この夢小説は、もし乙女ゲームだったらという設定なので、名前変換をすると100倍楽しめます。名前は、〇〇〇・トワイラスの〇の部分が変わります。
九章、真相を追って
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翌朝、居眠りをしたまま熟睡していたアンヌは、九時を知らせるベルの音で目を覚ました。
「あっ……」
何故、寒さで目を覚まさなかったのだろう。彼女は不思議に思いながらも伸びをした。すると、肩を動かしたときに何かがするりと床に落ちた。
「あれ?これって……」
拾い上げてすぐに、アンヌはそれがドゥークーのマントであることに気付いた。どこまで紳士なのだろうと思いながら微笑むと、彼女は立ち上がって伯爵の元へと歩きだした。
一方で聖堂の一室には、オビ=ワン、アナキン、マスター・ウィンドゥ、そして任務から帰還したアソーカとレックスがヨーダに呼び出されていた。いつになく深刻な面持ちのグランド・マスターの様子に、一同はただならぬ問題が発生していることを悟って息を呑んだ。一頻り沈黙が立ち込めたあと、ヨーダは重い口を開いた。
「……話すか話さんか。一晩中考えた。じゃが……お主たちには、やはり黙っておくわけにはいかん問題であろうと思い、集まってもろうた」
「何なんですか?一体。まさか、シディアス絡みのことが何か分かったんですか!?」
血気盛んなスカイウォーカーの問いに、ヨーダは首を傾げた。
「ある意味そうとも言えるし、そうとも言えん」
オビ=ワンはアナキンに閉口するように目配せし、ヨーダを見据えた。
「教えていただけますか?グランド・マスター・ヨーダ」
全員の視線が老ジェダイに刺さる。彼は視線に耐えかね、決まりかねていた覚悟を固めた。
「────アンヌ・トワイラスは、ドゥークー伯爵の娘じゃ」
動揺の一閃が走る。アナキンは顔をしかめているし、アソーカは立ち眩みを覚えてレックスに支えられた。オビ=ワンに至っては、口をぱくぱくさせている。唯一比較的冷静なマスター・ウィンドゥは、ヨーダに厳しい視線を投げ掛けた。
「評議会を集結させ、ドゥークーを尋問すべきです。それから、トワイラスの処分を────」
その言葉に、アナキンが怒りを爆発させた。
「処分だって!?僕のパダワンを追放したみたいに、あんたらはまたアンヌを処分する気か!」
「アナキン、落ち着きなさい」
「落ち着いていられますか!?僕がシディアスの指示で危うく殺すところだった男が…………僕の腕を切り落とし、マスターやアミダラ議員もろとも処刑しようと目論んだ男が、僕の…………」
オビ=ワンの制止も、もう彼の耳には届かない。アナキンは膝をついて、力なく床に崩れ落ちた。その声は凍えたように震えている。
「僕の…………戦友の父親だったなんて…………」
「マスター……」
アンヌと親しくしていた人物なら誰にとっても、この真実は残酷すぎた。ドゥークーはそれほどに、銀河中に多くの犠牲と悲しみをもたらした。一方、アソーカはアンヌのことが心配だった。
「マスター・ヨーダ。アンヌは大丈夫なんですか?このことを知っても、動揺は────」
「いや、まだ知らん。今後のことはドゥークー自身と話し合い……」
その時だった。
「私と彼に、何の関係があるんですか?」
芯の通った声が響く。一同は水を打ったように静まり返り、声のする方へ振り向いた。
アンヌだった。どこを探してもドゥークーが居らず、その事についての報告にやって来たのだ。間の悪さに、流石のヨーダも閉口するしかない。
「答えてください。私と彼が、どのような関係なのか」
「アンヌ、それは……」
