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夢小説設定
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「はいバカヤロー共注目~
オマエらが戯れてる間に、そこのクソ秘書と情報つかんできましたー
海底神殿はこの海の下にあるのは間違いねーみてえだが・・・
マナによっておこる海流が強すぎて、普段は上等な魔導士でも近づけねえみてえだ。
だが満月の夜のみマナが弱まっていけるかもしんねーんだと。」
リンさんはともかく、あのヤミ団長が・・・めっちゃ真面目に仕事してるー!!と団員たちの心の中が一致した瞬間だった。
「だけど海底神殿は名前の通り海の底にあるの。
普通じゃたどり着けなくて強力な水魔法が必要になる・・・ということで
ノエルちゃん、あなたの水魔法で私たちを連れていって」
「でもあんなの・・・魔力をよっぽどコントロールできないと・・・無理よそんなの・・・失敗したら・・・」
「そうだな、失敗すれば全員激流にのまれ溺れ死ぬだろう。この任務は『黒の暴牛』だけに課せられた極秘任務だ。かわりはいねー
おまえがやるんだ。次の満月まで1週間・・・それまでに限界を超えろ・・・!」
「大丈夫、ノエルちゃん!私も手伝うよ」
「リンさん・・・!」
ノエルちゃんの手を握ると、ちょっと震えていた。
責任の重い仕事を任せちゃったかなと自責の念に苛まれたが、ノエルちゃんの魔力コントロールを自分のものにするためでもあるし・・・と自分を肯定させた。
そしてその夜から、私はノエルちゃんとともに特訓を始めた。
「光創生魔法 女神のゆりかご―――ノエルちゃんはこの水魔法バージョンで自分たちを護れる球体を作ることを目標にしましょうか」
「はい――――よろしくお願いします!」
なんとか自分のイメージをノエルちゃんに教えながら、だんだんと完成には向かっているもののどうしても最後に魔力が暴走してしまう。
その原因はなんだろう―――と考えていると、ノエルちゃんはあきらめたような顔で私にぽつりとつぶやいた。
「私・・・やっぱり王族の落ちこぼれですね」
そう言って寂しそうに笑う。昼間の強気な態度とは真逆の、弱くてガラスのように繊細な・・・誰にも見せられない彼女の姿だった。
戦功叙勲式でもシルヴァ兄弟のノエルちゃんに対する家族とは思えない冷たい態度でも感じたが・・・魔力のコントロールが上手くいかない原因はそこにあるんじゃないか・・・とふと感じた。
肩をぽんっと叩き、「大丈夫、まだ時間はあるから、ノエルちゃんのペースで進んでいこう」と励ました。
遠くの砂浜で、アスタ君が特訓しているのが見えて、私たちはアスタ君に声をかけた。
「アスタ君、あなたも一緒に私たちと特訓しない?」
「え、いいんですか!?リンさん・・・!オレも実は中に入りたかったっす!!」
「そっかあ、声かけてくれれば全然よかったのに」とふふっと笑う。意外と気を使える子なんだなあと感心しながら、仲のいい二人を見つめた。
海岸を歩きながらマナの回復ついでに休憩していると、どこからともなく美しい歌声が聞こえてきた。
アスタ君とノエルちゃんもそれに気づいたようで、その声をたどっていくと、月夜に照らされた少女が岩の上に立って美声を響かせていた。
ほう・・・とその声にうっとりと聴いていると、それに気づいた彼女は「ッキャ~~~~!聞いていたの!!?恥ずかしい~~~!」と想像していたキャラよりもはるかに明るく個性的な少女だった。
「聞かれちゃってはしょーがない!これを機に仲良くなりましょ~!私はカホノ!あなた達は~?」
「ノエルとバカスタ、そしてリンさんよ」
「ノエルにバカスタ・・・!不思議な名前だね~」と信じてしまうカホノにくすりと笑った。
そして、私を見つめたカホノに、首を傾げていると凄まじいスピードでこちらにやってきて私の両手を握りしめた。
「え、えええええええええ『伝説の聖女』のリン様・・・・・・・!?」
「よ、よくご存じで・・・」
「この国で貴女を知らない人なんていないです・・・・!サインもらっていいですか・・・!?」
きらきらと目を輝かせるカホノに生憎何も持ち合わせていないんだけど・・・というと、じゃあ今度絶対ですよ!と残念そうにしていた。
「で、カホノは何してたの?」と聞くと「歌の特訓です!私この場所で歌うの好きで・・・!」と答える。
どうやら、平界と王貴界でブームとなっている歌って踊って魔法も使えるアイドルになるという夢を叶えるため、歌の特訓をしているらしい。
「おや、バカスタくん体弱ってるね」
「ん、そうか?訓練しすぎたか?」そう聞くアスタに、「リンさんの前で魔法を使うのはおこがましいけど・・・」とこちらをカホノがちらっと見てきたので、「気にしないでどうぞ」と微笑む。
すると、カホノは歌回復魔法 “治癒の子守唄”でアスタ君の疲労部分を的確に回復させた。
これは、ノエルちゃんの魔力コントロールを教えるのに最適かもしれない・・・と思いながら行く末を見守る。
同い年ということで友達になってわいわいと盛り上がる3人。カホノがノエルちゃんに「マナを無理に抑えようと力みすぎてるかも」とアドバイスをしていた。
「私、思うんだけど本当の集中で安らいだ心の中にあるんじゃないかな~
ノエルが安心できるいちばんやさしい記憶は何?」
「優しい記憶・・・?」
「うん、例えば家族のとか・・・?」と、事情を知らないカホノは悪気なくノエルちゃんに家族のことを聞いた。
思い出したノエルちゃんは気分を悪くしてしまったのかその日は宿に帰っていってしまった。
「カホノちゃん、また今度ね。今日は付き合ってくれてありがとう」
ばいばーいと手を振ってノエルちゃんの後を追う。大丈夫?とノエルちゃんに聞くと案の定彼女の顔は曇っており、私の声に反応すらできていなかった。
まあ私が解決できることでもないしなと思いながら、一緒にお風呂に入って背中を流してあげる。
ちゃぷんとお風呂に入ってぼうっとしていると、向かい合って体を小さくしていたノエルちゃんが「どうして、リンさんは私に構ってくれるんですか?」と聞いてきた。
こうやって根掘り葉掘り聞くことなくただ一緒にいてくれる人はいなかったのだろう。
「ん、もしかして鬱陶しかったー?」と聞くと、ノエルちゃんはぶんぶんと首を横に振った。
「なんだか、お姉様がこんな感じなら・・・よかったのになあと思って」
そういって風呂の中でぶくぶくと沈んでいくノエルちゃん。その照れている様子に可愛いと思ってくすくすと笑った。
「何言ってるの、私たちはもう家族じゃない。私のことはお姉さんでいいんだよ」
ヤミさんはお父さんとかかなーなんて言ってると、ノエルちゃんはびっくりしたような顔でこちらを見ていた。
「家族・・・」
「?うん。どうした、そんな顔して」
「リンさん・・・ありがとう、カホノ言ってた“優しい記憶”って・・・ここにある気がする」
今度はノエルちゃんの言葉にこちらが驚く番だった。彼女にとって『黒の暴牛』が自分の居場所だと思い始めているのなら、これ以上嬉しいことはない。
私は「そっか」と笑って、のぼせる前に出るぞーとノエルちゃんの背中をぱしぱしと叩いた。
そして出発日の前夜―――――『黒の暴牛』のみんなに見守られながら、ノエルちゃんはばっちりと新しい技を会得し海底神殿へ行く道が開けた。