プロローグ

「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」

 昔の偉人が変わりゆく世の中を、川の流れに例えた有名な一文だ。

 著者は人の世の無常を厭世えんせい的に嘆いたのだろうが、あいつは「これはロックだね」と言った。

「むしろフォークソングだろ」と朗読を続ける教師に聞こえないように囁くと、

「きっと彼が現代に生きていたら反骨心をこじらせてマイクに向かって歌っているよ」と笑った。

 そんな思い出があるせいだ。

 暗く悲しい時代を切り取ったはずの随筆が、胸の奥を叩くような激しく苛烈なロックを連想させるのは。

 音楽は流れる。

 川は流れる。

 月日は流れる。

 よくも悪くも、全ては流れ、変わり続けるのだ。

 平凡な日常が非日常に変化することもあれば、非日常が日常に戻ることもあるように。

 オレはイヤフォンを深く差し込んだ。

 全身に音楽を巡らせながら、あいつと過ごした七日間を思い出す。
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