世界は夢でできている
25.半分
――ようやく、半分だ。
長いようで短かった。でも思えば皆そんなもの。失ってから勿体無い、これしか無かったのかと気付くのに、同じ短かな時でもこれからの時はまた別に感じている。
だから私はこうして今も無駄な時間を過ごしているのだ。
「ああ、カナタさん、休憩入っていいよ」
「あっ、はい。有難うございます」
先輩に言われて、私はそっと裏へと引っ込む。
……ああ、今日もまだあと半分仕事があるんだ。思わず溜め息が出て、閉めたばかりのドアに疲れを少しでも委せるように凭れ掛かる。
そりゃあ働くのだからいつも疲れている。でも今日は特に変なお客さんが多かった。
町中に面していると常識外れな客から喚く客、面倒なお年寄り客(勿論お年寄りの中には優しいお客さんも一杯いるけど)。色んな人がちょこちょことやって来る。チェーン展開している喫茶店だという事もあるだろう。
「ああ、やめやめ。考えたって無駄なんだから」
私如きが嫌な客は爆発しないかななんて超常現象妄想したって無駄なんだから。
所詮は生きる捨て駒よ。世界の何処に影響を与えられよう。
ロッカーから自分の鞄を漁り、四角い紙のパッケージを取り出す。椅子に座って、既に破けた銀紙の口からとんとんと一本取り出して口にくわえる。
買った店で一番安かった無機質なライターをかちりと押して先っぽに火を点けた。そこが灰に変わる前に、机の端にあった灰皿を指でくくっと引っ張ってくる。
「……はぁ」
憂鬱な気分は、これで紛らわせるしか無かった。
携帯を弄っても大したメールも入っていない。あったとして、下らない愚痴をノリノリで聞いてくれる優しい友人なんていない。逆に聞いてくれと吐き出されるばっかりだ。
私が話を振るなら、面白いネタを提供しないと。
……ああ、馬鹿みたいだ。
こんな無駄な事ばかりの平凡な人生。ファンタジーも**も無い、何でもない日常。
「――そう言えば、あの時の客、凄く似てたな」
面白いネタとまではいかないが。半分終わった仕事の記憶をごそごそと漁っている間に、私にとってはちょっと印象深かった**では無いお客さんを思い出す。
確か、ジャスミンティーとアップルジュースを持っていった席。最初にジャスミンティーを頼まれて、その後でアップルジュースを頼まれた。
……ん?逆だっけ。そもそもアップルジュース、いつ頼まれたっけ。
まあ良いや。頼まれたのは間違いない。お客さん受け取ったし、飲んでいったし、お会計もしていったみたいだし。
始めは二杯目の注文早いな。って言うか一人で長居するならフードも頼んでくれれば良いのにって思ったんだ。そしたら違った。髪色がちょっと違って、服装は大分違う全く同じ顔の女の人が座っていたのだ。
しかも片方の人が入って来たのは見たけれど、もう一人がいつ入って来たのかわからない。入店の音が鳴れば「いらっしゃいませー」と顔を上げているつもりなのに。
もしかして、あれってドッペルゲンガーってやつ?
それともパステルカラーばかりの女の人とガチガチのゴスロリな女の人で、天使と悪魔、みたいなファンタジーだったら面白いかも。
……なんて、ただの双子なんだろうけどね。音だってたまに反応無いことあるし。
いつの間にか大して仲良くない友人に取り入ろうと、面白い話を無理にこねこねと練ろうとしている自分を嘲笑した。
ああ、明日地球でも爆発しないかななんてまた無駄な事考えて。ふっと時計を見ると、休憩時間が半分終わった事に気付いて私は慌ててご飯を食べ始めた。
――ようやく、半分だ。
長いようで短かった。でも思えば皆そんなもの。失ってから勿体無い、これしか無かったのかと気付くのに、同じ短かな時でもこれからの時はまた別に感じている。
だから私はこうして今も無駄な時間を過ごしているのだ。
「ああ、カナタさん、休憩入っていいよ」
「あっ、はい。有難うございます」
先輩に言われて、私はそっと裏へと引っ込む。
……ああ、今日もまだあと半分仕事があるんだ。思わず溜め息が出て、閉めたばかりのドアに疲れを少しでも委せるように凭れ掛かる。
そりゃあ働くのだからいつも疲れている。でも今日は特に変なお客さんが多かった。
町中に面していると常識外れな客から喚く客、面倒なお年寄り客(勿論お年寄りの中には優しいお客さんも一杯いるけど)。色んな人がちょこちょことやって来る。チェーン展開している喫茶店だという事もあるだろう。
「ああ、やめやめ。考えたって無駄なんだから」
私如きが嫌な客は爆発しないかななんて超常現象妄想したって無駄なんだから。
所詮は生きる捨て駒よ。世界の何処に影響を与えられよう。
ロッカーから自分の鞄を漁り、四角い紙のパッケージを取り出す。椅子に座って、既に破けた銀紙の口からとんとんと一本取り出して口にくわえる。
買った店で一番安かった無機質なライターをかちりと押して先っぽに火を点けた。そこが灰に変わる前に、机の端にあった灰皿を指でくくっと引っ張ってくる。
「……はぁ」
憂鬱な気分は、これで紛らわせるしか無かった。
携帯を弄っても大したメールも入っていない。あったとして、下らない愚痴をノリノリで聞いてくれる優しい友人なんていない。逆に聞いてくれと吐き出されるばっかりだ。
私が話を振るなら、面白いネタを提供しないと。
……ああ、馬鹿みたいだ。
こんな無駄な事ばかりの平凡な人生。ファンタジーも**も無い、何でもない日常。
「――そう言えば、あの時の客、凄く似てたな」
面白いネタとまではいかないが。半分終わった仕事の記憶をごそごそと漁っている間に、私にとってはちょっと印象深かった**では無いお客さんを思い出す。
確か、ジャスミンティーとアップルジュースを持っていった席。最初にジャスミンティーを頼まれて、その後でアップルジュースを頼まれた。
……ん?逆だっけ。そもそもアップルジュース、いつ頼まれたっけ。
まあ良いや。頼まれたのは間違いない。お客さん受け取ったし、飲んでいったし、お会計もしていったみたいだし。
始めは二杯目の注文早いな。って言うか一人で長居するならフードも頼んでくれれば良いのにって思ったんだ。そしたら違った。髪色がちょっと違って、服装は大分違う全く同じ顔の女の人が座っていたのだ。
しかも片方の人が入って来たのは見たけれど、もう一人がいつ入って来たのかわからない。入店の音が鳴れば「いらっしゃいませー」と顔を上げているつもりなのに。
もしかして、あれってドッペルゲンガーってやつ?
それともパステルカラーばかりの女の人とガチガチのゴスロリな女の人で、天使と悪魔、みたいなファンタジーだったら面白いかも。
……なんて、ただの双子なんだろうけどね。音だってたまに反応無いことあるし。
いつの間にか大して仲良くない友人に取り入ろうと、面白い話を無理にこねこねと練ろうとしている自分を嘲笑した。
ああ、明日地球でも爆発しないかななんてまた無駄な事考えて。ふっと時計を見ると、休憩時間が半分終わった事に気付いて私は慌ててご飯を食べ始めた。