世界は夢でできている
11.必死
悪魔に仲間意識なんて。
ただ上と下があって、消されるのが嫌だから言うことに従う。
生まれ出でたばかりではまだ勝手がわからない事もあるから従う。
だからブラッドに連れられた悪魔達の集まりは、ただの冷たい眼をした獣の集団だった。
同士だとか手を取り合ってなんて言葉は浮かばない。こいつらを使ってやろうとか、自分が一ピース埋める代わりにこいつらは他のピースを沢山埋めてくれるとか、そんな事をお互い考えているのが見え見えだった。
最後に完成した絵は奪い合いだ。
その中でもまとめ役らしい一柱は肩先につくかつかないかの黒髪を揺らして振り向くと、その男は私を紅い目ですっと見つめた。
生まれたての私はそれだけで体が強ばって喉の奥が絞められたような感覚に陥った。
ブラッドは平気なのか、こんな私を前に出すといつもの調子で紹介する。
「新しく生まれた悪魔だ」
「……ふん。名は」
「……ルカ。ルカ・××××××」
「そうか」
紹介はそれで終わった。私達の上に位置するこの男には私などやはりどうでも良い存在らしい。
その後は今までの功績を話し合うだけで、私がここに集った意味はあまりないように思えた。
むしろ、来ない方が良かったのかもしれないとさえ思えた。
話し合いが終わり解散を言い渡されるとあの男は素早く消えて、他の悪魔達もちらほらと去っていく。けれど数人の悪魔が私の方へと向かってきた。嫌らしい笑みを浮かべて。
お互いの思惑は顔にべったりと書かれているのだ。彼らの考えもまた私は読めた。
「へェ、ブラッド。お前子守り始めたんだ」
「早く棄てちゃいなよぉ。流石半端者、弱そうな悪魔じゃん」
半端者。きっと私が生まれたてで彼らよりも弱いからだ。あの男には瞳を向けられただけで怯えてしまった。
その事実をせせら笑っているのだ。
「今日は蝿が煩ェな」
「それは誰にたかっているのかしら?」
まだ笑っている目を真っ黒に化粧した女を放置して、ブラッドは「行くぞ」と私の肩を叩いた。
悪魔としての性分、こいつらを消せないかなと考える。
でも悪魔としての性分、もっと勝てる確率が上がってからの方が良いと考える。
私達はそのまま土に沈み、拓けた森の中から自分達の領域へと移動した。
それからと言うもの、私は必死に仕事をこなした。
仕事は鴉が運んでくる。それを見て標的に仕掛ける。あるいは殺す。
私の実力はめきめきと伸びていった……と思う。少なくともその辺は冗談は言うが誤魔化しをしないブラッドが珍しく褒めていたのだから、まあ悪くはなかったと思う。
「あら。半端者じゃない」
「……なんや。煩い蝿やね」
「ふん!意気がってるんじゃないよ。あんたみたいな半端者、死んだ方がブラッドも楽になるのに、ねッ!」
始めに突っ掛かってきたあの女は今もまだ突っ掛かってくる。
他にもそう言った悪魔はいるが、出会い頭に言われるくらいだ。彼女のように手を出そうとはして来ない。
その遅い手はもう、私は掴むことが出来た。
悪魔に必死なんて言葉似合わない。
余裕の笑みを振り撒くものだ。
だから私は仕事を必死にこなしたけれど、そうして彼女よりは強い力を持った事に気付いたけれど、今日の今日まではこうしてパキリと力を入れなかった。
その日の事は特にブラッドに語っていない。
語るほど大した話でもないから。
悪魔に仲間意識なんて。
ただ上と下があって、消されるのが嫌だから言うことに従う。
生まれ出でたばかりではまだ勝手がわからない事もあるから従う。
だからブラッドに連れられた悪魔達の集まりは、ただの冷たい眼をした獣の集団だった。
同士だとか手を取り合ってなんて言葉は浮かばない。こいつらを使ってやろうとか、自分が一ピース埋める代わりにこいつらは他のピースを沢山埋めてくれるとか、そんな事をお互い考えているのが見え見えだった。
最後に完成した絵は奪い合いだ。
その中でもまとめ役らしい一柱は肩先につくかつかないかの黒髪を揺らして振り向くと、その男は私を紅い目ですっと見つめた。
生まれたての私はそれだけで体が強ばって喉の奥が絞められたような感覚に陥った。
ブラッドは平気なのか、こんな私を前に出すといつもの調子で紹介する。
「新しく生まれた悪魔だ」
「……ふん。名は」
「……ルカ。ルカ・××××××」
「そうか」
紹介はそれで終わった。私達の上に位置するこの男には私などやはりどうでも良い存在らしい。
その後は今までの功績を話し合うだけで、私がここに集った意味はあまりないように思えた。
むしろ、来ない方が良かったのかもしれないとさえ思えた。
話し合いが終わり解散を言い渡されるとあの男は素早く消えて、他の悪魔達もちらほらと去っていく。けれど数人の悪魔が私の方へと向かってきた。嫌らしい笑みを浮かべて。
お互いの思惑は顔にべったりと書かれているのだ。彼らの考えもまた私は読めた。
「へェ、ブラッド。お前子守り始めたんだ」
「早く棄てちゃいなよぉ。流石半端者、弱そうな悪魔じゃん」
半端者。きっと私が生まれたてで彼らよりも弱いからだ。あの男には瞳を向けられただけで怯えてしまった。
その事実をせせら笑っているのだ。
「今日は蝿が煩ェな」
「それは誰にたかっているのかしら?」
まだ笑っている目を真っ黒に化粧した女を放置して、ブラッドは「行くぞ」と私の肩を叩いた。
悪魔としての性分、こいつらを消せないかなと考える。
でも悪魔としての性分、もっと勝てる確率が上がってからの方が良いと考える。
私達はそのまま土に沈み、拓けた森の中から自分達の領域へと移動した。
それからと言うもの、私は必死に仕事をこなした。
仕事は鴉が運んでくる。それを見て標的に仕掛ける。あるいは殺す。
私の実力はめきめきと伸びていった……と思う。少なくともその辺は冗談は言うが誤魔化しをしないブラッドが珍しく褒めていたのだから、まあ悪くはなかったと思う。
「あら。半端者じゃない」
「……なんや。煩い蝿やね」
「ふん!意気がってるんじゃないよ。あんたみたいな半端者、死んだ方がブラッドも楽になるのに、ねッ!」
始めに突っ掛かってきたあの女は今もまだ突っ掛かってくる。
他にもそう言った悪魔はいるが、出会い頭に言われるくらいだ。彼女のように手を出そうとはして来ない。
その遅い手はもう、私は掴むことが出来た。
悪魔に必死なんて言葉似合わない。
余裕の笑みを振り撒くものだ。
だから私は仕事を必死にこなしたけれど、そうして彼女よりは強い力を持った事に気付いたけれど、今日の今日まではこうしてパキリと力を入れなかった。
その日の事は特にブラッドに語っていない。
語るほど大した話でもないから。