遙か6夢(長編)
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眩しい青空。コンクリートで舗装された道路。お見舞いが必要な温かい笑顔の祖母。また明日と笑って別れた友人。
あまりにも遠すぎる日常が脳内をかけていく。それらはすべて、既に違う時空。
梓は不意に、自分がどこに立っているのか分からなくなった。重力がどこに向いているのか分からず、右にも左にも引っ張られている感覚。故に、自分が座り込んでしまったことにも気付けず、ただこみ上げてくる感情を必死に堪えている。
「……美しいね」
呟かれた言葉に真琴はため息をつこうとして、すんでのところで押し留めた。代わりに勢いよくしゃがんで、梓を正面から抱きしめる。緩やかな温もりが手のひらから伝わって、喉元に何か詰まったように苦しい。
「……大丈夫だよ」
彼女を励ましたくて、泣いてほしくなくて。転がり出たのは、月並みな言葉。そんな自分に舌打ちしたくなる。焦りと不安が少女の中でもまた、渦巻いていた。
「私達は一人じゃない。やるべきことも見えてる。だから、大丈夫」
真琴の肩に重みが増える。梓が額を押しつけていた。背中にも自分とは違う体温がまわされて、抱き返されていると知る。
「私達は、元の世界に帰れるよ」
梓の呼吸音が聞こえる。深く静かに息を吸って、そろそろと息を解いているようだった。
やがて肩の重みが離れていった。背中を包んでいたぬくもりは、真琴の両手に。
梓と真琴は、向かい合ってお互いの両手を握り締めた。
「…ありがとう、真琴」
「いーえ。もう一回ぐらい、ハグいっとく?」
優しく手をほどいて、両手を広げてみせる。思わず梓は軽く吹き出した。
「ううん…恥ずかしいし、やめとくよ」
「それは残念。…立てる?」
座ったままもう一度手を差し出しかけるも、それより先に梓が腰を上げた。フィッシュテールがささやかに揺れる。それを無意識に視線で追いながら、真琴は手を下ろした。
「ありがとう。大丈夫。真琴こそ、はい」
梓の華奢な手のひらが目の前に差し出される。その手の先を追って見上げれば、梓は膝に手をついて真っ直ぐに腕を伸ばしていた。月の無い夜空を背に、ペリドットの目に光が灯っている。
ほんの刹那、躊躇って。その手を取らず、勢いをつけて立ち上がった。
「私も大丈夫でーす。ありがとね」
「そっか」
引き下がる梓の右手を咄嗟に捕まえる。目を開く従姉妹の様子は気にせず、真琴は自らの左手でその手を繋ぎ直した。
「小さい頃さ、よく手繋いだなって思って」
じっと見つめる視線に、真琴が笑ってみせる。手に力を込めればじわりと温もりが返ってきた。
「…そうだね。懐かしいな」
「でしょ?」
じゃあ、と息を吸う。振り返れば金髪の男はじっとそこで待っていた。ただの立ち姿すら華やかで、途中で見つめられていることに気付かなくて良かったと真琴は内心安堵した。この美貌に見つめられていると意識したら、動揺して理解不能な行動をやらかしていそうだ。
左手を軽快にふらつかせる。梓と自分が繋がれている手を見せつけるように。そうしたのは、今はたった一つの居場所を取られたくないからだった。
「お待たせしました。梓と私が何をしたら良いのか、教えてください」
