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ひとしきり『碧の野薔薇』主催のパーティーを楽しんだ後、少しお酒に酔った私はふらふらと王貴界を歩く。
なんで真夜中の月夜を見るとウィリアムさんに会いたくなるんだろうなあとぼうっと思った。
王都襲撃の騒動で『白夜の魔眼』が明るみに出て本格的に動くことになるだろう。そうなるともう彼に会うことはできない――――
「なんで、あんな人を好きになっちゃったんだろう・・・」
いっそヤミさんを好きになっていたら幸せに過ごしていたんだろうか。とふっと想像するだけで笑えた。
彼と初めて会った時のことを思い出す。
ユリウス様に新しい魔法を求めて変身ぶらりに付き合わされていた最中、彼に一目会った時から、その全てを慈しむような優しい瞳に吸い込まれてしまったのだ――――
「世界樹魔法~~~!?なんて雄大で荘厳な魔法なんだ・・・!何より、君のやさしさがすべてを守ろうとしているような素晴らしい魔法だ!君・・ぜひ魔法騎士団に入りなよ!」
「でもこの顔じゃ・・・」
「?気にすることもないけどねーリン君はどう思う?」
「え・・とても素敵な方だと存じますが・・・」
「そうだよねえ。リン君が男の子の前で顔赤らめるの初めて見たもんねー」
「ユリウス様!!!」
『伝説の聖女』である私よりも慈悲深く博愛の精神を宿したウィリアムさんは、
昔の自分のことやもう一人の彼のこと、クローバー王国の発展のためにやりたいこと、色々と私に話してくれた。
『灰色の幻鹿』団にいる頃は彼のサポート役をすることが当たり前のように二人で任務をこなすことが多くて、
これから先もずっと私たちはクローバー王国のために貢献し、そしていつかは二人で手をつないで引退する・・・なんて甘いことを考えていた。
あの忌まわしい新聞記事が最後、ウィリアムさんと私が一緒にいたという痕跡を残し、もう戻らない歯車にぽろぽろと涙が出てくる。
もしかしてウィリアムさんはもう自分が自分でなくなることを悟っていて、素敵なリストランテに連れて行ってくれたのかもしれない。
あの時に戻って「行かないで」と言ったら、彼はなんて答えたのだろう。
考えたって答えは出ないのに、酔っているからか悶々と考えながら、あの時と同じ月夜に照らされて『黒の暴牛』に帰ることにした。
――――――明け方
「オイ起きろ、酔っ払いクソ聖女」
あまり記憶がないが『黒の暴牛』に帰ってちゃんと自分の部屋で寝ていた私は、ヤミさんにたたき起こされた。
「ん・・・ヤミさん朝からひどいです・・・」
「ひどいも何もあるか昨晩おれの部屋に来てびーびー泣きわめきやがって。
あやしててめえの部屋に放り込むの死ぬほど大変だったんだぞ死ね」
「え、私何か言ってましたっけ」
「金ピカヘンテコ仮面団長に会いたいだの『灰色の幻鹿』に戻りたいだのしょーもないことをぬかしやがって。しかもスッキリした顔でこっちみんなくそ腹立つ。」
ということは心配して見に来てくれた・・・ということだろうか。
ヤミさん、普段は寝起きがめちゃくちゃ悪いはずなのになんで私を逆に起こしに来てるのか疑問だったけど・・・。
「ありがとうございます・・・その件は大変失礼いたしました・・・」
「さっさと起きて顔洗ってきやがれ。任務だ」
“任務”―――――その言葉に寝ぼけていた頭がさえて背筋が伸びる。
ヤミさんが部屋を出たのを見計らって大急ぎで支度を始めた。