混迷レセプション
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私は彼がデビューしてからずっと世界的有名タレントであるヴィルのマネージャーをしている。
昔はすっからかんだったスケジュールも、売れっ子になってしまった今や朝から夜まできっちり詰まっていて、さらに学校の寮長まで兼任しているのだから大変なことだ。
正直言って私はほどほどに売れている、厳しくないような人が良かったのだけれど、なんだかんだ彼に愛想を尽かされないで専属マネージャーをやってきたのだからうまくいっているのだろう。
今日も雑誌の取材が3件と撮影が2本。そしてその間に美容会社社長会食も入っておりその準備もしなければならない。
私は片手にスマホで取材先と電話をとりながらメイクと衣装道具を右腕に抱えてヴィルさんのいる魔法学校に足を運んだ。
門番に関係者証のパスを見せて、ポムフィオーレの寮へと走っていると、ヴィルさんが鬼の形相で仁王立ちして待っていた。はじめは背筋が凍るほど怖かったが今はもう見慣れたものだ。
「リン!5分遅刻よ。私を待たせるとはいい度胸してるじゃない」
「大変申し訳ございませんでしたぁ!」
取引先にはあと5分で向かいますと告げて、この崖っぷちの上に立つ魔法学校にため息を漏らした。
弱い魔力を持つ私に唯一できる空間転移の魔法を唱える。本当はこの学校で魔法は使ってはいけないのだろうが背に腹は代えられない。
「飛びます、ヴィルさん!」
「あんた校内で魔法使っちゃいけないって何度言ったら・・・」
予想していた通りヴィルさんに小言をいただいている間にぐにゃりぐにゃりと視界は反転していく。崖っぷちの魔法学校はいつの間にか都心の一等地のビルの前に私たちは立っていた。
ふうと乱れた髪を整えたヴィルさんとともにビルの裏口に足を運ぶ。
楽屋に入るとずっと一緒に仕事をしているメイクさんが待機していた。衣装は自分のこだわりがあるらしくその荷物をメイクさんに渡す。
机に置いてある茶菓子をほかの場所に移して、ヴィルさんが好きな飲み物を置いた。
最近は豊作村というところのリンゴジュースが好みだと言うことでマジカメにも載せる予定らしい。
「あとのことはわかってるわね。任せたわよ」
私は一礼してマネージャーとしてなすべき仕事をするべく楽屋をあとにする。長年仕事の関係を続けていれば自ずと信頼関係もできてきた。
まずは担当者様にご挨拶しなければとぐるぐると考えていると、とんと誰かと肩がぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい。考え事をしてしまっていて」
そういうと振り返ったのは今をときめく若手俳優の男性だった。絵に描いたような好青年にまぶしくて目がくらみそうだ。
彼は「あああ!」と丸く愛らしい瞳を輝かせて私の両手を握った。急なことだったから心臓が破裂しそうで死ぬ。
「あなたが!有名タレントのヴィルさんのマネージャーさんですね!!噂では聞いていたけれど本当に可愛いですね!」
「えっ!?」
「実はヴィルさんのマジカメでリンさんがたまに載っていて密かにファンだったんです・・・!あの、今度良ければお食事にでも「あら、うちのマネージャーったらこんなところで油を売ってたの」
私の肩にずしっと重い手が乗った。そして耳元でいやに低く唸るような声が響く。ヴィルさんだ。
その若手俳優は「ひっ」と小さな叫び声をあげて顔をひきつらせた。こちらから彼のお顔を伺い知ることはできないが相当ご立腹なのだろう。
「すみませんでした!!!」と一目散に逃げて行ったその俳優を私たちは見送った。彼が去ったあとも私とヴィルさんの間に沈黙が流れた。
仕事の時間までもう誰も通ることもないだろう楽屋の廊下で、ヴィルさんが「あんた」と私を呼んだ。静かな廊下で凛とした声が響いて、私は背の高いヴィルさんを見上げた。
その美しいご尊顔が真顔でわたしを見つめている。ずっと一緒にいたからわかる、その怒気を含ませたようなすっと細くなった目。
世間一般のヴィルさんファンであればその美しい立ち姿に惚れ惚れとしていたかもしれない。しかし凍てつくようなその瞳に私はごくっと唾を飲み込んだ。
「その艶のある髪も、きめ細かくて肌荒れが一切ない白い肌も、上品で誰もが好感をもつようなメイクも、すれ違えば振り返るような華やかな香水も私が全部プロデュースしたのよ、わかってる?」
「はい」
「いい?あんたの全ては私のものなの。今度、さっきみたいにその手ひとつ私以外に触れさせたらただじゃおかないわよ」
「ほら、早く仕事を続けて頂戴」と言って楽屋に戻っていくヴィルさんの背中をぼうっと見つめた。
それはつまりどういうことだ?と首を傾げながら担当者さんに挨拶へ向かった。世界の女王であるヴィルさんがその時顔をうっすら赤く染めてたなんて誰も知らない。
愛憎プロデュース
後日投稿されたヴィルさんのマジカメは実質私の公開処刑だった。
おしおき
#マネージャー#寝顔#口開いてる#だらしない
コメント▽
ヴィルさんってマネージャーさんのこと大好きなんですね♡
以下315件の返信