08
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魔法騎士団本部の地下に案内された私たち。薄暗いその廊下とひたひたと鳴る水の音が気味の悪さを助長させる。
尋問部屋にはアスタくんをはじめ、魔法帝と側近のマルクスがいて、『白夜の魔眼』の下っ端二人が磔台で尋問されていた。
「その二人は白夜の魔眼の・・・何かわかったのですか?ユリウス様」
「ああ、マルクスくんとアスタくんのおかげでいろいろわかったよ。
君たち白夜の魔眼に協力した・・・裏切り者の団長の名はなんだい・・・?」
ユリウス様の問いに、うつろな目をして答える『白夜の魔眼』の団員。
私はウィリアムさんの名前を出されたらもうおしまいだ、事実を伏せていた自分も腹をくくるしかない―――と思いながら、出される答えに目をつむった。
「それは―――『紫苑の鯱』団長ゲルドル・ポイゾットだ」
「バカな―――!!何を言っている?この私が王国を裏切るようなことをするか―――!!!」
私は思っていた答えと違い驚いた瞳で一瞬ウィリアムさん・・・いや、ライアを見た。
彼はどこと吹く風という様子でその裏切り者を見つめる。なんと肝の据わった男だ。
裏切り者の名前を出されたポイゾットは、ほかの団長に軽蔑され、数々の黒い噂を暴露されていた。
私はその様子を哀れに思いながら、かばう義理もないのでその場を静観を決め込む。
まあ、善意のある聖女ならば「皆さん、こぞって疑うのはおやめください!」なんて可憐な声で制止しているのかもしれないが・・・。
「これは何かの罠だ!!私は汚名をすすぐ!これは戦略的撤退だ――――」
そういって自分自身に透過魔法をかけたポイゾット。余計に犯人っぽくなるからやめとけばよかったのに・・・と私は頭を抱えた。
アスタくんがヤミさんから教わった“氣”と反魔法の剣でポイゾットの居場所を見抜き、透過魔法を不活化させた。
「氣を読める反魔法の小僧・・・どうやらてめーの天敵だったみてーだな」そう言うヤミに「なめるな!私は団長だぞ――――」と激昂しマナの重圧で抑え込む。
「ポイゾットさーん」とリルの能天気な声が響いたかと思えば、絵画魔法であっと言う間にポイゾットを捕らえた。
「う~ん、ポイゾットさん絵になる男ですね~題名は『溺れる団長』・・・ですかねっ」
「リル、もうちょっと最後はかっこいい題名で終わらせてあげたらよかったのに」
「え~リンさん。じゃあリンさんがつけてくださいよ~」
私とリルが和やかに事を終わらせようとしていると、後ろからどすの利いた声でノゼル団長が「リル・・・貴様ぬるい真似を・・・」とつぶやいた。
「だって~僕かリンさんがやらないと、この建物消えちゃいますもん」
振り返ると、ノゼル団長をはじめ、シャーロットやヤミさんまで最大火力でポイゾットを捕らえようとしていた。殺す気か。
「皆・・・それぐらいにしておこう。何者かに魔法で操られている可能性もある」とウィリアムさん・・・じゃなかったライアがそれらしいことを言う。
「いやあ、わざわざみんながいるところで言ってよかった。私だと加減ができないからね」
ユリウス様まで時間魔法でポイゾットをめちゃくちゃにしようとしていることがわかり容赦ない彼らにぞっとした。
「・・・さて、ではいろいろと聞かせてもらおうかなゲルドル・・・!」
そう言ってにこっと笑うユリウス様に拒否権はない。
国宝級の魔道具の横領・横流し、他国からの危険魔法薬の密輸、果てや自団員への暴行・・・マルクスによって次々と出される黒い過去。魔法ドラッグ事件のシスターと契約した魔法騎士はこいつだと判明した。団長たちだけでなく私もさすがに顔がひきつった。
そして何より裏切り者として決定打になったのが、障壁魔導士の誘拐・・・こいつのせいで色々と私の仕事が増えていたのかと怒りを覚えた。
「これは前代未聞の失態だ・・・本来国民を護るべき騎士団が国民を売るような真似を・・・
国民を不安に陥れぬためにもこの件は公表を避けるが、二度とこんなことが起こらぬよう全団員に改めて反勢力とつながりがないか確認してくれ!
話は以上だ。すぐ戻って調査してくれ」
そう言って団長会議は解散となり、皆散り散りに去っていった。
私は振り返ってウィリアムさん(ライア)を見ると、彼は不敵な笑みでこちらをちらりと見る。
この間、お互いに話しかけることはなかった。マントを翻し『金色の夜明け』に去っていく背中を、私は小さくなるまで見つめた。
そして、ヤミさんとアスタ君がまだ魔法騎士団本部に残っていることに気付いた私は、彼らが戻ってくるまでその場で立ち往生することになった。
しばらくして、二人が戻ってくる。ヤミさんは気だるそうに私に言った。
「おい、リンてめーユリウスの旦那が呼んでるってのに先帰るなや」
「あれ、ヤミさん。アスタ君。ごめんね先行っちゃって。なんだったの?」
「『黒の暴牛』で任務だってよ。魔石を取りに、強魔地帯の海底神殿へ行く」
おそらく、反魔法が必要だと判断したユリウス様が下した決断だろうと思い、「了解」と答えた。久しぶりの海にわくわくする。帰って女子団員で水着を揃えなきゃな~と半分遠足気分で行くことにした。