「彼が、消えました。一体どこへ向かったのか、ご存じの方は居ませんか?」
その知らせに、再び部屋は騒然とした。
「まさか……それも私と関係が?」
これ以上聞かないでくれと言わんばかりに、オビ=ワンが顔をしかめる。アンヌが問い詰めようと口を開く前に、もう一人の人物が現れた。
「察しが良いな、ブレイン殿」
金属音の足音が響く。アナキンは驚きの混じった表情でその人物を見上げた。
「グリーヴァス!ここへは立ち入り禁止なはずだぞ」
スカイウォーカーの言葉を、グリーヴァスは鼻で笑い飛ばした。
「壁を登ってきたわい」
長身のサイボーグはアンヌに向き直ると、一つのホロデータを差し出した。
「ブレイン。閣下の足取りを掴んだぞ」
「それをどうして、私に?」
アンヌは、グリーヴァスの粗野な口調がいつもと違うことにも勘づいていた。彼はちらりとヨーダたちを見た。
何も言っていないとは。やはりジェダイは、とんでもない連中だ。
グリーヴァスは金色の美しい爬虫類の瞳で、敵将────自身が師と敬愛する男の娘を見つめた。その眼差しに、アンヌのフォースが揺らいだ。
この瞳は……
それはかつて、インヴィジブル・ハンド前での交戦時に見た瞳と同じだった。脳裏に焼き付いて離れなかった瞳。何故今まで気づかなかったのか。そして、何故グリーヴァスの瞳を自分はヴィジョンとして見たのか。
答えを思案するより前に、グリーヴァスは苦々しげに告白した。オビ=ワンたちは、為す術なく天井を見上げている。
「────アンヌ・トワイラス。お前の父君は、ドゥークー伯爵様だ」
目の前が真っ暗になるような衝撃だった。アンヌはドゥークーのマントを抱えながら、震える声で尋ねた。
「……それが、私と彼の関係なのですか?娘と父。それが、真実なのですか?」
「アンヌ、いいか。よく聞きなさい。今知ったことは、何も聞かなかったことにしなさい。そうすれば、この秘密は守られる。君は戦犯にもならないだろうし、オーダーから追放しろという意見も上がらないだろう」
肩に手を置いてそう説得してくるオビ=ワンを振り払い、アンヌは叫んだ。
「無理に決まっています!真実は、あの人から聞きます。だから、私はあの人を探す」
そう言って部屋を出ようとしたアンヌを、マスター・ウィンドゥがライトセイバーを起動させて押し留めた。起動音が不穏な空気を醸し出す。
「何をするんですか。通してください」
「駄目だ。君は共和国軍師。使命を全うしろ」
「ライトセイバーを下ろしてください、マスター・ウィンドゥ」
語気は穏やかだが、瞳には怒りが宿っている。一触即発の状況を動かしたのは、ウィンドゥの方だった。
「断る。スカイウォーカー。彼女を拘束しろ」
「退いて!彼に……彼に会わせて!」
ライトセイバーを突きつけられても怯むことのないアンヌを、ウィンドゥはフォースで押し返そうとした。だが、フォースで彼女が飛ばされるより前に、ウィンドゥ自身の身体が宙に浮いた。状況がつかめない一同は、唖然とその様子を眺めている。そして更に、マスター・ウィンドゥに気をとられている隙にアンヌが消えた。それも、彼女の意思とは別にだ。
アンヌは、グリーヴァスに抱えられた状態で発着ベイへと向かっていた。突然のことで、流石の彼女も目が点になっている。
「端的に説明してやる。閣下はシディアス卿を追って、惑星コリバンへ向かった」
「コリバン?シスの聖地じゃない」
「そうだ」
「そこで、何をする気なの?」
返事はない。まさか、とアンヌは目を見開いた。
「──刺し違えるつもりなの!?」
「恐らくな」
止めようと割り込んできたジェダイを足で蹴り飛ばし、グリーヴァスは猛進し続けた。発着ベイにたどり着いたアンヌは、グリーヴァスの腕から飛び降りて自分の船に駆け寄った。だが、既にロックされている。途方にくれていると、背後からグリーヴァスが別の船に乗り込みながら手を振ってきた。
