07 辯駁オクトパス
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その海の女王が流す涙の彗星は、海を浄化し透明度や生物さえも生命の息吹を与える。その姿を見た人からすれば、慈愛と生命の象徴として、彼女は聖女とも取れることでしょう。
オーバーブロットしたアズールがだんだんと攻撃の意欲が削がれているのは、相手がリンだからか、それともその涙の効力かわかりませんが徐々に大人しくなっているのは明らかでした。
「最後の仕上げです・・・『胎動せよ 深海の女王』」
リンは魔法陣を描くと自分自身に向けて魔法を放つと、彼女の周りに水流が生まれたのち姿が無くなり僕たちは彼女を目で追ったのですがどこにも彼女は見えなくなりました。
異変に気付いたアズールが再び攻撃を始めようとこちらに触手を伸ばした瞬間、轟音がオクタヴィネル寮全体に轟き、海のプラネタリウムの中から巨大なジンベイザメが姿を現しました。
「なんすかあれ・・・・!?あんたらの寮こんなおっかねえ生物飼ってるなんて聞いてないっすよ!」
「えーあんなのいたっけジェイド」
「まさかとは思いますが、あのジンベイザメは・・・」
リンなのでは・・・?と言い切る前に察した皆さんは驚愕した表情で彼女を凝視しました。無理もないでしょう。
オクタヴィネル寮を覆い、優雅に泳ぐその姿はまさに海の女王にふさわしく、一同の周りをぐるりと旋回すると、たちまち枯れた珊瑚は再生を始め海の透明度が以前の環境を取り戻していました。
おそらく彼女のユニーク魔法は対オーバーブロットでもありますが、核となるのは「吸収」と「放散」。
元々、無意識に人や物といった魔力をもつ全てを微弱ながらも「吸収」し、体内に浄化させた魔力を溜め込んだ後、余分な(ブロットした)魔力は「放散」するのが彼女のユニーク魔法の原点として、それを応用したのが対オーバーブロット技なのでしょう。
彼女自身が「吸収」していた純粋な魔力をアズールに与え、そして廃棄物であるブロットを彼女が「放散」させる。
それを媒介するのは彼女の涙で、効力はアズールのほかブロットに侵されたフィールドにも及ぶといったところでしょうか。
ですが、「最後の仕上げ」と言って変化した彼女はこれから何をするつもりなのでしょうか・・・分析しているうちに、そのジンベイザメは大きな口を開けて、
アズールも、その背後に従える黒い蛸の女王も大きく飲み込んでしまいました。
「なっ、アズールが飲み込まれた!?」
そう叫んだエース・トラッポラ君をはじめ僕たちはこの状況に唖然とするしかありませんでした。
たちまちそのリンだと思われるジンベイザメとアズールは消え、海は元の状態に戻り、何事も起きなかったかのような状態にまで戻りましたが、
本人たちはどこを見回してもその影はなく、フロイドに手分けをして探すよう指示しました。
しかし程なくしてオクタヴィネルの寮生が「皆さん!!寮長とリンさんがこちらに!!」と叫び、僕たちは駆け出すとほどなくして、廊下に佇む二人の影を見つけた。
「アズール!リン!大丈夫ですか!?」
リンに向かって僕は叫ぶと彼女はしーっと人差し指を口に当てる。
「うわぁ、リンに膝枕してもらってる。ずりぃ」
フロイドが寝ているアズールに向かって呟いたがその言葉は聞こえるはずもなく、リンはふふふと笑いました。まるで、何事もなかったかのように。
「アズールの寝顔、可愛いよねぇ。ずっと見てられる」
そんな彼女は、さすがに余裕をもってアズールを対処してたとはいえ僕たち、いや少なくとも僕はひどく心配していました。
心配から怒りたい気持ちもありましたが、フロイドやほかの者がいる手前その衝動も抑えなければならないと思い、
「皆さん、行きましょう。目を覚ましたら教えてください」といって、僕はフロイドさえも置いて廊下から足早に彼女の前から去るようにしました。
「なに、ジェイド。本当は怒りたかったんじゃん?」
「フロイド・・・はあ。あなたにはわかってしまいましたか」
やれやれ、さすがに毎日顔を合わせている双子の片割れにはばれてしまっいました。きっと彼も少しは気にしていたのでしょう。彼女はアズールの大切な人であり、そして僕たちの大切な人ですから。
彼女がアズールに捕まった時はさすがにひやっとしてしまいました。
全てが終わったあと、傷ついた彼女を見て傷つくアズールも、リン自身も見たくなかったのです。
しかし、彼女は圧倒的な魔力でアズールの闇を飲み込んで、浄化させてしまいました。行き場のなくなった心配ゆえの怒りは、自分の中で未だに燻ったまま。
それをフロイドが「ダサ~」と言ってきて、それに僕は思わず煽られてしまいました。
「どういうことですか?フロイド」
「全部綺麗に片付いたんだしよくね?むしろうちらの女王様はこうあるべきでよかったじゃん」
てかそんな心配だったらリン止められるくらいの魔力つけねえと文句言えねえじゃんと付け足す片割れの彼に何も言い返すことはできず。
少し頭を冷やしてから彼女たちのもとに向かおうと思い、しばらく彗星が輝く海のプラネタリウムを見つめることにしました。