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酔っ払いはお好き?

「この埋め合わせはいずれ、必ずさせてもらう」

見送る空也に、憂夜が言った。

「一晩の売り上げが吹っ飛んだだろう」

「気になさらないで下さい」

空也は笑って首を振った。

「高原さんに満足して頂けただけで結構です。それに、お代はもう頂戴しました・・・彼女の寝顔から」

「───生ぬるい事を言っていると、いつか痛い目を見るぞ」

憂夜の目付きが鋭く変わる。

言葉が終らないうちに、二人を乗せたタクシーがネオンの雑踏に紛れていった。

煽るつもりはなかったんだかな・・・。

店に踵を返しながら、空也は苦笑した。

今日のマイナス分なんて、今の空也にとっては痛くもなかった。

ただ、さっきの憂夜の眼───

明らかに仕事に対する戒め以外に、空也自身に向けた警告とも取れる威嚇が混じっているのを見つけていた。

晶にジャケットをかけてやった際につい・・・唇を落としてしまった。

今日のチップとして貰ってもいいでしょう?

これに懲りたら、もう目を離さないことです。


───今度、は、有りませんよ───


「おやすみなさい。晶さん」

店に戻る刹那、タクシーが走り去った方に顔を向け、空也がポツリ呟いた。



───その後、この夜の晶の武勇伝は、瞬く間にエルドラドを席巻した。

あのナンバーワンの空也が、気が強く想像の斜め上を行く女性に向け、惜し気もなく高い酒を自分持ちで開けさせた───

そして空也に負けず劣ず、いや空也に輪をかけたイケメンが迎えに来て、抱きかかえられ店を後にした。

「空也さんの上客は、やっぱり奥が深い」

「ああいう客を捌けてこそナンバーワンなんだな」

と、ホスト達の羨望と空也の株が益々上がったのは、空也自身、知らないお話。

~ END ~
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