06 崩壊エトワール
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「シシシッ!うまく持ち出せましたね。」
「フン、お前の手癖の悪さには恐れ入るな。」
「絶対取られたくないなら、ポケットにもしっかり鍵かけとかなきゃ。にしても、この契約書の量すごいッスね。5、600枚はありそう。」
「フン、この学園に入るずっと前から悪徳契約を繰り返してコツコツ溜め込んでたんだろうぜ。これで契約書はVIPルームの外に持ち出せた。
後は・・・『俺こそが飢え、俺こそが乾き。お前から明日を奪うもの』」
レオナ寮長は束ねられた契約書に呪文を唱え始める。
「待ちなさい!!」と、それを制止するアズールの声がオクタヴィネル寮に響き渡った。
「・・・おっと、もうおでましか。それ以上こっちに近づくなよ。契約書がどうなっても知らないぜ。」
「か、返してください・・・それを返してください!」
焦りで我を失っているアズールに淡々としたレオナ寮長の言葉が響く。
そんな彼らを追いかけてきた私の存在に気付いたラギー副寮長はレオナ寮長に耳打ちし、それににやりと笑みを浮かべて指をさした。
「は、オクタヴィネルの姫様のお出ましじゃねえか」
「シシシ!今の状況はさながらお姫様を守る騎士ってところっすよ」
「俺たち悪役かよ」
「当たり前じゃないっすか」
「まさか。私はちょっと泣きそうなアズールの顔が大好きなんですよ。なのに、私以外の人が見るなんて腹が立ってるだけです」
「げ、見た目のわりにまさかのドSっすか」
「はっ、歪んだ性癖してんなァ。姫様は知ってたのか?
金庫に保管されている時・・・つまりあのタコの寮長の手を離れた契約書は破ける状態ってことをよ」
「そうねえ、そしてあなたは自分の寮にいる狸ちゃん達を追い出すついでに、この騒ぎに乗じて自分の契約を破棄しようって魂胆かしら?」
「おーおー。頭がいい女は話が早くて助かるなァ。要約するとそういうことだ。悪党として、アイツに一歩負けたな、アズール。お姫様。」
「う、うそだ!やめろ!」
「さあ、『平伏しろ!王者の咆哮』!」
砂塵がレオナ寮長の手にまとい、アズールの叫びもむなしくレオナ寮長の手にあった契約書は砂と化していく。
「あ、あああ・・・!!僕の、僕の『黄金の契約書』が・・・!全部、塵に・・・!
もうやだ~~~~~~~!!!
消えた・・・コツコツ集めた魔法コレクションが!僕の万能の力がぁ・・・!」
「・・・なんだァ?」
「き、急にキャラが・・・」
いつものすました性格のアズールが豹変しぐずぐずと泣き出した姿に二人はたじろぐ。
アズールは私の胸の中に飛び込んでわんわんと泣き出した。
「リン・・・リン・・・!あいつらのせいで、あいつらのせいで・・・!
僕は・・・僕はまた、グズでノロマなタコに逆戻りじゃないか!そんなのは嫌だ・・・いやだ、いやだ、いやだ!!もう昔の僕に戻るのは、嫌なんだよぉ・・・!」
美しい深海がアズールを中心に黒い影で侵食されていく。まるで私が昔、黒い影に包まれて記憶を失った時のように似ている。
泣き叫んだアズールを見るのが趣味で泳がせていたもののオーバーブロットで命の危険に晒すのはまずいと思い私は詠唱し始める。
「レオナさんが期待させてから落とすようなマネするからッスよ!アズールくん、ほ、ほら、ちょっと落ち着こ、ねっ!」
ラギー副寮長が余計な慰め事を言ってくれたせいでさらに悪影響を及ぼし軽く舌打ちをした。
「うるせ~~~!!!!昔の僕のことを知らないリン以外の愚図野郎共が僕のことなんかわかるはずない!」
「ああ、そうだ・・・なくなったなら、また奪えばいいんだ・・・くれよ。なぁ、お前らの自慢の能力、僕にくれよぉ!
そこのお前の雷の魔法、その隣のヤツの運動能力全部、全部僕によこせぇ!」