全てが丸く収まろうとしつつあったマンダロアとは対照的に、この事態を受けて動き出そうとしている影があった。
　ダース・ベイダーは、コルサントの執務室で中継画像を何度も見直していた。同席していたターキン総督、ユラーレン大佐、そしてスローン大提督も無言でその動作を見守っている。
　長き沈黙を破ると、ベイダーは立ち上がって一同に尋ねた。
「……この小娘に、見覚えはないか？」
「ああ、ベイダー卿。忘れるはずはない……」
　ユラーレンが苦々しげな表情で俯く。
「アンヌ・トワイラスか……」
　ターキンの回答に、ベイダーは静かに頷いた。
「そう。稀代の天才軍師が、生きていたのだ」
　あらゆる戦略を研究していたスローンは、その言葉に眉をひそめた。
「あのジェダイ大聖堂での粛清を生き延びたのですか？」
「……それは、私に対する批判かね？」
　ベイダーの圧をもろともせず、スローンは飄々と続けた。
「いえ、むしろ好都合です。こちら側につけば大きな戦力となるでしょう」
　その言葉を、ターキンは声をあげて嘲笑った。スローンはあからさまに不快な面持ちを浮かべて老総督を睨み付けた。
「何が面白いのですか」
「お前はブレインの何を研究してきたのだ。何も分かっておらんではないか。あの小娘は、決して帝国にはつかんよ」
「……では、皇帝陛下のお心は既にお決まりで？」
　ベイダーはマスクの下で微笑みを浮かべると、アンヌのホログラム映像を見た。そして静かな声でこう言った。
「この件は私が陣頭指揮を執る。生かすも殺すも、どちらに転んだとしても2ヶ月以内に決着をつける」
　
　
　
　
　
　
　
　全ての運命が交差するとき、何が起こるのか。今のアンヌには知るよしも無かった。