「こっちだ!用意した船がある。乗れ!」
「……たまには良い仕事するのね」
アンヌは不敵な笑みを浮かべながら、ジェダイ聖堂との連絡通路を見た。オビ=ワンたちがバズーカを持ったクローン兵を従えているではないか。彼女は慌てて船に乗り込み、航路を設定しようとした。だが、それも既に終わっているらしい。いち早くコックピットに着いていたグリーヴァスは、エンジンを始動させた。
「……吐くなよ?」
「あら、ご心配ありがとう。大丈夫よ」
アンヌは軽口こそ叩いたものの、飛び立つ際のGがかかる感覚がが苦手だった。もちろん、戦闘機も好きではない。グリーヴァスの運転は予想通り荒く、追跡と妨害を振り切るためもあって、彼女は盛大に苦痛を覚えた。
「……安全運転しなさい!」
「撃ち落とされるよりましだと思え!」
アンヌは天井を見上げながら目を閉じた。そして、大気圏を抜けた船は宇宙へと飛び出し、ハイパースペースの入り口からコルサントを後にした。
アンヌはハイパースペースを航行している間に、先ほどからずっと疑問に思っていたことを尋ねてみようと思い立った。彼女は隣でモニターを凝視しながら座っているグリーヴァスに向き直り、その顔を覗き込んだ。
「……どうして、私に手を貸してくれたの?」
「俺を信頼しているとは到底思えんかったから、もっと厄介なことになると思っておったわ。これも我ら分離主義の作戦のうちなら、今頃とっくにお前は死んでおるわい。軍師なら、先に罠を疑え」
答えになっていない。今までのアンヌなら苛立って会話を終わらせるところだが、今回は違った。
「だって、伯爵様……私の父に会いたいから。真実を知りたい。どうして私が捨てられたのか。どうして今まで黙っていたのか。どうして真実を己の口から告白しなさらなかったのか。全部、あの人から直接聞くまではわからないことだから」
そう言うと、アンヌの瞳の輝きが突然沈んだ。グリーヴァスの脳には、何故かそれが悲しみだと理解できた。そして、無意識に口調も穏やかになった。
「……閣下から、最期の命令だと言われた。どんなことがあっても、お前を守れと」
アンヌは目を丸くして跳ね起きた。グリーヴァスのことだから、もっと大きな理由があったのだろうと推測していたからだ。サイボーグ将軍は続けた。
「閣下は、お前を捨てたのではないと思う。あのお方はどうでも良い存在を守れとは言わんし、そんな奴には自らの命など捧げたりはせん」
ぶっきらぼうに言い放つと、それっきりグリーヴァスは再びモニターに視線を戻してしまった。アンヌはその言葉が慰めのようにも聞こえて、困惑の表情を浮かべた。そして、ぽつりと呟いた。
「……ありがとう」
返事はもちろんない。だが、わずかに。ほんの僅かにグリーヴァスが頷いた気がした。
その頃、ドゥークーはグリーヴァスの調べ通り、シスの聖地である惑星コリバンに降り立っていた。そこにある廃墟と化したシス聖堂に、シス卿ダース・シディアスは居る。ドゥークーには誰に言われずとも、それを察していた。何故なら彼はかつての師であり、憎むべき敵だったからだ。
聖堂に足を踏み入れたドゥークーは、ライトセイバーをいつでも起動できるように身構えながら辺りを見回した。そして、彼の読み通りにシディアス──パルパティーンは現れた。もはや姿を隠す必要は無いと言わんばかりに、彼はフードを脱いだ状態で反逆者を嘲笑った。
「ダース・ティラナス。久しぶりだな。……と言っても、今はただのドゥークー伯爵かな?」
「お前が私から奪ったものを、全て返してもらいに来た」
