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酔っぱらいはお好き? ~2~

「悪いな、引き留めちまって」

人通りの途絶えた店の通りにタクシーが止まると、塩谷は出迎えた憂夜に手を挙げた。

「おい、着いたぞ……起きろ!」

タクシーの中ですっかり寝入ってしまった晶を塩谷が揺すって起こそうとするが、ふにゃふにゃと意味不明な言葉を口にするだけで目が開かない。

「私がお連れします。店の入口を開けていただけますか」

憂夜が反対側に回って後部座席のドアを開けると、晶が一緒にくっついてきた。
慌てて押し留め、晶の腕を自分の首に絡ませて身体を引き上げタクシーから力任せに降ろす。

「店長、起きてください」

甘い香りに包まれながら憂夜が耳元で晶に問いかけると、足が地に着いたせいか彼女の身体に力が入った。

「着きましたよ……しっかり歩いてください!」

「…うん……」

憂夜に抱えるように支えられながらふらつく足で歩みを進める。

先にドアを開けて待っていた塩谷も手伝い、何とか晶を店内に引き入れた。

「その辺に寝かせとけよ」

晶のバックを担いだまま酔いも回ってへべれけになった塩谷が螺旋階段に座り込んだ。

「毛布でも何枚か巻いときゃ、死にゃしねーよ」

「ここはかなり冷えますので」

崩れ落ちそうになる晶を憂夜が掬い上げると、両手にしっかりと抱き上げる。

「申し訳ありませんが、二階のドアを……」

「その年でお姫様だっこかよ……残念だったな、覚えてねーだろ」

塩谷がしょうがないと言った顔で立ち上がり、憂夜の腕の中でまた寝入った晶に悪態をついた。

オーナールームに入ると、憂夜は晶をベッドに座らせ何とかコートを脱がせた。

そのまま横にして布団を被せる。

「やれやれ……」

甲斐甲斐しく世話を焼きながら足元に転がした晶の靴を揃えている憂夜を横目に、塩谷は改めて部屋の中を見渡した。

部屋の中はかなり暖かく、テーブルには水のペットボトルと二日酔いに効くドリンク材やら薬やらがご丁寧に並べてある。

「お前は晶に甘いんだよ」

塩谷が苦笑しながら晶のバックを近くのソファーに放り投げた。

反動でフラりと揺れ、思わず壁に身体を預ける格好で憂夜に支えられる。

「こいつに付き合ってたらつい呑みすぎちまった……帰るだろ、一緒に乗ってくか?」

「いえ、まだ仕事が残っていますので……」

倒れないように寄り添いながら首を振った憂夜に、塩谷が肩をすくめた。

「ま、後よろしくな」

「はい……お送りします。足元に気を付けて下さい」

待たせていたタクシーまで塩谷を見送った憂夜がオーナールームに戻ってくると、寝返りを打ったのか晶がベッドからずり落ちそうになっていた。

苦笑しながら身体を戻して布団を掛けなおす。


甘いのはあなたもでしょう?
───塩谷オーナー。


晶の横に腰を降ろすと、憂夜は笑みを浮かべた。
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