31話~
「キヒィ…♪」「!?」
直後、偽がお返しにと言わんばかりに腹を殴り付けた。
「ぐあっ!?」
イアはそのまま屋根の外へと吹っ飛ばされた。
「(なんて力だ…!)」
宙に投げ出され、痛さに瞑っていた目を開ける。
と
「キヒィイァハハハ!!!」
目の前にはおぞましい高笑いをしながら組んだ両手を振り上げる偽が。
避ける事も出来ない。
ドグッ
「がっ……」
諸に腹に入った。
とてつもなく、重く強力な一撃。
一瞬、息が出来なくなってしまう程に。
イアはそのままの勢いで地面へと落下して行く。
歯を食いしばり、目をぎゅっと瞑る。
ドサリ。
…あの勢いで地面にぶつかればかなりの衝撃があるはず。
しかし、今の勢いはとても少ない。
下に大きなクッションでも敷いてあったかのように。
「ぉーい?」
偽の声に、イアは目を開けた。
「だいじょぶ?ちょっと荒っぽすぎたかも」
少し心配した様子で、でも心なしか楽しそうな偽がいた。
どうやら彼に受け止められたらしい。
「…強いな、凄く」
当たり前ー!と笑う偽。
その瞳は透き通った水色をしていた。
「…結局、貴様は俺と戦って何がしたかった?」
「んー?なんとなく~」
口いっぱいにアーモンドチョコを頬張る、子供のような偽の姿に、戦っている時の面影は見受けられない。
それどころか、戦意すら感じられない。
「…でさぁ」
チョコを飲み込んだ偽が満足そうな表情で鎌を持ち、立ち上がる。
「殺すんでしょお?フィーアを」
「ああ、それが何だ」
「一緒にやりたいなぁ、って思ってさ」
表情が一変し、戦っていた時のような妖しい笑みを浮かべた。