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酔っ払いはお好き?

「───ありがと、空也」

彼らが逃げていった方を気にしながらも、晶が安堵の息をついた。

「助かったわ、本当に」

「・・・何をしているんですか?」

「は?」

「ここで一体、あなたは何をしているんですか!?」

少しふらついた晶の肩を掴み、空也は無意識に声を張り上げていた。

「こんな時間にこんな所を一人きりで歩くなんて…襲われても文句は言えないんですよ!」

この人は───何でこんなに危機感がないんだ!

疑心の全くない無邪気な瞳を真ん丸にしてポカンと見上げてくる晶に、空也は頭を抱えたくなった。

「だって」

晶が拗ねたように口を尖らせ、俯いて爪先を蹴る。栗色の髪が肩から滑り落ちた。

「だってさ・・・」

「だってじゃない!」

身体がカッと熱くなり、畳み掛けるようについ語気を荒げてしまう。
晶が身を縮めた。

「僕が来なかったらどうなっていたかわかりますか!?貴女はあいつらに・・・あんな奴等に───」

声が、震える。肩を掴んでいる手に力が入った。

いくら元ヤンだろうが、こんな華奢な彼女が男二人に組み敷かれて逃げられるわけがない。
身ぐるみ剥がされ気のすむまで玩具にされて・・・。

あの二人組に滅茶苦茶に弄ばれ泣いている晶の妄想を描いてしまい、空也の心に鳥肌が立った。

打ち消すようにぎゅっと目を瞑る。

「空也・・・ごめん。本当にごめん」

苦悩の表情を浮かべて俯く空也を見て晶がうなだれた。
肩に伸びる空也の腕にそっと触れながら、絞り出すように空也に訴えかける。

「ごめんなさい・・・」

瞬間、肩を掴んでいる手から力が抜けた。
身体中に安堵感が満ち満ちて膝から崩れ落ちそうになる。

「───ご無事で、何よりです」

何とか言葉を紡いだが、腕に伝わる晶の温もりに思わず理性が飛びそうになった。
心が熱くたぎり、衝動的に抱き締めてしまいそうになる。

箍が外れそうになった刹那、

「店長っ!!」

輩達が逃げていった路地から、バリトンボイスと共に背の高い男が走り寄ってきた。

それを見た空也が、晶の肩に置いていた手を離す。

スノードームに積もる雪のように少しずつ理性が元の位置に帰っていく───

自然な声が喉から出た。

「貴方がご一緒だったんですね、憂夜さん」
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