酔っぱらいはお好き? ~2~
「暴れんなって!捨ててくぞ」
晶を背負っている塩谷の顔が歪む。
「まだ飲むの!もう1軒!」
「ったく・・・一服盛ってもらうんだったぜ・・・」
塩谷の背中で元気に暴れる晶にうんざりしながらも、決して下ろそうとはしない。
ふらふらどっか行かれたら、捕まえらんねえよ!
漆黒のオーラを纏った輩がふらつく真夜中2時の渋谷センター街。
素面の時の晶なら手放しで捨てて帰るところだが、この状態で放出したら彼女も塩谷当人も目覚めが悪くなること受け合いだった。
「ねえ~もっとのもーよおー」
「帰るんだよ!お前手あげろよ!タクシー捕まらねえだろうが」
片手に晶のバックを下げて晶本体をおんぶしている塩谷の目の前をタクシーが悠然と通りすぎていく。
塩谷も酔いが回っていて、いくら近いとはいえ店までこれを担いで行くのは御免被りたかった。
「ったくよ…おいっ、晶!」
塩谷の背中で晶が身を捩って暴れた。
「降りる~」
「痛てっ…こら!どこいくんだよ!」
思った通り、ふらふらと歩き出す晶を決死の顔で塩谷が捕まえた。
「やあだ!帰りたくなあい!」
「その台詞は彼氏に言え!出来たら、の話だけどな。ほれ、帰るの!」
身を捩って何とか逃げようとする晶を離すまいと塩谷が必死に腕を掴む。
「おま…危ねえって!!」
逃げようと車道に出ようとする晶をクラクションを鳴らしたタクシーが掠めた。
慌てて晶を引き戻す……力が強すぎたのか、晶がよろけた。
やべっ!
支えようと手を伸ばし────
「───大丈夫ですか?」
晶はスーツ姿の細身な男の腕にしっかり抱き留められていた。
「樹か!何やってんだ?」
「アフターです。犬マンさんや吉男達とアフター来てるんですけど、次の店に行こうってなってタクシー拾ってたんです」
驚いた塩谷に軽く頭を下げると、樹は振り返った先にあるオシャレな今時のバーを指差した。
「何か聞いたことある声だなって思ったら……大丈夫ですか?」
樹が柔らかく笑いながらふらつく晶を腕で支える。
「良かったら先にどうぞ」
「助かる!悪いな」
路肩に停められたタクシーに樹が顔を向けると塩谷がホッと息をついた。
「ほら、帰るぞ」
タクシーのドアが開くと、塩谷はまた逃げようとして樹に押さえられている晶の肩を掴んだ。
「どこいくんだよ…乗れっつうの!」
「やあだー・・・あ~樹だあー!」
樹に気付いた晶がそのまま樹の首に腕を絡めてきた。トロリとした目で甘えるように抱きつく。
「ねー、のみにいこーよお」
───樹が一瞬、固まった。
「店長のくせに身内のアフター邪魔すんじゃねえ!」
ため息をついた塩谷が樹から晶を引き剥がすと、タクシーの後部座席に彼女を頭から無理矢理押し込む。
「ほれ、とっとと乗れ!」
「や~だ~あー」
まだ騒ぐ晶を尻目に、塩谷は樹に向き直って息をついた。
「本当助かった!お前に会わなきゃ一晩中漂流してたよ」
苦笑しながら塩谷もタクシーに乗り込む。
「邪魔して悪かった、じゃあな」
窓越しに手を降ってタクシーが走り出す。
樹は自分のタクシーを拾うのも忘れ、しばらく遠ざかるテールランプを見つめ続けていた。
───まだドキドキしている───
樹は、大きく深呼吸した。
晶を背負っている塩谷の顔が歪む。
「まだ飲むの!もう1軒!」
「ったく・・・一服盛ってもらうんだったぜ・・・」
塩谷の背中で元気に暴れる晶にうんざりしながらも、決して下ろそうとはしない。
ふらふらどっか行かれたら、捕まえらんねえよ!
漆黒のオーラを纏った輩がふらつく真夜中2時の渋谷センター街。
素面の時の晶なら手放しで捨てて帰るところだが、この状態で放出したら彼女も塩谷当人も目覚めが悪くなること受け合いだった。
「ねえ~もっとのもーよおー」
「帰るんだよ!お前手あげろよ!タクシー捕まらねえだろうが」
片手に晶のバックを下げて晶本体をおんぶしている塩谷の目の前をタクシーが悠然と通りすぎていく。
塩谷も酔いが回っていて、いくら近いとはいえ店までこれを担いで行くのは御免被りたかった。
「ったくよ…おいっ、晶!」
塩谷の背中で晶が身を捩って暴れた。
「降りる~」
「痛てっ…こら!どこいくんだよ!」
思った通り、ふらふらと歩き出す晶を決死の顔で塩谷が捕まえた。
「やあだ!帰りたくなあい!」
「その台詞は彼氏に言え!出来たら、の話だけどな。ほれ、帰るの!」
身を捩って何とか逃げようとする晶を離すまいと塩谷が必死に腕を掴む。
「おま…危ねえって!!」
逃げようと車道に出ようとする晶をクラクションを鳴らしたタクシーが掠めた。
慌てて晶を引き戻す……力が強すぎたのか、晶がよろけた。
やべっ!
支えようと手を伸ばし────
「───大丈夫ですか?」
晶はスーツ姿の細身な男の腕にしっかり抱き留められていた。
「樹か!何やってんだ?」
「アフターです。犬マンさんや吉男達とアフター来てるんですけど、次の店に行こうってなってタクシー拾ってたんです」
驚いた塩谷に軽く頭を下げると、樹は振り返った先にあるオシャレな今時のバーを指差した。
「何か聞いたことある声だなって思ったら……大丈夫ですか?」
樹が柔らかく笑いながらふらつく晶を腕で支える。
「良かったら先にどうぞ」
「助かる!悪いな」
路肩に停められたタクシーに樹が顔を向けると塩谷がホッと息をついた。
「ほら、帰るぞ」
タクシーのドアが開くと、塩谷はまた逃げようとして樹に押さえられている晶の肩を掴んだ。
「どこいくんだよ…乗れっつうの!」
「やあだー・・・あ~樹だあー!」
樹に気付いた晶がそのまま樹の首に腕を絡めてきた。トロリとした目で甘えるように抱きつく。
「ねー、のみにいこーよお」
───樹が一瞬、固まった。
「店長のくせに身内のアフター邪魔すんじゃねえ!」
ため息をついた塩谷が樹から晶を引き剥がすと、タクシーの後部座席に彼女を頭から無理矢理押し込む。
「ほれ、とっとと乗れ!」
「や~だ~あー」
まだ騒ぐ晶を尻目に、塩谷は樹に向き直って息をついた。
「本当助かった!お前に会わなきゃ一晩中漂流してたよ」
苦笑しながら塩谷もタクシーに乗り込む。
「邪魔して悪かった、じゃあな」
窓越しに手を降ってタクシーが走り出す。
樹は自分のタクシーを拾うのも忘れ、しばらく遠ざかるテールランプを見つめ続けていた。
───まだドキドキしている───
樹は、大きく深呼吸した。