07
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ヤミさんがリヒトの攻撃魔法を受けながら、デモンストレーションでアスタ君に日の国の氣の流れというものを教える。
人の目線、呼吸音、匂い、筋肉の動き、なんとなくの気配などなど・・・そういった人から発せられる生体エネルギーを総合して『氣』と呼んでるらしい。
その氣を読んで次の動きを予測して動く――――そうは言うが容易いものではないだろうと思いながら、アスタ君のぶっつけ本番スパルタ実践を私は眺めていた。
「おい、リン、てめえぼーっと見てないで防御魔法くらい張れ」
「はーい」
人使いが荒いんだから・・・と光創生魔法を発動し二人への攻撃を防御する。防御魔法は攻撃を受ければ受ける程、術者のマナを削いでいくため、もともとマナの量が少ないものには不向きの魔法だ。
幸い私は『伝説の聖女』とやらの能力で団長クラス以上のマナは持っているのだが、この人たちは私のことを絶対要塞だと思っているのか攻撃を受けているにも関わらず、私を盾にしてずっと氣の練習に励んでいた。
「ちょっと早く攻撃してくれないとマナの消費半端ないんですけど二人とも」
「おう、もうちょい待て、リン」
「リンさんすみませんっす!!!防御魔法あざああああす!」
「頼むから早く習得してくれアスタ君。わたしマナつきるぞ」
そしてヤミさんの雑な教え方にも関わらず、氣を習得したらしいアスタ君はリヒトの手下のヴァルトスという細身の男に氣の流れを呼んで反撃していた。
倒れるヴァルトスにリヒトは激昂する。
「よくも・・・ヴァルトスを!オマエのような人間が我が同胞を傷つけることは二度とあってはならない・・・!」
激昂するリヒトの言葉の節々に引っかかった。
この人は人間すべてを恨んでいたのではなかったか・・・?
あのヴァルトスという男は間違いなく人間だろう。だとしたら何のために人間を仲間にする・・・?
もしかして私の嫌な予感が当たらなければいいのだが、彼は人間を転生の生贄にするためにわざと仲間思いのリーダーを演じているのではないか。
ぐるぐると良からぬ考えをめぐらせていると、リヒトの光魔法は鞭のような攻撃魔法を展開しヤミさんとアスタ君に向けて放った。
「光創生魔法 裁きの光鞭――――――――――――」
リヒトの攻撃魔法を受けるとひとたまりもないだろうと思い即座に光創生魔法で防御壁を強化しヤミさんとアスタ君を守る。
彼は洞窟を破壊し自滅する気だろうか。その軌道の読めない攻撃はあらゆるものをなぎ倒し、破壊した。防御魔法で私たちは無傷であったが、かなりのマナが減っていたのがわかる。
「私の光魔法なめないでよね――――――リヒト」
光対光―――――最速の矛と最速の盾の戦い。
傷一つついてない私たちにリヒトは目を見張った。そしてふふふ、と私にリヒトは微笑む。
「リン――――君はなぜ“そちら側”にいるんだい?意地を張ってないで“こちら側”に戻ってくるといい―――歓迎するよ。」
「気分が向いたらね」なんて、冗談を言ってみるとヤミさんが睨みつけていたので「嘘です」と笑ったら今度はげんこつが飛んできた。
「うう・・・私にあたる元気があるなら、早く彼倒してくださいよお・・・」
「はあ――――せっかちな聖女様だ。お前は強化魔法と防御魔法を張れ。
さてと、久しぶりだぜ。全力を出すのは」
ヤミさんは全身から闇魔法を放出させる。そして増幅したマナを使って闇纏い・無明切りをリヒトさんに仕掛けた。
「てめーの本当の目的は何だ?その魔導書を持ってるってことはクローバー王国民だよな?何で祖国を狙う?」
「・・・君も・・・異人なればこそわかることもあるんじゃないか・・・この国の歪みが。
飢えて死にかけている者がいるかと思えば、食べきれぬ食料を捨てる者・・・魔力の多寡で優劣をつけたかと思えば・・・
高き魔力を持ちながらも、生まれを理由に差別される者・・・生まれた国が違うことで正義の名のもとに傷つけられる者・・・
それを歪みとし、慈悲と博愛と平等の精神を重きとおく『伝説の聖女』を称え、彼女の教えからその歪みを正すために我々は生まれたんだ。」
全く記憶はないのだが、リヒトの記憶によると500年前の『伝説の聖女』の私は相当慈悲と博愛の精神を布教するのに尽力していたらしい。それに比べれば、飲んだくれてばかりいる私はいつか神様に見放されるんじゃないかと心配になった。
「・・・要点が見えてこねーな・・・
いくら『伝説の聖女』を称えたとしても、オマエらがやろーとしてることは“人間”の排除・・・その歪んでるやつと同じなんじゃねーの?
・・・オマエ正気か?」
「いたって正気だよ・・・君たちの罪には罪で答えよう」
「あくまでテメーの我を通すってか。そういうやつは好きだぜ・・・しかしテメーは嫌いだがなァァァァ」
ヤミさんの闇魔法とリヒトの光魔法の攻防が激化し、それを見計らって手下のヴァルトスが手助けしようとするのを私はアスタ君に対抗するよう言った。
これ以上攻撃を激化されると、自分の防御魔法もいつまで持つかわからない・・・。
そう焦っていると、ヤミさんがリヒトに一撃を決め込んで、アスタ君がヴァルトスを倒した。
これでやっと終わりかと思えば、リヒトがどこから溜め込んでいたかわからない魔力を胸に増大させ“最大の魔法”とやらの準備を始める。
ヤミさんが「あれはやべーな」とつぶやき、私に「お前防御魔法最大出力で出せよ」と脅す。
あなたたちが調子に乗って氣とやらの練習をしている間にずっと防御魔法で守ってた私はもうマナが尽き果てそうなんですけど。なんて言える状況ではなかった。
たぶん、彼の攻撃をまともに受ければ私の防御魔法は打ち砕かれる。何か他の策はないかと考えるがいい答えが浮かばない。
「光魔法 神罰の光芒」
「光魔法 女神のゆりかご」
リヒトの攻撃に目がくらみ、おそらく絶対要塞だった防御魔法も破壊され私たちは終わりだと思った。
「鏡魔法 フル・リフレクション」
フィンラルの空間魔法から増援で現れたゴーシュの鏡魔法に救われ、私は力が抜けて膝が地に着いた。
鏡魔法でカウンターをまともにくらったリヒトはその場に倒れ込む。
「あっぶな~~ゴーシュ、ありがとう~」
「ゴーシュよく戻って来たな!そして美味しいとこもってきやがってテメー!」そう言ってヤミさんはわしゃわしゃとゴーシュを撫でる。
リヒトが倒されたことで、私たち『黒の暴牛』は緊張が解けた。団員たちのやりとりを遠目で見ながら笑顔がこぼれる。
3人の新手が空間魔法で迫ってきていたことも知らずに――――――