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白夜の魔眼のアジトに連れてこられ、いったいどんな拷問を受けるんだろうと思っていると、三魔眼が私の目の前でひれ伏した。
「「「先ほどのご無礼をお許しください――――『伝説の聖女』様」」」
その変わり身の早さに驚いたが、おそらくリヒトのいっていた昔のエルフの聖女の記憶で彼らは動いているのだろう。
「『伝説の聖女』様、あなたはリヒト様と同じ光魔法の使い手―――――どうか、リヒト様に魔力を分け与えていただきたいのです。」
「魔力を与えれば封印魔法も早く効果が発揮されます。どうか、リヒト様を助けてください」
なんだこいつらは・・・都合よすぎじゃないのかと呆れた。
「私の大切な人たちをズタボロにしておいてよくぬけぬけとお願いできるわね・・・私が『伝説の聖女』様だから?
慈悲と博愛と平等の精神でそこのリヒトを救ってやれるとでも思った―――――――?」
そう悪態をつきながら、満身創痍のリヒトを見ると胸がきゅっとなって涙が浮き上がる私が情けなくてたまらない。
つっ――――と涙が頬を流れた。この意思は私のではない・・・私の中で眠っている500年前の私の自我が泣いている。
『憎悪』のファナが私の頬を拭った。
「あなたは・・・・大切な人・・・リヒトにとっても・・・みんなにとっても・・・」
「今はまだ思い出してないかもしれねーけど、あんたはウチらに言った。
“敵を許すのです。慈悲と博愛の精神を持って、わかりあい、共存のために手を取り合うのです。種族や身分の垣根を超えて”
だが、人間による裏切りによってあんたの教えを信じたウチらはとんでもない目に遭った。」
「じゃああなた達は私を憎んでいいはず、なぜ私を仲間だと思うのですか?」
「あなたは悪くない・・・悪いのは彼女の精神を踏みにじった人間・・・恩を仇で返す悪魔の所業・・・
だから・・・私たちはあなたを信じた・・・」
ファナの言葉に私は目を伏せる。
あまり思い出せないものの、懐かしく温かいエルフの仲間たちが今の『黒の暴牛』の団員たちと重なる。
どちらも私にとっては大切な居場所だった。
不本意だけれど、腐っても『伝説の聖女』であるからには彼らに慈悲を与える必要があるのかもしれない、それがたとえ裏切りと言われようと。
「交換条件よ―――――
リヒトにマナを分け与える代わりに、私をクローバー王国に返しなさい。終わったらすぐに」
「めんどくせえな~聖女様。リヒト君の裏の彼が好きならここにいればいいのに」
「あなた達のことで、これから緊急的に団長会議が始まるわ。さっさと団長に化けて出席しないとコロすわよ。そこの物まね男」
「おっかね~~~ほいじゃ、リヒト君のマナ分けたら一緒にいくよ~」
ライアがふあああとあくびをしている間に、残り少ないがリヒトに光のマナを分け与えた。
彼の周りに放たれていた膨大な魔力量は収まっていき、あっという間に封印魔法で制御できるところまで回復した。
その様子を見て「さすがだね」とつぶやく。ライアの姿がウィリアムさんに変化したとき、私はその顔がまともに見ることができなかった。
「―――行こうか、リン」
からかい半分で性格まで模倣してきたライアを思わず蹴り飛ばし、私はクローバー王国に無事帰還することができた。