「お前から?さて……何だったかな」
とぼけたような声を出しつつも、シディアスは鋭い眼光でかつての弟子を睨み付けた。
「お前に頼んだのが間違いだったようだ。初めから、私一人で探した方が早かったのかもしれん。ああ……その代わり、共和国にブレインは存在しなかったやも知れんが」
「娘に危害は加えさせん、シディアス。ここで刺し違えになろうとも、お前には死んでもらう」
ドゥークーのライトセイバーが起動する。シディアスはこの時を待ちわびていたと言わんばかりに、不敵な笑みを浮かべた。
「刺し違え?捨て駒の首が落ちるの間違いでは?」
シディアスも、二本の血のように赤いライトセイバーを起動させて構える。こうして、二人のシス卿の運命が懸かった戦いの火蓋が斬って落とされた。ドゥークーの肩には愛娘の未来、そしてシディアスの肩には長年願い続けてきた野望。譲ることの出来ない戦いが始まった。
二人のシス卿が戦い始めた直後、後を追うようにしてアンヌとグリーヴァスもコリバンへ辿り着いた。地面に降り立つや否や、彼女は強いフォースのぶつかり合いを感じた。
「────戦いが始まってる!急がなきゃ。シス聖堂の方よ!」
駆け出そうとするアンヌを、何故かグリーヴァスは追わない。しかし、そんなことに構っている余裕はない。彼女は距離も疲労も動揺も忘れ、聖堂まで駆け出した。するとその直後、バイクの爆音がこだました。振り返ると、なんとそこには没収されていたはずのホイールバイクに乗るグリーヴァスの姿があった。彼はアンヌの横にバイクをつけると、無言で手を差し伸べた。乗れと言うことなのだろう。
「──帰ったら、今日をグリーヴァス感謝の日に制定するよう、アミダラ議員に言っておくわ」
アンヌはデュらスチールの手を掴むと、ひらりと身軽に運転席の後ろへ飛び乗った。ホイールが砂埃を巻き上げて走り出す。
待っていて。あなたを一人にしたりなんてしない。
アンヌはグリーヴァスにしがみつきながら、聖堂の方を見据えた。その心の中では、痛切に祈りを繰り返すのだった。
「あっ……」
何故、寒さで目を覚まさなかったのだろう。彼女は不思議に思いながらも伸びをした。すると、肩を動かしたときに何かがするりと床に落ちた。
「あれ?これって……」
拾い上げてすぐに、アンヌはそれがドゥークーのマントであることに気付いた。どこまで紳士なのだろうと思いながら微笑むと、彼女は立ち上がって伯爵の元へと歩きだした。
一方で聖堂の一室には、オビ=ワン、アナキン、マスター・ウィンドゥ、そして任務から帰還したアソーカとレックスがヨーダに呼び出されていた。いつになく深刻な面持ちのグランド・マスターの様子に、一同はただならぬ問題が発生していることを悟って息を呑んだ。一頻り沈黙が立ち込めたあと、ヨーダは重い口を開いた。
「……話すか話さんか。一晩中考えた。じゃが……お主たちには、やはり黙っておくわけにはいかん問題であろうと思い、集まってもろうた」
「何なんですか?一体。まさか、シディアス絡みのことが何か分かったんですか!?」
血気盛んなスカイウォーカーの問いに、ヨーダは首を傾げた。
「ある意味そうとも言えるし、そうとも言えん」
オビ=ワンはアナキンに閉口するように目配せし、ヨーダを見据えた。
「教えていただけますか?グランド・マスター・ヨーダ」
全員の視線が老ジェダイに刺さる。彼は視線に耐えかね、決まりかねていた覚悟を固めた。
「────アンヌ・トワイラスは、ドゥークー伯爵の娘じゃ」
動揺の一閃が走る。アナキンは顔をしかめているし、アソーカは立ち眩みを覚えてレックスに支えられた。オビ=ワンに至っては、口をぱくぱくさせている。唯一比較的冷静なマスター・ウィンドゥは、ヨーダに厳しい視線を投げ掛けた。
