてもいいタイミングでその盛り上がりを聞きつけてやってきた。
にやにやと私はシャーロットの様子を見る。明らかに動揺しているその姿にケラケラと笑っていると鳩尾を殴られた。
女とは思えない低いうめき声が私の口から出てきた。ウィリアムさんがこの場にいなくてよかったと心から思った。
「シャーロット・・・今ばっちり入ったんだけど・・・」
「謀っただろリン―――――!!この状況なんとかしろ!!!」
ひそひそと私の肩を掴んでぐわんぐわんと揺らしてよけいに内容物(主にヤミさんが屋台で作ってたイカ焼き)が全部出てきてしまいそうだ。
そんなことを知ってか知らずかヤミさんが私たちの姿に笑って「どうした二人とも、そんなキラッキラな格好して」と指さして笑っていた。
「貴様こそなんだその妙な衣装は・・・」
ヤミさんをみると確かに祭りの半被に一張羅・・・。不審者とも言えなくもない・・・。
そのやりとりを見ていると、バネッサが酒で顔を真っ赤にさせて「いたいた~!団長!何やってるんですか~~!一緒に飲みましょうよ~!」と群衆を割って入って来た。
シャーロットとバネッサ・・・今まで接点のなかった二人が出くわしてしまった時、私は嫌な予感を感じた。
そして、当人同士も共にヤミさんを奪い合うライバル同士と勘づいたのか、バネッサが酒飲み対決で勝負を持ち掛けてきた。
断ろうとするシャーロットにソルが「姐さんが負けるはずないだろ!!さあ勝負っす姐さん!!」とけしかける。
なんとも不憫なシャーロットだが勝負の行く末が気になるため、二人を遠くから見守っていると、ヤミさんがやってきて会場を指さした。
「おい、てめえ代わりに行ってこい。」
「うわ、めんどくさいからって私に行かせるんですね。」
「なんだよ文句あんのか?」
そう言われると何にも言い返せないから私は渋々と受け入れるしかないのだが・・・いつかパワハラで訴えられないかなこの人・・・
「わかりました・・・でもシャーロットは頼みましたからね。私の友達なんで」
「へいへい」
適当な返しを聞いて私は踵を返した。とりあえずこのはだけた深紅のドレスは恥ずかしいので、黒の暴牛のローブを羽織って会場へと向かった。