05 腹黒クイーン
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「はぁ・・・夢・・・か」
じっとりと嫌な汗が全身から噴き出していた。
もう二度と経験したくない現実が何度も夢として出てくる。
隣ですやすやと眠っている彼女を見ると、あの悪夢の当人と本当に同一人物か目を疑ってしまうほどだ。
まるで野生の虎が飼い猫にでもなったかのよう。
昔なら僕が動いたらすぐ目を覚ましていたのだが、今は髪を触ってもぴくりともしなくなった。
むしろ気持ちよさそうに幸せそうな寝顔を向けてくるので、思わずこちらも目じりを下げてしまう。
「あなたは、まだ一人で戦っているんですかねえ」
期末テストも自分に頼ってくれるようテストの情報量をわざと減らしていたのだが、僕に頼ることなく彼女は40位という成績を残し、
マジフト大会で1年選手として出場してあのマレウスの雷鳴轟かす魔法を相手に海の魔人を呼び出して得点を入れたのはかなりの話題となった。
オーバーブロットも示唆されたが、彼女はむしろ溜め込んだ魔力を放散できたことで健康的になったと言っていた。
あれからマレウス・ドラコニアからディアソムニア寮への招待状を月に一回くるようになるわ、
学園長から学園対抗マジフト大会の推薦が来るわ、
彼女に知られる前に破棄したり断ったりと、僕の気苦労も気づいてほしいとため息をついた。
本当なら誰にも彼女の魅力を知られないで卒業してもらいたかったのだが。
髪を触りすぎていたのか、さすがに彼女はぴくりと動いて寝ぼけた顔で僕を見つめた。
「あれ、先に起きてたの、アズール」
「ええ、朝のカモミールでも用意できればよかったのですが、起きてしまいましたか」
「昔ならすぐ気づいてたのに、おかしいなぁ」
「そうですか?僕は信頼されている気がして嬉しいですよ」
ソファに移動して虚空を見つめているリンに紅茶を淹れて、寝ぐせをついた髪の毛を梳かす。
気持ちよさそうにまたこてんと寝てしまいそうなので
たまに風の魔法で髪をブローするついでにリンの顔に風をあてる。
「ちょっとアズール。わざとやってるでしょ」
「ふふ、また寝て授業に遅れてしまってはいけませんからね」
「アズールの梳かす手がきもちいーの」
「おやおや、甘えるのが上手になりましたねえ」
寝癖も取れてさらさらになったので巻貝の髪飾りを耳元につける。魔力がいきわたり髪の毛にも艶が出てきた。
「僕は経営のことがあるので先に部屋を出ますが、ちゃんと授業は出てくださいね」
リンの生返事に困ったものだと思いつつ、ハットとコートを身に着けて支度を整えた。