04
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約束の場所につくと、そこにはウィリアムさんは不在で、なぜかフィンラルの弟のランギルス副団長がその場にいた。
彼は私を下民の聖女として快く思っていないうちの一人だ。思わず身構えた。
「あ、あれ・・・ごきげんよう、ランギルス副団長?」
「やあ、『伝説の聖女』様。残念ながらヴァンジャンス団長は来ませんよ」
「どういうことでしょう・・・?」
そういうなり、私の視界は真っ赤に染まった。ぽたぽたと髪の毛が滴るのがわかる。
このために用意していたのだろう、真っ赤なワインボトルを―――頭からかけられたのだ。
「この下民出身の薄汚い女め。何が聖女だ、うちのヴァンジャンス団長に色目使いやがって――――
もう二度と近づかないようにしてやる―――」
この瞳は人間じゃないような―――何かに乗っ取られているような瞳。
ああ、そうか、彼もウィリアムさんと似ているのかもしれないと魔導書を開いた彼を見てぼうっと思った。
「残念ながら、私には聞かないわ―――光魔法 女神のゆりかご」
「させるかああああああ」
空間魔法で私を裂こうとしてくるランギルス副団長。だが傷一つつくわけがなく、私の的をそれた周囲の建物が半壊した。
私は攻撃魔法が使えない―――だから、彼が諦めるまで攻撃を受け続けなければならない。この程度なら何も感じないのだけれど建物に人がいないかが心配だった。
「ランギルス副団長―――攻撃をおやめください。このままではあなたのマナがつきます」
「うるさいうるさいうるさい・・・!この下民があああああ」
空間魔法が私に降りかかった時、目の前で世界樹がランギルス副団長を襲い、骨がきしむまで彼を縛り上げた。
この魔法を使うのはウィリアムさんだけだ・・・助けに来てくれたのだろうけど、私はこの赤く染まった姿を見られたくなくて、顔を背けた。
「うちの副団長が失礼したね・・・リン・・・すまない・・・」
「いえ・・・慣れてますから・・・」
下民出身の聖女など、このクローバー王国では蔑視と畏怖の対象でしかなかった。
ランギルス副団長のような貴族からの差別は、今でこそ少なくなったが昔はもっとひどいものだった。
「君はここで反省しなさい。いいね」
「・・・申し訳・・・ございません」
そう言いつつも、私を許さないという顔はおそらく反省の一つもしないのだろう。
勇気を振り絞って食事誘ったんだけどなあ・・・とぼんやり思っていると、視界が反転して浮遊した。
ウィリアムさんに横抱きにされて『金色の夜明け』本部に入ろうとしているらしい。
団員からの視線を痛く感じて、私は暴れたがなぜかかなり強い力で降りることは許されなかった。
「女性団員の部屋を貸すから、着替えてきなさい。服は用意させるから」
「えっと・・・ありがとうございます・・・おろしてください」
「断る、と言ったら?」
「ちょっと・・・恥ずかしいです」
散々『金色の夜明け』の団員たちにひそひそと噂をされて、「やっぱりあの二人って・・・」という言葉をやたらと聞こえた気がした。
穴があったら入りたい。ヴァンジャンス団長が団員にミモザ・ヴァーミリオンを呼ぶよう伝え、さほど時間がかからずやってきた。
「まあ・・・!『伝説の聖女』様ではありませんか・・・!どうされたんですの・・・ひどい格好ですわ・・・!」
天然失礼とは誰かがよくいったものだ・・・王族女性に相応しい穏やかで上品なたたずまいの彼女だが、下民とも分け隔てなく接する彼女は王族でも珍しかった。
「彼女にシャワー室と服を貸してあげてほしいのだが、頼めるかな」そう言うと、ミモザは「もちろんです!」と快く引き受けてくれた。
そこでやっと私はウィリアムさんの抱っこから解放され、ミモザの部屋に入る。『黒の暴牛』とはえらい部屋の作りが違うなと思いながら、装飾や家具をまじまじと見ていた。