世界は光でできている
そんな日が、少し楽しい。
のり
―好物―
ここは神様に仕える天仕達が忙しなく働く宮殿……と言いたい所だけど。
物はあまり多くないにも関わらず、その物が散乱して、無理に端に寄せたような片付け。ゴミが多い訳ではないんだけど……なーんか掃除しろ片付けろと言いたくなる部屋。
今日は幼なじみ、カイル・イレイザーの家に遊びに来てるわけで。
「ねぇカイルー。あんた、ルース・シャーレに何かした?」
「えっ。何でですか」
きょとん、とした顔でそう返してくるカイル。……それもそうか。ルースとの関わりなんてそうそうないし。あたしも最近会う機会が多くなっただけで。
「いや、この間冗談なんだろうけど、あんたに気を付けろーだなんて言ってくるからさ。嫌われるような事でもしたんじゃないかって」
「ええっ。困りますよー」
今度は慌てながらもうーんうーんと考え出す。そんな姿を見て思わず吹き出してしまう。
外見は黒いもじゃもじゃの頭に眼鏡。服装も制服ばかりで、可愛いとは言えない気がするんだけど、仕草とかそういうのはこいつ、可愛い気がする。
「な、何で笑うんですか!」
「別に。ああほら、今日来た目的」
持ってきたビニールの袋(もちろん地上で服を買った時に入ってた可愛い袋!)の中身をこつんと置く。
小瓶にいっぱい入った黒い物。
こいつの好物、恥ずかしながらあたしん家の伝統味付けで作った海苔の佃煮だ。
テーブルに置かれた瞬間、カイルの目がきらんきらんと輝いた。何て現金。
「わー!流石ミューリです、有難う御座います!」
「あんたも変な物好きよねー」
でも、これだけ喜んでくれるのは嬉しくないわけがない。
勿論面には出さないけど。
カイルはあたしのテンション低めの声色も気にせず言葉だけを気にして、満面の笑みで佃煮を掲げた。
「変な物って何ですか!これさえあればライスが三杯食べられます」
「三杯って……」
一日中ライス、しかも海苔の佃煮で済ませるってこと?し、信じられない。
「また切れたらお願いしますね」
「う」
「って親戚の方に伝えて下さい」
「……うん……」
そうだった。顔に出さずにちょっと浮かれてたけど、これをあたしが作ってる事は言ってなかったんだった。
佃煮が得意とか、何か恥ずかしいし。
カイルはたっと冷蔵庫に向かい、海苔の瓶を大切そうにしまった。
(……また、切れたら作んなきゃ、ね)
また。
作る度に気のせいか、間隔が短くなっている気がするし、次は一体いつになるのだろう。
カイルの情けない顔(笑顔だけど、この情けないってのは表情じゃなく元々だし)をぼうっと眺めつつ、そんな事を考えた。
「僕の将来のお嫁さんも、海苔の佃煮が作れる人がいいなぁ」
「ぶっ!?」
「わ!ミューリ、どうしたんですか!?」
あまりの不意討ちで、溢したお茶がテーブルを汚す。
(……料理が上手なお嫁さんを探す事ね。その前に、こいつは恋人探しが問題か)
のり
―好物―
ここは神様に仕える天仕達が忙しなく働く宮殿……と言いたい所だけど。
物はあまり多くないにも関わらず、その物が散乱して、無理に端に寄せたような片付け。ゴミが多い訳ではないんだけど……なーんか掃除しろ片付けろと言いたくなる部屋。
今日は幼なじみ、カイル・イレイザーの家に遊びに来てるわけで。
「ねぇカイルー。あんた、ルース・シャーレに何かした?」
「えっ。何でですか」
きょとん、とした顔でそう返してくるカイル。……それもそうか。ルースとの関わりなんてそうそうないし。あたしも最近会う機会が多くなっただけで。
「いや、この間冗談なんだろうけど、あんたに気を付けろーだなんて言ってくるからさ。嫌われるような事でもしたんじゃないかって」
「ええっ。困りますよー」
今度は慌てながらもうーんうーんと考え出す。そんな姿を見て思わず吹き出してしまう。
外見は黒いもじゃもじゃの頭に眼鏡。服装も制服ばかりで、可愛いとは言えない気がするんだけど、仕草とかそういうのはこいつ、可愛い気がする。
「な、何で笑うんですか!」
「別に。ああほら、今日来た目的」
持ってきたビニールの袋(もちろん地上で服を買った時に入ってた可愛い袋!)の中身をこつんと置く。
小瓶にいっぱい入った黒い物。
こいつの好物、恥ずかしながらあたしん家の伝統味付けで作った海苔の佃煮だ。
テーブルに置かれた瞬間、カイルの目がきらんきらんと輝いた。何て現金。
「わー!流石ミューリです、有難う御座います!」
「あんたも変な物好きよねー」
でも、これだけ喜んでくれるのは嬉しくないわけがない。
勿論面には出さないけど。
カイルはあたしのテンション低めの声色も気にせず言葉だけを気にして、満面の笑みで佃煮を掲げた。
「変な物って何ですか!これさえあればライスが三杯食べられます」
「三杯って……」
一日中ライス、しかも海苔の佃煮で済ませるってこと?し、信じられない。
「また切れたらお願いしますね」
「う」
「って親戚の方に伝えて下さい」
「……うん……」
そうだった。顔に出さずにちょっと浮かれてたけど、これをあたしが作ってる事は言ってなかったんだった。
佃煮が得意とか、何か恥ずかしいし。
カイルはたっと冷蔵庫に向かい、海苔の瓶を大切そうにしまった。
(……また、切れたら作んなきゃ、ね)
また。
作る度に気のせいか、間隔が短くなっている気がするし、次は一体いつになるのだろう。
カイルの情けない顔(笑顔だけど、この情けないってのは表情じゃなく元々だし)をぼうっと眺めつつ、そんな事を考えた。
「僕の将来のお嫁さんも、海苔の佃煮が作れる人がいいなぁ」
「ぶっ!?」
「わ!ミューリ、どうしたんですか!?」
あまりの不意討ちで、溢したお茶がテーブルを汚す。
(……料理が上手なお嫁さんを探す事ね。その前に、こいつは恋人探しが問題か)