「評議会を集結させ、ドゥークーを尋問すべきです。それから、トワイラスの処分を────」
その言葉に、アナキンが怒りを爆発させた。
「処分だって!?僕のパダワンを追放したみたいに、あんたらはまたアンヌを処分する気か!」
「アナキン、落ち着きなさい」
「落ち着いていられますか!?僕がシディアスの指示で危うく殺すところだった男が…………僕の腕を切り落とし、マスターやアミダラ議員もろとも処刑しようと目論んだ男が、僕の…………」
オビ=ワンの制止も、もう彼の耳には届かない。アナキンは膝をついて、力なく床に崩れ落ちた。その声は凍えたように震えている。
「僕の…………戦友の父親だったなんて…………」
「マスター……」
アンヌと親しくしていた人物なら誰にとっても、この真実は残酷すぎた。ドゥークーはそれほどに、銀河中に多くの犠牲と悲しみをもたらした。一方、アソーカはアンヌのことが心配だった。
「マスター・ヨーダ。アンヌは大丈夫なんですか?このことを知っても、動揺は────」
「いや、まだ知らん。今後のことはドゥークー自身と話し合い……」
その時だった。
「私と彼に、何の関係があるんですか?」
芯の通った声が響く。一同は水を打ったように静まり返り、声のする方へ振り向いた。
アンヌだった。どこを探してもドゥークーが居らず、その事についての報告にやって来たのだ。間の悪さに、流石のヨーダも閉口するしかない。
「答えてください。私と彼が、どのような関係なのか」
「アンヌ、それは……」
「彼が、消えました。一体どこへ向かったのか、ご存じの方は居ませんか?」
その知らせに、再び部屋は騒然とした。
「まさか……それも私と関係が?」
これ以上聞かないでくれと言わんばかりに、オビ=ワンが顔をしかめる。アンヌが問い詰めようと口を開く前に、もう一人の人物が現れた。
「察しが良いな、ブレイン殿」
金属音の足音が響く。アナキンは驚きの混じった表情でその人物を見上げた。
「グリーヴァス!ここへは立ち入り禁止なはずだぞ」
スカイウォーカーの言葉を、グリーヴァスは鼻で笑い飛ばした。
「壁を登ってきたわい」
長身のサイボーグはアンヌに向き直ると、一つのホロデータを差し出した。
「ブレイン。閣下の足取りを掴んだぞ」
「それをどうして、私に?」
アンヌは、グリーヴァスの粗野な口調がいつもと違うことにも勘づいていた。彼はちらりとヨーダたちを見た。
何も言っていないとは。やはりジェダイは、とんでもない連中だ。
グリーヴァスは金色の美しい爬虫類の瞳で、敵将────自身が師と敬愛する男の娘を見つめた。その眼差しに、アンヌのフォースが揺らいだ。
この瞳は……
それはかつて、インヴィジブル・ハンド前での交戦時に見た瞳と同じだった。脳裏に焼き付いて離れなかった瞳。何故今まで気づかなかったのか。そして、何故グリーヴァスの瞳を自分はヴィジョンとして見たのか。
答えを思案するより前に、グリーヴァスは苦々しげに告白した。オビ=ワンたちは、為す術なく天井を見上げている。
「────アンヌ・トワイラス。お前の父君は、ドゥークー伯爵様だ」
目の前が真っ暗になるような衝撃だった。アンヌはドゥークーのマントを抱えながら、震える声で尋ねた。
「……それが、私と彼の関係なのですか?娘と父。それが、真実なのですか?」
「アンヌ、いいか。よく聞きなさい。今知ったことは、何も聞かなかったことにしなさい。そうすれば、この秘密は守られる。君は戦犯にもならないだろうし、オーダーから追放しろという意見も上がらないだろう」
肩に手を置いてそう説得してくるオビ=ワンを振り払い、アンヌは叫んだ。
