私達は小型ボート乗り場まで来た。

｢名前、乗って！｣
私は透さんに言われ、ボートに乗った。
透さんは操縦席に座り、ボートを発信させた。

しばらく走ったところで
『透さん、もう大丈夫なんじゃ…。』

｢いやっ！まだだ！｣

すると、遠くから犯人の乗ったボートがきて、狙撃してきた。

透さんは私の頭に手を置き、守ってくれた。
さっき、リュックに入れた、園子ちゃんにもらった缶ジュースに弾が当たり、ジュースが溢れた。

透さんは何かを思いついた様子だった。
私は前に滝が迫っているのに気がつき
『透さん！前！』

｢名前、僕の方に寄って！｣
私が透さんの方に寄ると肩を抱いて衝撃から守ってくれた。

近くの船着場にボートを停め、降りて再び走り出す。

そして、高台に続く坂道を登った。
｢名前、もう少しだ。｣
私は走りっぱなしで体力が限界にちかづいていた。

『透さん、先に登ってください。すぐに追いつくので。』
すると、透さんは私をお姫様抱っこした。
『っえ！透さん！』
透さんは黙って駆け上がった。

上に着くと、岩影に2人で隠れたが、透さんは立ち上がり、岩陰から出た。

｢ここ、夜はクローズで誰もいないんです。だから、出てきても大丈夫ですよ。｣

しかし、犯人は出てこない。

｢随分用心深いんですね。隠れたって無駄ですよ。コナンくんから聞いた奈良沢警部の事件。左胸を掴んで亡くなったのは、警察手帳を示していたのではなく、心をしめしていたんです。心療科の心をね。そうですよね？風戸京介先生？｣

透さんがそう言うと、岩陰から本当に風戸先生が現れた。

｢どこで私が犯人だと分かった？｣

｢僕も最初は気づかなかったのですが、コナンくんから情報をもらってね。あなたは電話をかける時に左手でボタンを押したそうですね。それで気づいたんです。普通、電話をかける時、ボタンは押しやすい利き手で押すので、あなたの利き手が左手だと。｣

｢ふっ。まさか、そんなことで左利きだとバレるとはな…。｣

｢あなたは、7年前、東都大学附属病院で若手No.1外科医として活躍していた。ところがある日、仁野氏と一緒に執刀した手術中に、仁野氏が誤って、あなたの左手首を切ってしまった。その事故であなたの黄金の左手と言われていた腕が落ちてしまった。プライドが高いあなたは、メスを捨て、外科医から心療科に転向した。そして、利き手も左から右に変えた。｣

｢そうだ。偶然に再会し、仁野に誘われるがまま、仁野のマンションで飲むことになった。酔った勢いで6年前のことをわざとだったんじゃないかと仁野に問いただすとあっさり答えてくれたよ。その時だよ、仁野に殺意が芽生えたのは。だから、メスで首を切った。ちょうどその頃、手術ミスで訴えられていたから、自殺として処理された。｣

風戸先生は仁野さんの事件の真相を話した。