02
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魔法騎士団団長が一堂に会するその壮観な光景に会場中が熱気に包まれる。
それもそのはず、クローバー王国で羨望の的である魔法騎士団のトップがそろっているのだから。
中でも次代魔法帝最有力候補のウィリアムさんの人気は突出していた。
「それに比べてうちの団長は・・・」と見つめると、鋭い目つきで「ああん?」と凄まれた。
「今回の試験は私が仕切らせてもらうよ」
そう言ってウィリアムさんは世界樹魔法で受験生に箒を持たせる。魔導士の基礎中の基礎である箒の飛行試験だ。
才能を見せるものもいれば、箒に操られているもの、それに――まったく飛べないものがいた。
「オイ、リン。あいつ同郷出身の男だって言ったな。どこが『面白い同郷の少年を見つけた』だ。てめえの目は節穴か」
「どんなにセンスがなくても少し浮くぐらいなら誰にでもできるはずだが――」
いつものように私を睨みつけるヤミさんと、それを聞いて疑問を浮かべるフエゴレオン団長。
ウィリアムさんも私をちらっとみてほほ笑む。喋る機会があれば「何か考えがあるんだね」と言ってたのだろうか。
瞬く間に試験は終えていき、ついに最終試験である戦闘試験が始まろうとしていた。
ウィリアムさんが一通り説明し「回復魔導士が待機しているから存分に闘ってくれ」と言って私を見た。
私はそのために呼ばれたのかと思い深い息を吐く。
同郷の銀髪の少年が前に出た。私を見るなり「聖女様!見ててください!」と手を振る。
とりあえず注目を集めたくなかったので「頑張ってね」と小さく手を振り返した。
その身体能力の高さと魔力を持っていない攻撃は団長たちの気を引くには十分だった。
そして、同郷の銀髪の少年―アスタが勝利し、次に黒髪の少年―ユノの出番となった。
ユノも私に向かって会釈し、ほどなくして戦闘が始まった。
相手は貴族の息子だったが一瞬の風魔法で撃退し、団長達はその様子を見て感嘆するものもいた。
いい加減仕事をしろとうちの団長に小言を言われそうなので魔法を唱える。
「光回復魔法 女神のゆりかご」
会場全体を光の格子でできたゆりかごが覆い、負傷者の治癒を施す。
光魔法は他の魔法属性に比べてスピードが速いため、即効性も高く、完治するまでさほど時間はかからなかった。
回復を終え、団長席に戻るとヤミさんが私の肩にぽんと手をのせた。
「さすがうちの聖女様は仕事ができるねえ」
「なぜおまえのような者に聖女の加護が受けられたのか疑問を覚える」
シャーロットは冷ややかな目でヤミさんを見る。心の中は顔真っ赤にして悶えてるんだろうなと思った。
「ヤミさん一番慈悲の心なさそうですから隣にいないと心配でして」
「おい言わせておけば調子乗んな、リン」
そのやりとりにシャーロットがふっと笑った。
個人的に任務をするときのシャーロットはこんなツンツンしておらず、専らヤミさんの話題で終わるのだが―――なぜ私たち騎士団の女はこうも不器用なんだろうと頭を抱えた。
その間にウィリアムさんが試験終了の言葉をかけており、私たちも耳を傾けた。
番号を呼ばれた受験生の入団を望む者は挙手を――私はあの二人がどの団に選ばれるか見守る。
164番―そう言われたユノが前に出ると、全団長が挙手をした。
その様子に「ほら言ったでしょう」と目で訴えると、「てめえじゃなくてもあれは誰でも欲しがる」とヤミさんは一蹴した。
「金色の夜明け団でお願いします」そう言ったユノにウィリアムさんは微笑んだ。
「まあこの状況で黒の暴牛選ぶなんててめえぐらいだなリン」
「あの時は金色の夜明けか、黒の暴牛の二択でしたよ。団長」
「なんだァ?他があれば他選んでたみたいな物言いじゃねえか」
「次来ますよ」
そう言って気をそらす私。
銀髪の少年の番だった。
私が団長であれば挙手をしているところだが―――やはりだれも手を挙げる者はいなかった。
私はヤミさんを見つめる。
その視線に気づいて長いため息を漏らしたヤミさんは、「その聖女様の采配とやらに免じてちったぁ試験してきてやる」と言って団長席を立った。
なんだかんだヤミさんもあの少年のことを気にかけていたのだ。
「たとえ高い戦闘能力持ってようが、それが得体の知れねえ力じゃ誰も手えださねーわ。
なんやかやで・・・結局魔法騎士に求められるのは―――――魔力だ」
そう言ってひりひりとするような魔力の重圧を出すヤミさん。試験というか脅しのようなものだと思うが。
「魔力のないお前なんざ誰も欲しがらねえー・・・お前さっき魔法帝目指してるとか言ってたな?つまり俺たちをこえるってことだよな?
今俺の目の前でもまだ――魔力のない分際で魔法帝になるとかほざけるか・・・?」
その魔力に当てられた彼の答えで将来が決まる。
唾が思うように飲み込めなくなった。
「――ここで魔法騎士団に入れなくても・・・何度こけても誰に何を言われようと、
オレはいつか魔法帝になってみせます・・・!」
その答えに、団長たちは呆然とする中、ヤミの笑い声だけが響いた。
どうやら、彼のお眼鏡にかかったらしい。私は安堵の息を吐いた。
「お前面白い!!『黒の暴牛』に来い。ちなみにお前に拒否権はない」
「黒の暴牛でクソボロになるほど散々な目にあわしてやるから覚悟しろや・・・!
そしていつか―――――魔法帝になってみせろ」
「はい!!」