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第3話

「……どうした、眠れないのか?」
「!」

隣のベッドを見ると、兄さんが上体を起こしていた。
僕の目をじっと見るその顔は、不安そうで。

「……いや、なんでも……ないよ、兄さん」
「ウソつけ、何か嫌なこと考えてるんだろ。
 最近毎晩そうだ。深刻な顔をして、手の中で何かしら転がしてて。
 ……たまには俺やフォビオにも相談しろよ」

見破られてた。
でも、そんな簡単に「此処から脱走したい」なんて言える訳も無いじゃないか。

「……今は言えないんだ、ごめん。
 でも、僕は明日の任務で、考えている事をどうしようか、決めようと思ってる」
「……そうか。秘密じゃ無理に聞き出す訳にはいけないからな。
 でもな?」

兄さんがベッドから降りて手を伸ばして、
僕の髪をぐしゃぐしゃと荒くなでる。

「例えお前が何を考えようと、何をしようと。
 俺はお前の味方でいるつもりだ、それはフォビオも同じはずだからさ。
 だから辛くなったら相談とか、助けを求めたりしろよ?
 ひとりで抱え込んでたら全く良い結果なんて無いからな。
 ……それに、言うだけならタダだし」

「…………」

数秒経ってどうしようもなく恥ずかしくなって、僕は手を退ける。

「き、聞いてるこっちが恥ずかしくなった」
「うるせぇ、俺だって言ってる途中から恥ずかしかったぞ」

兄さんは顔を真っ赤にして「もう少し寝る」と言うと、顔を合わせずにすぐにベッドに潜り込んでしまった。
よっぽど恥ずかしかったんだ。
聞いてる僕がこれだけ恥ずかしいんだから、兄さんはもっとに違いない。
おやすみと言うと、しばらくして毛布から後頭部がぬっと出てきた。

寝巻きに着替えてる内に、兄さんはすっかり眠りについていた。
僕も少しでも長く寝ておこう。
手ぐしで髪を整えて、すぐにベッドに入り目を閉じた。
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