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プロローグ

「現界体ってほんとにすっごいんだね〜」
晴れ渡った空を見上げ少女は太陽に手を透かし、ふとそう呟いた。不思議と馴染み違和感のない身体。そのまま手をぐっと空に突き上げぐっと伸びをすると、ふわりと目の前に物陰が降り立った。
「どうも、こんにちはアルルゥさん。」
「あ、デアちゃんさん!もしかして『お願い』しに来たって感じ?」
ぱっと表情を明るくし、少女_アルルゥは目の前に現れた_デアに問いかけると、彼女はにっこりと笑い、ご明察と答えた。というもののまだ時間はあるらしい。デアはそのままそこに留まり……どうやらアルルゥの雑談に付き合う様だ。
「この身体カラダ、改めて不思議だなって思ってさ……」
アルルゥはその場でくるりと回転し、周囲を見回す。
「だってみんなからはデアちゃんさんのことは見えてないわけじゃん?そのデアちゃんさんと話してるのに周りは無反応なんだもん。」
誰も彼もアルルゥを見留めることなくただ自分の行先へと向かっている。
「わたしは普段あまり街中で話しかけることはありませんし……でも案外他人は自分に無関心なものですよ。」
そう言うとデアはぽんっ小さな音と共にちいさくなり、アルルゥの肩にちょこんと座った。

アルルゥ/デア

「もともと違和感とかそんなものを曖昧にするために、認識阻害がかかっているのはもちろんですが、もし他人が魔法少年少女たちの現界体を注視していたとして、興味が自然と削がれるようにもなっています。ですので、そう目立つことをしないならば他人の意識に入ることもありません。」
そこで言葉を区切り、デアはふと目線を目先のビルの屋上へ向けた。それにつられ、アルルゥもそこへ目を向けるとそこには1人のヒトの……いや、魔法少年少女の影があった。しかし、その影はこちらに気づくことなくその場から立ち去り、見えなくなってしまった。
「いっちゃった。」
「こちらの声は雑音程度にしか聞こえませんからね。」
「それは知ってるよ。経験したことあるしね。」
魔法少年少女は現界体でない時、現界を見ることはできるが生者たちが発する言葉を正しく読み解くことは出来ない。それは現界体を得た魔法少年少女の声も同様に。
デアは少し困ったようにため息をついた。
「『お願い』をしてくださっている時によくある現象ですね。段々と対象が死に近づくにつれあちらの声は聞こえるようになり接触も可能になります。しかし、魔法少年少女はあくまで死人、生者への接触ははばかられますから。」
いつの間にかアルルゥはただデアを見つめていた。デアはアルルゥと目を合わせるとすっと目を細めた。


「ちょっとお話しすぎてしまいましたかね」
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