04
夢小説設定
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「リン様をお連れしました!」
「どうぞ」
ウィリアムさんの承諾に扉を開ける団員。高鳴る胸を押さえて中に入ると、ウィリアムさんの顔が強張った。
彼とは長い付き合いだけれどこういう格好をするのは初めてで―――やはり変かと思い顔を下げる。
「えっと・・・変・・・でしょうか」
「いや―――とても、綺麗だよ。リン。」
コツコツとウィリアムさんの靴音がこちらに近づいてくる。
恥ずかしくて下に伏せた顔が上げられず、目まで伏せてしまった。高鳴る胸は鳴りやまなくて、どうにかなりそうだ。
「私にもっと見せてごらん」
ウィリアムさんのすらっとした指が私の顎を掬い、瞳と瞳が絡み合う。
任務では見ることがない、久しぶりに仮面を外した彼のアメジストの瞳が私を見据えていた。
ああ、あの時初めて彼に会った時から、この優しい瞳が好きだったんだと改めて思う。
「相変わらず綺麗な瞳―――ですね」
「そうかな?でも君には負けるよ。ずっと見ていたいくらいだ―――」
彼の顔が近づいてきて、反射的に瞳を閉じると、自分の鼻先でリップ音が聞こえた。
くすくすと笑う彼に、からかわれたと思った私は「もう―――」と胸を叩く。
自分が聖女なんかでなければ、彼に今「好き」だと思いを告げていたのだろうか。
彼だけに愛されたいし、彼だけを愛して守ってあげたいと思うのは罪なことなのだろうか。
誰が私を罰し誰が私を『伝説の聖女』で無くしてくれるのだろうか。
彼を見ていると、切なくて泣きたくて胸が痛くてどうしようもなく愛しい。
多分ウィリアムさんを見る私の顔は泣きそうなひどい顔をしているんだろうな―――と思いながら、眉を下げて笑った。
「馬車の用意ができました」扉の外で団員の声が聞こえて、私はウィリアムさんから離れる。
どういうことでしょう、と聞く前に仮面を被った彼は私の腰に手をまわして「どうぞこちらへ」とエスコートしてくれた。
『金色の夜明け』の前で白馬の馬車が用意され、その珍しい馬車に少し人だかりができる中、ヴァンジャンス団長に手を引かれて馬車に乗った。
まるでどこかで読んだ王子様と結ばれる童話のようだ。
いや、あれはかぼちゃの馬車だったっけ。
そして最後は“二人は幸せに暮らしましたとさ”で締めくくられるはず。
どうか、私たちも最後はそうであってほしいと心の中でただ祈るしかできない。
ウィリアムさんを見やると首を傾げて「どうした?」と聞いてきたので私は「なんでもないです」と首を横に振った。