07
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急いで支度を整えて、エントランスホールに行くと二日酔いなのかげっそりしているフィンラルと、ご機嫌ななめのヤミさんが待っていた。
ヤミさんの話を聞くところによると、
平界のネアンという街にいたノエルちゃんが、夜中子供が沢山さらわれてアスタ君とゴーシュたちがその原因を突き止めに行ったと連絡してきたとのこと。
もしかすると“白夜の魔眼”の一味とのかかわりがあるかもしれない―――と思いながら最悪の事態に備えて、
各団長に光の精霊を放ち、ノエルちゃんの通報でもしもの時の救援を呼びかけた。
「行くぞ、この酔っ払いども――――」
転送された瞬間そこが戦場ということもありうるだろう。すでに刀をもって臨戦態勢のヤミさんがフィンラルが空間魔法に入っていく。
そこで“私じゃない”光魔法とヤミさんの刀が交わった。
「ヤミ団長・・・それにリンさん・・・なんでここに・・・!?」
ここはネアンのどこなんだろうと思いながら洞窟の中を見渡していると、空間魔法で飛び出してきた私たちに驚いたアスタ君。先に戦闘を繰り広げていたのだろうか、体がぼろぼろだ。
彼に、ノエルちゃんが騎士団本部に連絡してきたこと、一番この町に近かったのが『黒の暴牛』だったこと。
そして、団員がみんな使い物にならなそうだったから私とフィンラルをたたき起こして団長自ら出てきたことを説明した。本当にいい迷惑だ。
誰だ私をたたき起こした敵さんはと思って見やると、視線の先にはウィリアムさんのもう一人の彼―――リヒトがいて、私は顔が強張った。
「やあ、リン――――久しぶりだね。同じ光魔法のマナを感じたからまさかとは思ったけどやはり君だったか」
『灰色の幻鹿』にいた頃、ウィリアムさんがもう一人の自分が体の中にいることを打ち明けてくれた。同じ光魔法の使い手ということもあり、その時からウィリアムさんを交えて私と彼はよく話すようになった。
500年前、人間によってエルフが滅ぼされ、それから人間に復讐するためウィリアムさんの体を借りてその準備をしていること、
ウィリアムさん自身も顔に受けた呪いから家族にさえ忌み嫌われ、酷い虐待を受け、人間の醜悪さを感じていたためリヒトの気持ちも理解していること。
私は二人の本音をよく聞いたし、理解したつもりだった。だが、実際彼と対面したとき、どちら側についていいかなんて考えてはなかった。
「なに?こいつ知り合い?」
ヤミさんが私に話しかけてきたが、答えるのが面倒なので無視して深手を負っている老婆のシスターの回復魔法を唱える。
「無視すんな死ね」と舌打ちしてきたがほどなくして二人は臨戦態勢に入っていたので、戦闘が始まる前にシスターと子供たちを空間魔法で送ってもらうようフィンラルに指示した。
「シスターの応急処置はとりあえずこれで。取り残された子供たちとシスターはよろしくねフィンラル」
「てめえ絶対戻って来いよおおおおお」そう言ってヤミは戻ってくる気のないフィンラルにくぎを刺した。この状況で戻ってくるなんて考えたくないだろうなとフィンラルを哀れに思った。
目にもとまらぬ速さでリヒトから繰り出される無数の光の剣に応戦するヤミさん。
「なるほど・・・これが異端の大魔法騎士の力か・・・!」そういうリヒトにヤミさんは「あれ・・・お前どこかで会ったことあるっけか・・?」とマナに違和感を感じていた。
その野生ともいえる直感力の高さに私は顔が強張り、唾が上手く飲み込めなかった。
「オレの知り合いに光魔法なんての使うやつあそこにいる聖女様ぐらいだったんだけどな・・・。テメーどちら様だ?何が楽しくてこんなことしてんの?」
「ひとつ・・・寓話を語ろう・・・」
昔とある村にとても魔力の強い人たちがいた。神の使いである『伝説の聖女』の加護を受け、彼らはとてもマナに愛されていた。
『伝説の聖女』様の加護のおかげで、彼らは天候を変えたり地脈も操ったりと神に等しい力を持っていた。
村の外の人間達は彼らを神としてあがめた。
でも次第に人間達は『伝説の聖女』を手に入れれば、自分たちもその力を手に入るのではないかと、彼らの力を恐れ妬み欲しくなり、
彼らをだまし皆殺しにして、『伝説の聖女』を攫い力を奪ったとさ――――――
その寓話を聞いて私とヤミさんは顔をしかめた。
私は残念ながら、前世の記憶はほとんど残されていないので、自分が500年前までエルフだったということも、人間に攫われたということもその事実を確認する術はなかった。
「何その話?それがアンタとなんの関係があんの?吟遊詩人にでもなんの?
つか『伝説の聖女』って、そこの飲んだくれクソ女だろ―――
攫うも何もこちら人間側の逸話では、元はエルフだったなんて聞いた覚えねーけどな。
まあいい、じゃあオレからも小話をひとつ――――」
あるところに一人の少年がいました。
そいつの親は漁師で小さい時から漁に出されていました。そして難破してわけわかんねー国に漂着しました。
人種や文化の違いからそこでえげつない目に遭わされました。けれど全員ボコして一団のボスとして君臨しました。おわり。
「なんともヤミさんらしい半生・・・」むちゃくちゃなその話を聞いてぞわっと全身の毛が逆立った。この人は無茶苦茶だが、漂着して何も通じない異国語を一から覚え、さらに魔法を使いこなしてこの魔法騎士団の団長に上り詰めたのだ。
その出鱈目な物語を聞いたリヒトは、さらに光魔法の速度を上げてヤミさんに攻撃する。
「異人の君には関係のない話だったね・・・舞台を降りてくれ。」
「フエゴレオンのヤローをやったの・・・テメーか?」
「・・・そうだよ。周到に準備した上に、罠に掛けさせてもらったがね」
「だろうな。こんなもんであの真面目大王はたおせねー」
リヒトの言葉に憤りを覚えたヤミさんが“闇魔法 闇纏 無明斬り”を発動し、リヒトの頬を切り裂いた。
「卑怯な手でも使わねーと勝てなかったんだろ・・・?今度は真っ向からかかってこいや。
魔法騎士団団長の力、見せてやらあ・・・!」
フエゴレオン団長がいかに周りから愛されていたかがわかる―――ヤミさんの怒りがマナからびりびりと伝わってきて、冷や汗が流れた。