世界は光でできている
ルースの言うことは本当だったんだ。
あたしは、あたしは、カイルを消さなきゃいけない。
出来るならこんな事、したくないに決まってる。
泣きそうになりながらも、あたしは――
ファイル
―はんこうげんば―
固まった足が、少しずつ動き出した。
震えながらも、あいつの前に出ていく。
「カイル……?なんで、そんな物持ってんの?」
あいつ。
それはあたしの幼馴染みで、仕事の出来ない天仕だったはずの――カイル・イレイザー。
和国の資料を取ってきてと一部の天仕しか持たないリングキーを渡され、書庫にやってきた。
そして今、あいつは宮殿中を騒がせている事件の犯人であるように、神様の情報を抱き抱えて立っている。
「っ!」
息を飲む音、驚く顔。
それがあたしの鼓動の音を大きくしてるなんて、ねえ気づいてる?
そして、それでも資料は落とさないのね。
「カイル。神様を裏切るなんて、どういう事なのかわかってるの!」
自然と叫ぶような声が出る。
来る時に人がいないのは見ているから、わかっている。
……いや、他人がいた方が良かったのかもしれない。
カイルは戸惑っているような表情を見せた。
何故。
――決まってるじゃない。
珍しく頼まれた仕事なら、あたしはどれだけ安心できることか。
でもここは一部の天仕だけが入ることを赦された書庫。あたしだって初めて、上司の鍵を渡されてようやく入ったのだ。
窓際にいた天仕が、それを持っているなんて。
「カイル。それは、神様の……データ、よね」
「……はい」
間違いなく、あいつは、頷いた。
「ま、待って下さい。これは、その――」
慌てる様子のカイル。
それはもう、言い訳を連ねる小物のようで。
あたしは、何でこんなに胸が痛いのだろうと涙を滲ませた。
それを見たカイルはすうっと目を開いて、そして数秒黙った。
黙った後に、そうっと口を開く。
「確かに、“今の”神様の資料です。……まだミューリには知る必要のない事の為に使われます」
落ち着いた声。
今のって、どういう事。
確かに神様の席は代替わりするものだけど、今の神が病気だという話も今のところは聞かない。
それなのに次があると確定するのは。
――決まってる。反逆だ。
「どうしても?」
「すみません。……ただ、これは裏切りではありません!それだけは――」
足が動く。
ルースに初めて聞いた時はあり得ないって思った。それが少しずつ怪しい影に染まっていって、今……
カイルは防ぐだけで、攻撃をして来なかった。
その防御も癖を知っていたあたしは、どこを狙えば当たるか判断できた。
カイル。
あんた、ほんの一瞬だけど、あたしのこと窺い見たよね。それ、次に思い切りやるってこと。
だから隙が出来て。
「わあああああ!!」
大きな叫び声だか悲鳴だかをあげた。
攻撃に気付き慌てて魔力で対抗するカイル。
二つの力はぶつかって、
そして、資料室に広がる赤。
あたしは、あたしは、カイルを消さなきゃいけない。
出来るならこんな事、したくないに決まってる。
泣きそうになりながらも、あたしは――
ファイル
―はんこうげんば―
固まった足が、少しずつ動き出した。
震えながらも、あいつの前に出ていく。
「カイル……?なんで、そんな物持ってんの?」
あいつ。
それはあたしの幼馴染みで、仕事の出来ない天仕だったはずの――カイル・イレイザー。
和国の資料を取ってきてと一部の天仕しか持たないリングキーを渡され、書庫にやってきた。
そして今、あいつは宮殿中を騒がせている事件の犯人であるように、神様の情報を抱き抱えて立っている。
「っ!」
息を飲む音、驚く顔。
それがあたしの鼓動の音を大きくしてるなんて、ねえ気づいてる?
そして、それでも資料は落とさないのね。
「カイル。神様を裏切るなんて、どういう事なのかわかってるの!」
自然と叫ぶような声が出る。
来る時に人がいないのは見ているから、わかっている。
……いや、他人がいた方が良かったのかもしれない。
カイルは戸惑っているような表情を見せた。
何故。
――決まってるじゃない。
珍しく頼まれた仕事なら、あたしはどれだけ安心できることか。
でもここは一部の天仕だけが入ることを赦された書庫。あたしだって初めて、上司の鍵を渡されてようやく入ったのだ。
窓際にいた天仕が、それを持っているなんて。
「カイル。それは、神様の……データ、よね」
「……はい」
間違いなく、あいつは、頷いた。
「ま、待って下さい。これは、その――」
慌てる様子のカイル。
それはもう、言い訳を連ねる小物のようで。
あたしは、何でこんなに胸が痛いのだろうと涙を滲ませた。
それを見たカイルはすうっと目を開いて、そして数秒黙った。
黙った後に、そうっと口を開く。
「確かに、“今の”神様の資料です。……まだミューリには知る必要のない事の為に使われます」
落ち着いた声。
今のって、どういう事。
確かに神様の席は代替わりするものだけど、今の神が病気だという話も今のところは聞かない。
それなのに次があると確定するのは。
――決まってる。反逆だ。
「どうしても?」
「すみません。……ただ、これは裏切りではありません!それだけは――」
足が動く。
ルースに初めて聞いた時はあり得ないって思った。それが少しずつ怪しい影に染まっていって、今……
カイルは防ぐだけで、攻撃をして来なかった。
その防御も癖を知っていたあたしは、どこを狙えば当たるか判断できた。
カイル。
あんた、ほんの一瞬だけど、あたしのこと窺い見たよね。それ、次に思い切りやるってこと。
だから隙が出来て。
「わあああああ!!」
大きな叫び声だか悲鳴だかをあげた。
攻撃に気付き慌てて魔力で対抗するカイル。
二つの力はぶつかって、
そして、資料室に広がる赤。