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12.休日の相棒

「おー。メイナ達か。随分とまたお疲れ様だな」

 どっと疲れて帰ってきたギルドでは既に癒しのパルマは違う受付に座っていて、心のこもっていないお疲れ様を吐くパットさんが私達を迎え入れた。
 ネリネ村での仕事も終えて更に隣の集落に徒歩で寄り、あの川辺から流れてきたのか同じ様な魔物退治。帰りの馬車でまた少し休めたものの、やはり凝ってしまった体に、町に帰ってきたら薬屋さんに代金を持って行ったり報告書と報酬の農作物を纏めたりと締めの仕事が残っていた。
 それからギルドに戻ってきて、これだ。

「そんなにカブラとドラゴーラぶら下げて、一瞬どこの畑のおばさんかと思ったぞ」

 お、おばさ……ネリネ村の依頼の報酬だって知っているくせに、白々しい!
 白くでっぷりとしたカブラは煮物に良さそうで、ドラゴーラも橙の鮮やかさと形がとても良い。店先で見付けたのなら嬉しい限りだけど、今はパットさんの言葉で直ぐ様手放したい気持ちになった。

「ま、ただのおばさんじゃあその量は持ちきれないわな。流石メイナ」

「今アメリア神が私に目の前の男をぶっても良いと囁いてます」

「アメリア様はそんな事言わねーよ。それよりほら、報告書と魔法記録を寄越せ」

 いや、枯れた地に魔法を広めてくださった心優しいアメリア神様ならきっと許してくださるはず……!尊き時の我らが女神よ、願わくばどうかこの人間に罰(物理)をお許しくださらん事を。
 と祈っても現実は無情。そしてここは祈るべき教会ではなくパットさんが上司の冒険者ギルド。
 その言葉に従い、私は纏めた報告書の束と背負っていたカブラにドラゴーラ、魔法記録の為のペンダントを渡した。
 市場に流されるだろう報酬はパットさんが奥で書類整理をしていた人達数人を呼び、彼らの手で奥の部屋へと運ばれていく。今回は確認にも時間が掛かるため、呼んだ当人は書類とにらめっこして、或いは判子を捺したり何かを書いたりしていた。

「報告受理されたら俺はとっとと家に帰って休むとするかな」

「良いですね。私も『ユァミャ』でさっとお風呂に入ったら、さっさと寝たいです」

 待つ間はいつものテーブルを囲って飲み物でも飲みつつ、この後の休息について妄想語りする。疲れが溜まっているからきっと癒しも一入(ひとしお)だ。
 妄想だけでほう……と顔を緩ませる私を見ながら、エルトもその会話に乗っかってくる。

「じゃあ僕も『ユァミャ』に寄って寝ようかな。メイナの横で」

 私の顔は一気に歪んだ。

「メイナ!メイナ・イクシーダ!」

「あっ。はい!」

 やがて処理も終わり私の名前が呼ばれる。この高らかに呼ばれる瞬間はあまり好きじゃないんだけど、ずっと受付の前にいるのも何だから仕方がない。
 三人で再び受付に戻ると、確認が終了したという言葉とペンダントを渡される。
 またそれを首から掛けて棍棒を握り、さて外へ出ようと受付から離れかけた時だった。

「ああ、そうだメイナ。アルグヴァンとメタシナバーも」

 言い忘れていた、と私達に声を掛けるパットさん。私だけ残れと言うならギルド内で残業かと思うんだけど、三人で呼び止められて首を傾げる。

「?」

「お前ら明日は休みだ。良かったな」
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