世界は光でできている
他人の事を自分の物差しで測るな。
なぜなら、他人と自分の物差しは全く違うからである。
定規
―ものさし―
「ふーっ、お疲れ様ー?」
何故か疑問符を付けて話し掛けてくる女性、ルリエラ。
パーマを掛けたのマラカイトグリーンの髪。髪の長さはミューリより少し長いが、髪型はそう変わらない。ただ、襟足の先が少しだけ長く、本人の顔つきもあり、雰囲気はミューリと違って穏やかで大人らしい女性だ。
制服ではないが、白のシャツとグレーのスカート、ポケットには黒のペンを差す。見たまんま、事務専門の女性である。
ミューリと入った時期が一緒で、実年齢も一個差だった為、いつの間にか仲良くなっていた。
「お疲れルリエラー」
「今日も1日長かった!お疲れ!」
ミューリ以外の側にいた女性も労いの言葉を返す。
「去年はこんな忙しくなかったのになー」
「そうだったんですか?」
「そうそう、あんた達は知らないんだもんね」
一年先に入った先輩がそう言った。
そこにいた二人は去年の事なんて知らない。
「あ、でもお陰で今日はルースさんに声掛けられちゃった!」
きゃ、とハートを飛ばす先輩女性。
ミューリはそれに然り気無い呆れ顔をするが、ルリエラはそんな事はないようで
「あ、いいなぁ?」
と呟いた。
「……ルリエラもルース……さんの事好きなの?」
「好きと言うか、憧れ?格好良いじゃない?仕事も割りとパキパキするし?」
頬に手を当ててぽやんとした声色で答えるルリエラ。実際はゆっくりではないのに、どこか喋りがゆっくりしているように感じる。
「そうよねー。地上で言うアイドルって感じ」
「はあ……」
どこが。とここで言えば、間違いなく空気の読めない人間である。
ミューリは何となくの声を出した。
「逆にカイル・イレイザーったら!ルースさんと同期なのに、だらしなくて情けない感じで窓際だし。なのに会う機会はルースさんより多いのよね」
カイルと話す場面はよくあるのだが、ミューリとカイルが旧知の中と知っている人間は少ない。
知っていれば当然この先輩も言い淀んだろうが……自分では文句を言うのに、ミューリの今の心境は何だか複雑だった。
「あ、でもカイルさん優しいですよ?」
「えー」
ルリエラはフォローしてくれるが、先輩は更に反対の声をあげた。
「わたし先日頼まれて、第五資料室に初めて入ったんですけど、資料で前が見えなかったんですよ?」
「ルリエラ第五に入ったの!?いいなー、あたしまだそこまで頼りにされてないかも」
第五資料室と言えば、重要な資料が集まっているため、決まった上司しかリングキー……腕輪の形をした鍵……を持っていない。
それを託されると言う事は、大分力の有る上司に信頼されたと言う証だ。
「ミューリも今の感じならすぐだよ?……それで、資料をばらまいちゃったんですけど、他の人とお話してたのに、中断して手伝ってくれたんですよ?」
「ふーん」
先輩は相も変わらず評価を変えないようだったが、ミューリには少しだけ嬉しく感じる。
そして先輩は再びルースの話をするが、今度はミューリにとって胡散臭さしか感じられない。
結局のところ、自分の価値観などは他人との計りが違うのだから。
己がそう、と自分の物で決めてしまえば、変えることは難しいのである。
そしていつか、彼女はそれを思い知ることとなる。
「よーし、ルリエラ。今度あたし特製海苔の佃煮でもあげるね」
「わーい。でも何で佃煮?」
「それはー、その、ねっ」
「あ、そういえばあの時カイルさんが話しかけてた女性。綺麗な紫の髪の女性でした」
「えー!カイル・イレイザーにまさかの彼女!?」
「え……」
なぜなら、他人と自分の物差しは全く違うからである。
定規
―ものさし―
「ふーっ、お疲れ様ー?」
何故か疑問符を付けて話し掛けてくる女性、ルリエラ。
パーマを掛けたのマラカイトグリーンの髪。髪の長さはミューリより少し長いが、髪型はそう変わらない。ただ、襟足の先が少しだけ長く、本人の顔つきもあり、雰囲気はミューリと違って穏やかで大人らしい女性だ。
制服ではないが、白のシャツとグレーのスカート、ポケットには黒のペンを差す。見たまんま、事務専門の女性である。
ミューリと入った時期が一緒で、実年齢も一個差だった為、いつの間にか仲良くなっていた。
「お疲れルリエラー」
「今日も1日長かった!お疲れ!」
ミューリ以外の側にいた女性も労いの言葉を返す。
「去年はこんな忙しくなかったのになー」
「そうだったんですか?」
「そうそう、あんた達は知らないんだもんね」
一年先に入った先輩がそう言った。
そこにいた二人は去年の事なんて知らない。
「あ、でもお陰で今日はルースさんに声掛けられちゃった!」
きゃ、とハートを飛ばす先輩女性。
ミューリはそれに然り気無い呆れ顔をするが、ルリエラはそんな事はないようで
「あ、いいなぁ?」
と呟いた。
「……ルリエラもルース……さんの事好きなの?」
「好きと言うか、憧れ?格好良いじゃない?仕事も割りとパキパキするし?」
頬に手を当ててぽやんとした声色で答えるルリエラ。実際はゆっくりではないのに、どこか喋りがゆっくりしているように感じる。
「そうよねー。地上で言うアイドルって感じ」
「はあ……」
どこが。とここで言えば、間違いなく空気の読めない人間である。
ミューリは何となくの声を出した。
「逆にカイル・イレイザーったら!ルースさんと同期なのに、だらしなくて情けない感じで窓際だし。なのに会う機会はルースさんより多いのよね」
カイルと話す場面はよくあるのだが、ミューリとカイルが旧知の中と知っている人間は少ない。
知っていれば当然この先輩も言い淀んだろうが……自分では文句を言うのに、ミューリの今の心境は何だか複雑だった。
「あ、でもカイルさん優しいですよ?」
「えー」
ルリエラはフォローしてくれるが、先輩は更に反対の声をあげた。
「わたし先日頼まれて、第五資料室に初めて入ったんですけど、資料で前が見えなかったんですよ?」
「ルリエラ第五に入ったの!?いいなー、あたしまだそこまで頼りにされてないかも」
第五資料室と言えば、重要な資料が集まっているため、決まった上司しかリングキー……腕輪の形をした鍵……を持っていない。
それを託されると言う事は、大分力の有る上司に信頼されたと言う証だ。
「ミューリも今の感じならすぐだよ?……それで、資料をばらまいちゃったんですけど、他の人とお話してたのに、中断して手伝ってくれたんですよ?」
「ふーん」
先輩は相も変わらず評価を変えないようだったが、ミューリには少しだけ嬉しく感じる。
そして先輩は再びルースの話をするが、今度はミューリにとって胡散臭さしか感じられない。
結局のところ、自分の価値観などは他人との計りが違うのだから。
己がそう、と自分の物で決めてしまえば、変えることは難しいのである。
そしていつか、彼女はそれを思い知ることとなる。
「よーし、ルリエラ。今度あたし特製海苔の佃煮でもあげるね」
「わーい。でも何で佃煮?」
「それはー、その、ねっ」
「あ、そういえばあの時カイルさんが話しかけてた女性。綺麗な紫の髪の女性でした」
「えー!カイル・イレイザーにまさかの彼女!?」
「え……」