Lotus
寝返りをうって目が覚めた。
素肌に当たるヒヤリとしたシーツの感触が何とも心地よく、冷えた場所を求めて足が泳ぐ。
温もりのある場所は嫌いじゃない。
でも今は少しだけ温い膜の中から逃げたかった。
居心地のいい場所を探して身体が揺らぎ、強張った所々を解そうと布団の中で全身を思い切り伸ばす。
身体中に血が巡る感覚…この瞬間が好きだ。
柔らかく軽い布団に身体を絡めると火照っていた体温が吸いとられまた新しい微睡みが迎えに来る。
しばらく夢うつつ…
何だかまた温もりが恋しくなり布団に潜る。
またそのまま身体を反転させ…
――甘い、香りがした。
手にふわふわしたものが当たって、惚けたままそれを指に絡める。
「ん…」
肩の辺りで優しい吐息が零れ落ち、そのふわふわが指からすり抜けた。
ああ
求めていた温もりはここにあったんだっけ…
微睡みながら身体を寄せると、汗でひんやりと冷たくなった柔らかく滑らかな背中が胸に当たる。
首元に顔を埋めて腰を引き寄せ抱き締めれば、彼女の身体が少し震えた。
「やあ──だ───」
目の覚めきっていない彼女から声が漏れる。
甘い香りが俺を包み込み、たまらず顔にぶつかる髪を鼻で掻き分けうなじを探す。
「・・・ん・・っ・・」
俺の動きとリンクする彼女の反応を楽しみながらそのままじっと身を寄せていると、冷えていた肌に自分の体温が移る。
自分の足を彼女の足に絡めながら、片手で滑らかな肌に触れた。
掌に吸い付く感触に溺れながらそのまま撫で付ければ、切ない吐息に心が波打つ。
見つけ出したうなじに唇で触れ、そのまま肩に流して吸い付くと、彼女の身体が少し弾けた。
「もう──やっ!」
布団の中で逃げるように身を捩り彼女が俺の腕を振りほどいた。
身体を俺に向けとろりとした瞳を投げながら、非難するような口調で俺を睨む。
「もう無理っ」
夜更けから、俺に色付いた声を散々上げさせられていた彼女が、気の入らない声で抗議してきた。
「キスマークも禁止!言ったよね…」
「はい。もう、しません」
俺はくすくす笑いながらまた彼女に腕を絡めた。
拗ねて背を向けた彼女を無理やりこちらに向けて腕を枕に抱き締める。
「ごめんなさい」
そう囁いて額に口付ける。
彼女が上目遣いで俺を見つめ、安心したように目を瞑った。
俺を狂わせる魅惑の実。
彼女に付けた赤い印が俺だけのものだと知らしめる。
囚われてしまった俺は、枷の鍵を自ら底無し沼に投げ捨てこの実に溺れる。
いくら食べても食い足りない禁断の麻薬の実…誰にもやらない。
───絶対に、俺だけの───
彼女の温もりと寝息に誘われるかのようにいつの間にか、自分も意識を手離していた…。
~ END ~
素肌に当たるヒヤリとしたシーツの感触が何とも心地よく、冷えた場所を求めて足が泳ぐ。
温もりのある場所は嫌いじゃない。
でも今は少しだけ温い膜の中から逃げたかった。
居心地のいい場所を探して身体が揺らぎ、強張った所々を解そうと布団の中で全身を思い切り伸ばす。
身体中に血が巡る感覚…この瞬間が好きだ。
柔らかく軽い布団に身体を絡めると火照っていた体温が吸いとられまた新しい微睡みが迎えに来る。
しばらく夢うつつ…
何だかまた温もりが恋しくなり布団に潜る。
またそのまま身体を反転させ…
――甘い、香りがした。
手にふわふわしたものが当たって、惚けたままそれを指に絡める。
「ん…」
肩の辺りで優しい吐息が零れ落ち、そのふわふわが指からすり抜けた。
ああ
求めていた温もりはここにあったんだっけ…
微睡みながら身体を寄せると、汗でひんやりと冷たくなった柔らかく滑らかな背中が胸に当たる。
首元に顔を埋めて腰を引き寄せ抱き締めれば、彼女の身体が少し震えた。
「やあ──だ───」
目の覚めきっていない彼女から声が漏れる。
甘い香りが俺を包み込み、たまらず顔にぶつかる髪を鼻で掻き分けうなじを探す。
「・・・ん・・っ・・」
俺の動きとリンクする彼女の反応を楽しみながらそのままじっと身を寄せていると、冷えていた肌に自分の体温が移る。
自分の足を彼女の足に絡めながら、片手で滑らかな肌に触れた。
掌に吸い付く感触に溺れながらそのまま撫で付ければ、切ない吐息に心が波打つ。
見つけ出したうなじに唇で触れ、そのまま肩に流して吸い付くと、彼女の身体が少し弾けた。
「もう──やっ!」
布団の中で逃げるように身を捩り彼女が俺の腕を振りほどいた。
身体を俺に向けとろりとした瞳を投げながら、非難するような口調で俺を睨む。
「もう無理っ」
夜更けから、俺に色付いた声を散々上げさせられていた彼女が、気の入らない声で抗議してきた。
「キスマークも禁止!言ったよね…」
「はい。もう、しません」
俺はくすくす笑いながらまた彼女に腕を絡めた。
拗ねて背を向けた彼女を無理やりこちらに向けて腕を枕に抱き締める。
「ごめんなさい」
そう囁いて額に口付ける。
彼女が上目遣いで俺を見つめ、安心したように目を瞑った。
俺を狂わせる魅惑の実。
彼女に付けた赤い印が俺だけのものだと知らしめる。
囚われてしまった俺は、枷の鍵を自ら底無し沼に投げ捨てこの実に溺れる。
いくら食べても食い足りない禁断の麻薬の実…誰にもやらない。
───絶対に、俺だけの───
彼女の温もりと寝息に誘われるかのようにいつの間にか、自分も意識を手離していた…。
~ END ~
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