「無理に決まっています!真実は、あの人から聞きます。だから、私はあの人を探す」
そう言って部屋を出ようとしたアンヌを、マスター・ウィンドゥがライトセイバーを起動させて押し留めた。起動音が不穏な空気を醸し出す。
「何をするんですか。通してください」
「駄目だ。君は共和国軍師。使命を全うしろ」
「ライトセイバーを下ろしてください、マスター・ウィンドゥ」
語気は穏やかだが、瞳には怒りが宿っている。一触即発の状況を動かしたのは、ウィンドゥの方だった。
「断る。スカイウォーカー。彼女を拘束しろ」
「退いて!彼に……彼に会わせて!」
ライトセイバーを突きつけられても怯むことのないアンヌを、ウィンドゥはフォースで押し返そうとした。だが、フォースで彼女が飛ばされるより前に、ウィンドゥ自身の身体が宙に浮いた。状況がつかめない一同は、唖然とその様子を眺めている。そして更に、マスター・ウィンドゥに気をとられている隙にアンヌが消えた。それも、彼女の意思とは別にだ。
アンヌは、グリーヴァスに抱えられた状態で発着ベイへと向かっていた。突然のことで、流石の彼女も目が点になっている。
「端的に説明してやる。閣下はシディアス卿を追って、惑星コリバンへ向かった」
「コリバン?シスの聖地じゃない」
「そうだ」
「そこで、何をする気なの?」
返事はない。まさか、とアンヌは目を見開いた。
「──刺し違えるつもりなの!?」
「恐らくな」
止めようと割り込んできたジェダイを足で蹴り飛ばし、グリーヴァスは猛進し続けた。発着ベイにたどり着いたアンヌは、グリーヴァスの腕から飛び降りて自分の船に駆け寄った。だが、既にロックされている。途方にくれていると、背後からグリーヴァスが別の船に乗り込みながら手を振ってきた。
「こっちだ!用意した船がある。乗れ!」
「……たまには良い仕事するのね」
アンヌは不敵な笑みを浮かべながら、ジェダイ聖堂との連絡通路を見た。オビ=ワンたちがバズーカを持ったクローン兵を従えているではないか。彼女は慌てて船に乗り込み、航路を設定しようとした。だが、それも既に終わっているらしい。いち早くコックピットに着いていたグリーヴァスは、エンジンを始動させた。
「……吐くなよ?」
「あら、ご心配ありがとう。大丈夫よ」
アンヌは軽口こそ叩いたものの、飛び立つ際のGがかかる感覚がが苦手だった。もちろん、戦闘機も好きではない。グリーヴァスの運転は予想通り荒く、追跡と妨害を振り切るためもあって、彼女は盛大に苦痛を覚えた。
「……安全運転しなさい!」
「撃ち落とされるよりましだと思え!」
アンヌは天井を見上げながら目を閉じた。そして、大気圏を抜けた船は宇宙へと飛び出し、ハイパースペースの入り口からコルサントを後にした。
アンヌはハイパースペースを航行している間に、先ほどからずっと疑問に思っていたことを尋ねてみようと思い立った。彼女は隣でモニターを凝視しながら座っているグリーヴァスに向き直り、その顔を覗き込んだ。
「……どうして、私に手を貸してくれたの?」
「俺を信頼しているとは到底思えんかったから、もっと厄介なことになると思っておったわ。これも我ら分離主義の作戦のうちなら、今頃とっくにお前は死んでおるわい。軍師なら、先に罠を疑え」
答えになっていない。今までのアンヌなら苛立って会話を終わらせるところだが、今回は違った。
「だって、伯爵様……私の父に会いたいから。真実を知りたい。どうして私が捨てられたのか。どうして今まで黙っていたのか。どうして真実を己の口から告白しなさらなかったのか。全部、あの人から直接聞くまではわからないことだから」
