07 辯駁オクトパス
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ジェイドやフロイド、その他大勢が見ている中、私がにやにやするのも恥ずかしいので、ジェイドにはお礼を心の中で言うことにした。
一同が去ってから、すやすやと寝息を立てているアズールの髪をなでる。
「結局記憶がなくて、あなた以外が私のユニーク魔法を目にしたってことになりそうねえ」
一番興味深そうだったのに皮肉な話だとくすくすと笑う。
ハーツラビュルの寮長も、サバナクローの寮長もオーバーブロットをしたと聞いた時、私は自分の能力を使うつもりがなかった。
ただ、これだけ立て続けに各寮でトラブルが起こればうちでも何かが起こるとは思っていたが、本当にまさか彼までオーバーブロットを起こすだなんて。
髪を撫でていると、はっとアズールは目を覚ましたが、いまだに気が動転しているようだった。
「リン・・・リンですか・・・?」と少し震えた手で私の頬をなでる。
その手をぎゅっと重ねると、安堵した表情を浮かべた。
「長い悪夢を見ているようでした。昔の、エレメンタリースクールのいじめられていた時のことです。
でも、貴女が出てきて、悪夢から救ってくれた。あなたは、いったい何者なのでしょうか・・・」
「私はアズールが大好きなただのかよわい女の子ですよ」
「ふふ、ではそういうことにしておきましょう・・・」
たぶん自分がオーバーブロットしていただなんて覚えていないのだろう。
今でさえオクタヴィネル寮の様子は戻っているものの、建物はめちゃくちゃだ。
全てが終わったら掃除から始まりだなあとぼんやりと考えた。
そんなことを思っていると、廊下から一同は戻ってくる。
「あら、黙ってたのにみんな来ちゃった」
「まったく、アズールが起きたこと、わざと教えませんでしたね、リン」
「そりゃ話し声聞こえたら気づくっつーの」
双子だけでなくハーツラビュルやサバナクローの寮生、ユウやグリムまでいる状況に、やはりただ事ではないと感じたのかアズールは問いかけた。
「僕は・・・一体、なにを?」
「魔法の使い過ぎでオーバーブロットしてしまったんです。覚えていませんか?」
「僕に力をくださいよぉ~~って泣きながらみんなの魔法吸い上げてさぁ。ちょ~ダサかった。ちょっとゲンメツ。」
「そ、そんな・・・僕が暴走するなんて信じられない・・・」
頭を抱えるアズールに、苦笑する。そんな情けない彼も好きな私は重症なのだろうか。
「でも、リンが救ったんですよ。彼女のユニーク魔法で。」
「そ~初めて見たけど、ちょーかっこよかった。」
双子の発言にアズールは目を丸くして私を見る。
「な・・・あなた、ユニーク魔法を使ったのですか!?」
「ふふ、アズール以外に知られてしまいました。でももう二度と使うつもりがありませんから、残念ね」
「あの美しい魔法を見られずに終わるとは、もったいないですねえ」
ジェイドがアズールに意地悪いことを言うが何も言い返せず睨みつけていた。
オーバーブロットしてたくせに、自分の体よりも私の体を気遣って、「どこか具合悪いところはありませんか?」と聞いてくるあたり愛されてるのだろうか。
「アズール、あの時の借りを返せたかしら」
私の魔力が暴走したあの日。あれはオーバーブロットというよりも、「放散」できなかったブロットが精神ダメージのせいで、行き場を失って暴発したような状況だと思うが。
あの後ナイトレイブンカレッジで目を覚ました私と、車椅子でお見舞いに来たアズール。ずっと飛行訓練のせいだと言っていたが嘘なのはすぐにわかった。
あのあと、私はユニーク魔法を生み出した。恐怖も絶望もすべて飲み込んで、照らす光となれるように願いをこめて。
「僕たちの間に貸し借りなんて考えないでいいですよ・・・でも、ありがとう。あなたのおかげです」
自分たちだけの世界になりそうなところで、ジャックの咳払いが聞こえて、全員が注目した。