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星の授与と等級の昇格を公式に発表された後、食事が用意され交流会という彼らにとって(私もだが)地獄の空間が用意されていた。
一番ユリウス様は格差の是正に勤しんでおられるのにこういうところは鈍感なんだからと頭を抱える私。
案の定ひそひそと王貴族の彼らは下民を見て噂話を立てていた。下民の私も例外ではないし、最近出回った記事のせいで風当たりはさらに強くなった。
「先ほどの戦功叙勲式の件、さてはオマエ、わざと黙っていたなリン」
「シャーロット・・・私がそんなややこしいことをするわけがないでしょう―――あのあと魔法帝に会って一緒に彼らと来るよう言われたのよ」
「姐さん!!この人、『伝説の聖女』様!?やっぱり姐さんに似てるねーーー!」
「こら、団長と呼べ」
「はい、姐さん!」
にかっと笑う褐色の彼女はソルと言って、以前私をシャーロットと間違えて声をかけてきた子だ。
それにしても、とシャーロットは私に話を続ける。
「例の新聞記事の見出し、拝見したぞ――――――私に一言くらいあったっていいではないか!!!なんだあの記事は!!!」
「いや、あのシャーロット―――――もうその記事の話お腹いっぱいだからやめてもらっ「籍を入れるのはいつだ!!!なんでこう、おまえはいつもそうなんだ、私のことばかりからかって自分のことは何も教えてくれないじゃないか!!」
―――ねえ、話を聞いてくれると嬉しいなあシャーロット」
ユリウス様も彼女も私の聞く耳を持ってくれなくてだんだん泣けてきた。
ウィリアムさんと付き合っている事実もないし増してや籍を入れるなど――――顔がだんだん赤くなる自分の正直さが憎い。
「それよりも、今度リンさんも『碧の野薔薇』のパーティーに来てよ!!最近任務でお世話になってるし!ね、姐さん!」
「団長と呼べ―――そうだな、リン。聞きたいことが山ほどあるからな」
「ふふ、喜んで参加するわ。シャーロットの言葉が不安だけど」
シャーロットとソルと私で話が盛り上がってる一方、アスタ君がノエルちゃんを馬鹿にしたシルヴァ家の兄弟に啖呵を切っていたことに気付いたのはしばらくしてからだった――――
「いいか、オレは必ず“実績”を積んで・・・魔法帝になってオマエら全員黙らせてやる!!!」
そう言って、シルヴァ家の兄弟と『金色の夜明け』の団員を怒らせたアスタ君に魔法による制裁が降りかかる。
「なんなのだ、騒がしい―――お前の部下の躾がなってないぞ、リン」
『紅蓮の獅子王』団のフエゴレオン団長が私を窘める。
「フエゴレオン団長―――申し訳ございません。今すぐ黙らせます」
そう言って彼を止めようとするが、
それよりも先に『銀翼の大鷲』団のノゼル団長が出てきて「王族に逆らいし下民・・・どう裁いてやろうか・・・」と余計ややこしい方向にもっていこうとしていた。
唯一彼のストッパーとなるフエゴレオン団長がノゼル団長を制止する。
彼らは昔からの好敵手であり、ある意味仲が良かったので助かった。
そう思っていると、扉から魔法帝直属の回復魔導士がやってきて王都襲撃の伝令が通達された。
『金色の夜明け』の団員が岩石創生魔法で王貴界の立体模型を作り上げる。魔力量や現地の人間の声まで再現する模型に私も思わず感嘆した。
この王貴界には護衛の魔導士によって魔法障壁が張られ、侵入は不可能なはずなのだが、五か所同時に襲撃が行われたということは前例のない事態だった。
アスタ君とフエゴレオン団長の弟は状況把握の前に現地へ走っていったがあとで拾うとして――――私はフエゴレオン団長を見やると彼は頷いた。
団長会議でもそうだが、自由奔放な者が多い魔法騎士団を統率できるのは彼ぐらいしか思いつかなかった。
「聞け!!!魔法騎士団員!!私に指揮されるのは癪だろうが・・・
私はレオと暴牛の小僧を追い、合流した後に北区に向かう!!暴牛の娘も共に来い!
銀翼の大鷲は敵の魔力量が最も大きい中央区を頼む!
碧の野薔薇は東区を!金色の夜明けは二手に分かれ北西区と西区に向かってくれ!!
そして『伝説の聖女』は魔法障壁の再構築と、魔法帝直属回復魔導士の統率を――――!」
なんか・・・めちゃくちゃ私だけ仕事量多くないかと思うがとりあえず今は肯定するしかない。
「王都を守れないとなれば魔法騎士団の恥だ!!!絶対に敵を逃すな――――――!!!」
フエゴレオン団長の言葉とともに皆散り散りに消えていく。
魔法帝直属の回復魔導士を私が使っていいのか疑問なのでとりあえず光の精霊を召喚し、一時的な統率権限の委譲を言付けで添えてユリウス様のマナを追うよう命令した。
光魔法はすべての魔法の中で最速を誇り、その伝達も瞬時に行われるため戦局の情報戦ではこの手法が用いられていたが今になって使う時が来るとは・・・。
許可が下りる前にとりあえず魔法障壁の代わりとなる光創生魔法で防御壁を張り巡らす。まあ既に入ってきてしまった敵は追い出すことはできないのだが―――
しばらくして、どこかにいるであろうユリウス様が光の精霊に「許可した」と伝言を残し返してきた。
私は回復魔導士時代の昔のやり方で、光の弓矢を放ち回復魔導士を呼び出す。その時の部下であった者たちはすぐさま私の元に集まった。
「おかえりなさいませ――――リン様」
「あなたの帰りを心待ちにしておりました。また戦えることを光栄に思います。」
数として十数名といったところか。久しぶりに団を統率する力を思い出し、声を張った。
「緊急的ではあるが、只今をもってすべての指揮は魔法帝に代わり私に委譲された。
これより、各回復魔導士は5か所に分かれ、応戦する魔法騎士団および市民の回復にあたりなさい。
団長クラスの緊急的処置が必要な場合、早急に光の精霊を放ち私に知らせること。いいですね」
「「「はっ」」」
光の精霊の本体は普段私の周りを漂うが、それは光の残滓として無限に分身ができる。回復魔導士それぞれにその残滓を預け、各地に離散させた。
とりあえず現場での回復は彼らに任せるとして、光魔法とはいえ防御壁の構築には時間がかかった。ハージ村全体を防御壁で守って救った10年前と規模が違うなと冷や汗をかく。
「光創生魔法 女神のゆりかご」
膨大な魔力量の消費と敵の攻撃によるマナのぶれに少し顔が歪んだ。フエゴレオン団長め、あとでデザートでもおごってもらわないと割に合わないな―――
防御魔法を維持しながら、怪我している市民の回復に仕事を切り替えて奔走していると、遠くで光の精霊が放たれた。
方向から言って北区――――――嫌な予感が過る。私はすぐさま光の精霊を竜に変身させて、北区に向かった。