そう言うと、アンヌの瞳の輝きが突然沈んだ。グリーヴァスの脳には、何故かそれが悲しみだと理解できた。そして、無意識に口調も穏やかになった。
「……閣下から、最期の命令だと言われた。どんなことがあっても、お前を守れと」
アンヌは目を丸くして跳ね起きた。グリーヴァスのことだから、もっと大きな理由があったのだろうと推測していたからだ。サイボーグ将軍は続けた。
「閣下は、お前を捨てたのではないと思う。あのお方はどうでも良い存在を守れとは言わんし、そんな奴には自らの命など捧げたりはせん」
ぶっきらぼうに言い放つと、それっきりグリーヴァスは再びモニターに視線を戻してしまった。アンヌはその言葉が慰めのようにも聞こえて、困惑の表情を浮かべた。そして、ぽつりと呟いた。
「……ありがとう」
返事はもちろんない。だが、わずかに。ほんの僅かにグリーヴァスが頷いた気がした。
その頃、ドゥークーはグリーヴァスの調べ通り、シスの聖地である惑星コリバンに降り立っていた。そこにある廃墟と化したシス聖堂に、シス卿ダース・シディアスは居る。ドゥークーには誰に言われずとも、それを察していた。何故なら彼はかつての師であり、憎むべき敵だったからだ。
聖堂に足を踏み入れたドゥークーは、ライトセイバーをいつでも起動できるように身構えながら辺りを見回した。そして、彼の読み通りにシディアス──パルパティーンは現れた。もはや姿を隠す必要は無いと言わんばかりに、彼はフードを脱いだ状態で反逆者を嘲笑った。
「ダース・ティラナス。久しぶりだな。……と言っても、今はただのドゥークー伯爵かな?」
「お前が私から奪ったものを、全て返してもらいに来た」
「お前から?さて……何だったかな」
とぼけたような声を出しつつも、シディアスは鋭い眼光でかつての弟子を睨み付けた。
「お前に頼んだのが間違いだったようだ。初めから、私一人で探した方が早かったのかもしれん。ああ……その代わり、共和国にブレインは存在しなかったやも知れんが」
「娘に危害は加えさせん、シディアス。ここで刺し違えになろうとも、お前には死んでもらう」
ドゥークーのライトセイバーが起動する。シディアスはこの時を待ちわびていたと言わんばかりに、不敵な笑みを浮かべた。
「刺し違え?捨て駒の首が落ちるの間違いでは?」
シディアスも、二本の血のように赤いライトセイバーを起動させて構える。こうして、二人のシス卿の運命が懸かった戦いの火蓋が斬って落とされた。ドゥークーの肩には愛娘の未来、そしてシディアスの肩には長年願い続けてきた野望。譲ることの出来ない戦いが始まった。
二人のシス卿が戦い始めた直後、後を追うようにしてアンヌとグリーヴァスもコリバンへ辿り着いた。地面に降り立つや否や、彼女は強いフォースのぶつかり合いを感じた。
「────戦いが始まってる!急がなきゃ。シス聖堂の方よ!」
駆け出そうとするアンヌを、何故かグリーヴァスは追わない。しかし、そんなことに構っている余裕はない。彼女は距離も疲労も動揺も忘れ、聖堂まで駆け出した。するとその直後、バイクの爆音がこだました。振り返ると、なんとそこには没収されていたはずのホイールバイクに乗るグリーヴァスの姿があった。彼はアンヌの横にバイクをつけると、無言で手を差し伸べた。乗れと言うことなのだろう。
「──帰ったら、今日をグリーヴァス感謝の日に制定するよう、アミダラ議員に言っておくわ」
アンヌはデュらスチールの手を掴むと、ひらりと身軽に運転席の後ろへ飛び乗った。ホイールが砂埃を巻き上げて走り出す。
待っていて。あなたを一人にしたりなんてしない。
アンヌはグリーヴァスにしがみつきながら、聖堂の方を見据えた。その心の中では、痛切に祈りを繰り返すのだった。