02 臆病アドマイア
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「・・・・夢」
目を覚ますとここはオクタヴィネル寮の、アズールの部屋だった。
自分はどれくらい寝ていたのだろうか。長い間昔の夢を見ていた気がする。
「私・・・あのあとどうなっちゃったんだろう」
そう、あの時も、目を覚ましたらナイトレイブンカレッジの鏡の間にいて。
胡散臭いカラスの学園長に「時期はずれていますが、入学生として迎え入れます!私優しいので!」とか言われて。
有無を言わさずアズール達のいる寮に配属されて一年が過ぎたが実際誰が私の始末をつけてくれたのか謎めいたままだった。
あの時アズールは全身打撲と骨折してて車椅子状態だったのだが、私が理由を聞いても答えてくれなかった。
ぼうっとしていると、部屋にアズールが入ってきて「やっと起きましたか」と呆れていた。
「ずっとうなされてましたよ。もう昼過ぎです。ジェイドに紅茶を作ってもらうので、早く起きてください」
「アズール、私、また暴走しないよね・・・?」
「何を言ってるんですか。そのためにもっと強化した髪飾りをプレゼントしたでしょう。原材料も高価なんですから、次は壊さないように」
はっとしてベッドサイドテーブルに置かれている髪飾りを目にやった。パールと巻貝が私の魔力を得て白い輝きを見せている。
「そうだった。ありがとう」
「どうせ昔の夢を見ていたのでしょう、気分はすぐれませんか?」
小言を言いつつ私の体を気遣ってくれるアズールは、本当は心優しい人なのだと思う。
腹黒とか守銭奴とかいいことはあまり聞かないけれど、それでも私の大好きな人だ。
「大丈夫。ただ、私の記憶が途絶えた後、どうなったのかなあって。アズール全身骨折してるし。」
「またそれですか、私のそれは飛行訓練中に落下したといったではありませんか」
「ふーん。ならいいけど・・・」
こう言葉を濁されては深く追求できない。アズールはモストロ・ラウンジの決算書を作り始めて話しかける雰囲気でもなくなったので、またそのことについては迷宮入りとなってしまった。
「リン、アズール、紅茶をお持ちしましたよ。リンは何か口に入れた方がいいと思ったので、焼き立てのスコーンを。」
「ジェイド、ありがとう」
「助かりました。空腹の彼女を野放しにすると危険ですから」
くくっと私を尻目に笑いながら、彼はジェイドの紅茶を一口含んだ。
私もじっとりアズールを睨みつけながら淹れてもらった紅茶を口に入れる。うん。おいしい。バニラの香りがする紅茶だ、ミルクを少し垂らそう。
「そういえば、そろそろ期末テストの時期ですね、ジェイド」
「ええ、そうですね」
「あれの準備は整いました。これから契約者との日程調整、頼ましたよ。」
ジェイドは一礼し、アズールの部屋から出て行ってしまった。
「あれって?」と聞いてもアズールは「リンには関係のないことですよ」とにっこり嫌な笑みを返されてしまったのでそれ以上は聞けなくなってしまった。
「それよりも、まだ僕の部屋にいるつもりですか?男一人の部屋に女性がベッドの上にいるこの状況は、いただけませんねえ」
アズールもベッドに入ってくるなり、私に覆いかぶさった。眼鏡をサイドテーブルに置くなり、頬をひと撫でして額をこつんと合わせる。
「この前は双子に邪魔されましたが、今度はそうもいきませんよ?」と、私の耳元で色気を帯びた声で囁いた。そこに少し震えが混じっているのを聞き逃さなかったのは、昔馴染みの仲だからだろうか。
これでいて、とても大切にされている自信があるからこそ、私を粗暴に扱わないことくらい知っていた。
「せんぱい、あの時、本当はキスできましたよね。でもしなかった。できなかった。それくらい、私のこと、大切にしてくれてると思ってますよ」
そういうと、アズールは面食らった表情をしていたが、次第にくつくつと笑い始めた。